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追求
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遥は両手をパンっ、と合わせた。
「さて、話はここからです。栄介くんが亡くなって三年後、洋平くんという新たな痣を持つ子供が生まれました。これは正和さんにとって誤算だった。せっかく晶子さんの死を栄介くんに関係する呪いのせいにできたのに、新たに生まれた洋平くんが八歳を過ぎても生き続けることになれば、矛盾が生じてしまう。だからあなたは栄介くんの時と同様に村人の恐怖心を焚き付け、息子である悟さんまで利用した。洋平くんと一緒に、健司さんや麻耶さんまでも亡き者にしようとしたんです」
「洋平だけでなく健司と麻耶まで殺そうとした動機は、保険金か」
清八が発した保険金のワードに、青池は顔をしかめた。
「健司さんにかけられた五千万円の生命保険。それを祐也さんに受け取らせ、さらにはその祐也さんまでをも」
遥の言葉を遮るように剛士が立ち上がる。
「ば、ばかな! 裕也さんは行方不明だ! 父は、何も関係ない!」
「私は見たんですよ」
「なにをだ!」
「全てを」
剛士の声が響く部屋で、遥は正和と静かに視線を合わせていた。
互いに怯むことなく、一歩も譲らない。
「ところで剛士さん。あなたのお母様は今どちらに?」
ドンっ!
腹に響くような鈍い衝撃音が皆を萎縮させた。正和が座ったまま、目の前のテーブルを足で蹴り押したのだ。
「さっきから何を得意げに話している。晶子の死も火事のことも、お前の話が真実だと言う証拠はひとつもない。それに二〇一〇年の時点で、二十五年以上前に起きた事件の時効はとっくに成立しているんだよ」
「それは殺人の罪を認めた、そう解釈していいんすかね」
翔太は遥を護るように前に出ながら、正和に問う。
「殺人? 笑わせるな。今の話の中で私になんの非がある? 全ては想像。いや、妄想だ」
正和は面倒くさそうに深く息を吐いた。
「大体な、裕也はいつも俺にトラブルを寄越してくるんだ。自分で考えることを放棄し、人に従うことしか脳がないくせ、その指示すらもまともに出来ない。あの保険金は迷惑料だ。晶子もきよ香も政尚も、俺を煩わせたから死んだ。ただ、それだけのことだ」
「父……さん……?」
剛士は呆然とする。青池は腰を浮かせ、今にもこの場から居なくなりたい思いだろう。
正和が乱れたスーツの裾を直してから顔を上げると、清八は我慢できずに声をあげた。
「なぜ栄介を殺した? リンはなぜ死んだんだ。子供にまで手をかけた意味はなんだ! 答えろ正和!」
正和はタバコを蒸すと、ため息と同時に煙を吐いた。
「清八……正義の右腕みたいな顔して突っかかってくるお前が、私は昔から嫌いだったよ。言っておくがな、栄介もリンも私は殺しちゃいないさ」
「さて、話はここからです。栄介くんが亡くなって三年後、洋平くんという新たな痣を持つ子供が生まれました。これは正和さんにとって誤算だった。せっかく晶子さんの死を栄介くんに関係する呪いのせいにできたのに、新たに生まれた洋平くんが八歳を過ぎても生き続けることになれば、矛盾が生じてしまう。だからあなたは栄介くんの時と同様に村人の恐怖心を焚き付け、息子である悟さんまで利用した。洋平くんと一緒に、健司さんや麻耶さんまでも亡き者にしようとしたんです」
「洋平だけでなく健司と麻耶まで殺そうとした動機は、保険金か」
清八が発した保険金のワードに、青池は顔をしかめた。
「健司さんにかけられた五千万円の生命保険。それを祐也さんに受け取らせ、さらにはその祐也さんまでをも」
遥の言葉を遮るように剛士が立ち上がる。
「ば、ばかな! 裕也さんは行方不明だ! 父は、何も関係ない!」
「私は見たんですよ」
「なにをだ!」
「全てを」
剛士の声が響く部屋で、遥は正和と静かに視線を合わせていた。
互いに怯むことなく、一歩も譲らない。
「ところで剛士さん。あなたのお母様は今どちらに?」
ドンっ!
腹に響くような鈍い衝撃音が皆を萎縮させた。正和が座ったまま、目の前のテーブルを足で蹴り押したのだ。
「さっきから何を得意げに話している。晶子の死も火事のことも、お前の話が真実だと言う証拠はひとつもない。それに二〇一〇年の時点で、二十五年以上前に起きた事件の時効はとっくに成立しているんだよ」
「それは殺人の罪を認めた、そう解釈していいんすかね」
翔太は遥を護るように前に出ながら、正和に問う。
「殺人? 笑わせるな。今の話の中で私になんの非がある? 全ては想像。いや、妄想だ」
正和は面倒くさそうに深く息を吐いた。
「大体な、裕也はいつも俺にトラブルを寄越してくるんだ。自分で考えることを放棄し、人に従うことしか脳がないくせ、その指示すらもまともに出来ない。あの保険金は迷惑料だ。晶子もきよ香も政尚も、俺を煩わせたから死んだ。ただ、それだけのことだ」
「父……さん……?」
剛士は呆然とする。青池は腰を浮かせ、今にもこの場から居なくなりたい思いだろう。
正和が乱れたスーツの裾を直してから顔を上げると、清八は我慢できずに声をあげた。
「なぜ栄介を殺した? リンはなぜ死んだんだ。子供にまで手をかけた意味はなんだ! 答えろ正和!」
正和はタバコを蒸すと、ため息と同時に煙を吐いた。
「清八……正義の右腕みたいな顔して突っかかってくるお前が、私は昔から嫌いだったよ。言っておくがな、栄介もリンも私は殺しちゃいないさ」
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