[R18]獣の発情期、というのは人間にとっては強すぎるらしい

夢兎

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優しい幼馴染@水揚げ

5

「本当にもう平気なのか?」
「嗚呼。少しばかり身体は痛むけど、歩くのに支障はないよ。」

私とは比べ物にならない大きな身体を丸めて、彼は私の腰を支えた
聞けば、私の誕生日を祝う式典から、既に10日が過ぎていて
7日間もの間、食事もとらずに身体を貪り合い、3日間、意識を失っていたそうだ
彼も、2日程目を覚まさず、発情期の周期さえ乱れてしまったらしい

「……悪いな、ヤガフ」
「??…やっぱどこか痛むのか!?ほら、運んでやるから。」

有無も言わさず、彼は軽々と私を抱き上げた
落ちる心配なんて微塵もさせない、がっしりとした腕
彫りの深い横顔は凛々しく異種族の私でも目を引くのだから、同族からよくモテることだろう

「……懐かしいな。昔は私が抱っこしていたのに。」
「そ、それは昔の話だろ!俺だってもうガキじゃないんだ!……お前が一番分かってるだろ?」

少しだけ、照れくさそうに顔を逸らして言うものだから、つい私もどきり、としてしまった
嗚呼、嫌という程分かっている
どれだけ胸板を押し返したところで、ぴくりとも動かない身体
いつの間にか、私の手をすっぽりと包める程大きくなった手も
野太く、地を這うように低くなった声も
……あの時見た身体は全て、そのもので

「……分かっているよ。だから、父さんに態々頼んだんじゃないか。」
「…………あぁ、もうほんっとにお前は…。」

正直に言って、初めての経験はとても怖かった
底なしの沼に、ゆっくりと、ゆっくりと、沈んでいくように感じて
縋るように伸ばした手を掴んでくれるのは、いつも、彼で

「…ふふ、お前が、初めての相手でよかった。」
「っ……なら、俺を王にしてくれるか。」

静かな廊下に、ヤガフの声と足音だけが響いた
勿論、ほかにも従者は沢山その場にいる
けれど、そのすべてが足を止めて、話すのをやめて
動揺ひとつ見せない、ヤガフへと視線を集めた

「ヤガフ。」
「分かってる。気安い気持ちで言っているわけじゃない。俺は…」

戸惑いの色
その唇を掌で覆い隠せば、彼は静かに視線を落として、こくりとうなづいた
彼は、私の大事な幼馴染で、大事な親友
けれど彼だけには
それは、私のワガママかもしれない
彼は優秀だし、慈愛の心を持っている
誰かの上に立つものとして、相応しい気迫もある

「……ごめん、ヤガフ。お前にだけは、渡せない。」
「…………そ、うか。……ほら、ついたぞ。外で待ってるから、行ってこい」

彼は、ただ私の言葉を噛み締めているようだった
そっと、私を下ろして頭を一撫でする手つきは、いつにもまして、優しくて
心なしか、その身体がいつもより小さく、見えた

「…あぁ、行ってくる」

大きな扉。頭上にあるノブを回して逃げるようにして中へと駆けこんだ
中で待っていた父さんは、その手に持っていた書類を置いて
ただ、ぐしゃりと私の頭を撫でて、哀しそうな瞳で私を見下ろした
嗚呼、だから、嫌なんだ

その、優しさが、私を深く傷つけているとも、貴方は知らないのだろうから。
だから、私はただ笑った

「……おはよう、父さん」
「……あぁ、おはよう。よく眠れたか?」

あぁ、また、その優しさナイフが、私の胸を切り裂いてゆく
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