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第二章 まぁ、そう簡単にはいかないようで
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「…………。」
二人の王子に送られて帰路へ着く
馬車に揺られ、流れてく景色をぼんやりと見た
ふと、先程までの記憶が甦る
今日は栄養の消耗が激しいが私や他人の命が掛かったことなのだ
思考を止めることは許されない
私が、彼らに問いかけたものは心理学を専攻していた友人に聞いた質問だ
サイコパスだか、狂気だか、詳しいことは分からなかったが、私はなんとなく彼らに私が受けた質問をしてみた
質問内容も至って普通で本当に他愛のない雑談の様なものだ
そして、彼らの返答の殆どが私の答えと一致
ごく普通の答えだった
いくつかの誤差はあったが彼らの態度や言葉遣いに違和感はなかったし、猟奇的な部分は見当たらない
アイラ王子は国を、民を想う優しく立派な第一王子
ランス王子は少し無愛想で荒い口調だけど、素直になれない幼い一面を持ち合わせた第二王子
人に関わる学部を専攻していなかったが、私にも彼らが一般的な人々と違う思考を持つとは思えない
まぁ、多少、考え方の違いはあるかもしれないが、許容範囲ではあった
「……つーことは」
彼らは、まだヤンデレではない?
私が知っているゲームでは既に彼らは狂っていて、狂気を思わせるセリフがちらほら混ざっていた
だが、今日の様子を見る限り、そんな一面は全くない
私が物語と違う行動に出たから、少しずつ彼らの性格にも変化が現れているのだろうか
……とにかく、今日は少し疲れた
植物とは違って、人は見るだけで全てを理解することは出来ない
話して、仲良くなって、その人の内側を知る
そこまでして、やっとその人を知れた、理解出来た、と言えるだろう
「足元にお気をつけください、お嬢様」
「……嗚呼、ありがとう」
メアリの手を取って、馬車を降りる
大分話し込んでしまった為か、外はすっかり暗くなっていた
この時代に、街灯なんて無くて足元はとても暗い
満月の夜ならばいいものの、月蝕なんて起こればそれこそ何も見えないだろう
「……あの、ライム様」
「?……なに?どうかしたのか?」
離れかけた手を彼女の手が引き止める
綺麗で少し角張った手は震え、何かに怖がっているようだ
彼女の顔は暗くてよく見えない
だが、微かに聞こえる息遣いに何かを言おうとしてる事はよく分かった
珍しいことだし、こんなストーリーもなかったから、彼女が何を伝えたいのかも分からない
静かに言葉を待つと、彼女はゆっくりも口を開いた
「な、なにか……私達に隠しておりませんか?」
「え……?」
一言目が彼女の唇から紡がれると、そのまま雪崩のように言葉が続く
最近、植物以外に心理学の本まで読み始めたこと
以前より、睡眠時間が減っていること
時折、とても疲れた表情をしていること
……正直、彼女らの言葉に驚いた
出来るだけ顔に出さないように
彼女らが見ないように、と配慮はしてきた
それでも彼女達は分かる、理解する
幼い頃から私を見てくれていた、彼女達には分かってしまう、理解してしまうのだ
「…………。」
喉から出かかった言葉を咄嗟に飲み込んだ
言えるわけがない
彼らが信用してくれていたとしても、そんな突拍子もないことを信じてもらえる確信もない
もし、信じてもらえたとして、彼らに何かをしてもらう訳にはいかないのだ
仮に、彼女らに手伝ってもらったとして、何がBAD ENDへのトリガーかわかってない以上、何が起こるか分からない
最悪、彼女らが命を落とす場合だって考えられる
それだけは絶対に避けなければならないのだ
だが、この状況をどう切り抜ければいいだろうか
彼女らを騙すのは至難の技だ
私の全てを殆ど知っているのだ、下手すれば私よりも私を知っている
そんな彼女らを出し抜ける自信は私にはない
「……ありがとう、メアリ。でも、ごめんね。お前達まで危険な目にあわせたくないんだ」
それは、素直な気持ちだった
私は、傍から見ればとんだお人好しなのだろう
友人を庇って死んだり、自分の立場を気にせず友を庇ったり
それでも、私は信念を貫いただけだ
どれだけ罵倒されても、間違っていると指をさされても高らかに告げよう
自分の考えを貫いて何が悪い、と
ずっと、どうするべきか、考えていた
彼らとの関係も、この貴族という地位も
「ぁ……」
「お嬢様!?」
ふらり、と体が傾いてメアリに体重を預ける
少し、疲れた
温かい、彼女の手
心配そうに私を抱えた執事
私を見つめる瞳はどれも心配の色を帯びていて、愛されているのだと自覚する
女性から向けられる憎悪とか、互いを蹴落とすとか、どうでもいい
私は───
二人の王子に送られて帰路へ着く
馬車に揺られ、流れてく景色をぼんやりと見た
ふと、先程までの記憶が甦る
今日は栄養の消耗が激しいが私や他人の命が掛かったことなのだ
思考を止めることは許されない
私が、彼らに問いかけたものは心理学を専攻していた友人に聞いた質問だ
サイコパスだか、狂気だか、詳しいことは分からなかったが、私はなんとなく彼らに私が受けた質問をしてみた
質問内容も至って普通で本当に他愛のない雑談の様なものだ
そして、彼らの返答の殆どが私の答えと一致
ごく普通の答えだった
いくつかの誤差はあったが彼らの態度や言葉遣いに違和感はなかったし、猟奇的な部分は見当たらない
アイラ王子は国を、民を想う優しく立派な第一王子
ランス王子は少し無愛想で荒い口調だけど、素直になれない幼い一面を持ち合わせた第二王子
人に関わる学部を専攻していなかったが、私にも彼らが一般的な人々と違う思考を持つとは思えない
まぁ、多少、考え方の違いはあるかもしれないが、許容範囲ではあった
「……つーことは」
彼らは、まだヤンデレではない?
私が知っているゲームでは既に彼らは狂っていて、狂気を思わせるセリフがちらほら混ざっていた
だが、今日の様子を見る限り、そんな一面は全くない
私が物語と違う行動に出たから、少しずつ彼らの性格にも変化が現れているのだろうか
……とにかく、今日は少し疲れた
植物とは違って、人は見るだけで全てを理解することは出来ない
話して、仲良くなって、その人の内側を知る
そこまでして、やっとその人を知れた、理解出来た、と言えるだろう
「足元にお気をつけください、お嬢様」
「……嗚呼、ありがとう」
メアリの手を取って、馬車を降りる
大分話し込んでしまった為か、外はすっかり暗くなっていた
この時代に、街灯なんて無くて足元はとても暗い
満月の夜ならばいいものの、月蝕なんて起こればそれこそ何も見えないだろう
「……あの、ライム様」
「?……なに?どうかしたのか?」
離れかけた手を彼女の手が引き止める
綺麗で少し角張った手は震え、何かに怖がっているようだ
彼女の顔は暗くてよく見えない
だが、微かに聞こえる息遣いに何かを言おうとしてる事はよく分かった
珍しいことだし、こんなストーリーもなかったから、彼女が何を伝えたいのかも分からない
静かに言葉を待つと、彼女はゆっくりも口を開いた
「な、なにか……私達に隠しておりませんか?」
「え……?」
一言目が彼女の唇から紡がれると、そのまま雪崩のように言葉が続く
最近、植物以外に心理学の本まで読み始めたこと
以前より、睡眠時間が減っていること
時折、とても疲れた表情をしていること
……正直、彼女らの言葉に驚いた
出来るだけ顔に出さないように
彼女らが見ないように、と配慮はしてきた
それでも彼女達は分かる、理解する
幼い頃から私を見てくれていた、彼女達には分かってしまう、理解してしまうのだ
「…………。」
喉から出かかった言葉を咄嗟に飲み込んだ
言えるわけがない
彼らが信用してくれていたとしても、そんな突拍子もないことを信じてもらえる確信もない
もし、信じてもらえたとして、彼らに何かをしてもらう訳にはいかないのだ
仮に、彼女らに手伝ってもらったとして、何がBAD ENDへのトリガーかわかってない以上、何が起こるか分からない
最悪、彼女らが命を落とす場合だって考えられる
それだけは絶対に避けなければならないのだ
だが、この状況をどう切り抜ければいいだろうか
彼女らを騙すのは至難の技だ
私の全てを殆ど知っているのだ、下手すれば私よりも私を知っている
そんな彼女らを出し抜ける自信は私にはない
「……ありがとう、メアリ。でも、ごめんね。お前達まで危険な目にあわせたくないんだ」
それは、素直な気持ちだった
私は、傍から見ればとんだお人好しなのだろう
友人を庇って死んだり、自分の立場を気にせず友を庇ったり
それでも、私は信念を貫いただけだ
どれだけ罵倒されても、間違っていると指をさされても高らかに告げよう
自分の考えを貫いて何が悪い、と
ずっと、どうするべきか、考えていた
彼らとの関係も、この貴族という地位も
「ぁ……」
「お嬢様!?」
ふらり、と体が傾いてメアリに体重を預ける
少し、疲れた
温かい、彼女の手
心配そうに私を抱えた執事
私を見つめる瞳はどれも心配の色を帯びていて、愛されているのだと自覚する
女性から向けられる憎悪とか、互いを蹴落とすとか、どうでもいい
私は───
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