怠惰の神の使徒となり、異世界でのんびりする。筈がなんでこんなに忙しいの?異世界と日本で怠惰の魔法を使って駆け巡る。

七転び早起き

文字の大きさ
1 / 35
クエスト「アズール家族を救え」

第1話 ゴッズタイムキリング

しおりを挟む
 僕は中里春馬なかざとはるま。十七歳の高校二年生。

 広島県のとある街に住んでいる。両親は共に雑貨の輸入販売店を経営をしており、裕福な家庭になると思う。そして僕には少し歳の離れた兄と中二の妹が居る。

 兄の雅人は親の血を濃く受け継いで頭がよく、昨年大学を出て親の仕事を手伝い始めた。妹の真奈は頭がいいだけでなく、運動神経もいい上に容姿もいい。ただし性格はキツイ。
(小さい頃は、「お兄ちゃんのお嫁さんになるの!」と言って、いつも僕に付いて回って可愛かったのに‥‥)

 僕も頭の出来は悪くない。小さい頃から少し教えてもらうだけで何でも出来た。勉強も運動もだ。そして僕は勘違いをした。

『僕は何でも出来る特別な人間』だと‥‥‥

 小学生の頃は授業だけで家で勉強しなくても、常に上位の成績であった。仕事が忙しい両親は家に帰ることが少なかったが長男と可愛い娘に愛情を注ぎ、次男の僕はほぼ放置状態。
 家政婦が居るので困る事は無かったが、愛情には飢えていたと思う。

 何でも出来ると思っていた僕は、塾にも行かず勉強もしなかった。それでも成績は上位のままだった。だから両親も何も言わなかった。(放置状態だったしね)

 友達関係については、普通に遊び友達は居た。ただし親友と呼べる存在は居ない。
 僕は臆病者だった。人の意見を尊重して嫌われないようにしていた。自分が意見する場合は、反対する人が出ないように常に周りの目を気にしながら考えて発言していた。

 そんな僕は本音を言わず、人との間に境界線を設ける性格になっていた。人付き合いは悪くないんだよ?ただ、上辺だけ取り繕った人間関係だったけどね。

 そして僕は中学生になっても何も変わらない。塾も行かず勉強もしなかった。人間関係構築の為に部活はしたよ。バスケ部。

 バスケ部に入って友達は増えた。一線を引いた外側の友達が。一応は楽しい学生生活だった。だけど本音で話せる友達は居ない。

 そして中学後半になると感じてくる。学力が追い付かなくなってきている事を。そして徐々に成績が上位から滑り落ちていく。
 それでも僕は少し本気を出せばいつでも上位に戻れると思っていた。バカだよね。
 気が付けば中学生活あと僅か。そして真ん中より少しだけ下の成績になっていた。

 僕はやっと少しだけ頑張った。

 高校受験の為に勉強した。少しでもいい高校に入ろうと。僕は臆病だけど見栄っ張り。
 自分は特別な人間だと思っていたので頑張って勉強した。そして運も味方をしたのか、有名私立高校に入学することが出来た。

 だけどそこまでだった。

 さすが有名私立高校。僕は入学して最初のテストから常に成績は下位。そこで奮起して勉強すればいいのに長年の習慣はなかなか変わらない。そして上辺だけの友達付き合いも嫌気がさして一人で居ることが多くなった。

 そして家でダラけた生活を送るようになり、次第に学校に行くのも面倒になった。そんな僕は高校二年になると同時に引きこもり。

 季節は高二の夏。

「ふわぁ~、よく寝た」

 時刻は朝の10時を少し過ぎたところ。僕はベッドから起き上がると部屋のドアを開けた。部屋の前にはお盆に乗った朝食が置いてある。
 家政婦さんが作ってくれたものだ。僕はお盆を持って部屋の中に戻り、部屋の真ん中にあるテーブルに置いてから、テーブルにあるノートパソコンの電源を入れた。

 僕の部屋は十二畳と広い。セミダブルのベッド、勉強机、ラグを敷いた上に座の低いテーブルとソファーがある。床に座るタイプ。小さいけど冷蔵庫もある。そして部屋の隣は四畳ほどのウォークインクローゼット。
 なんと贅沢な部屋だろう。家政婦さんも居るし、引きこもりには最高の環境だ。

 ノートパソコンでお気に入りのアニメを見ながら朝食を食べる。朝食はサンドイッチとサラダ。僕が遅く起きる事が判っている家政婦さんは、冷めても美味しく食べれるものを準備してくれる。素晴らしい家政婦さんだ。

 僕はメモ用紙に『美味しかったです。ありがとう』と書いて、完食した朝食のお盆に添えてドアの外に置く。会って話をすることはあまり無いが、小学生の時からずっと勤めてくれている家政婦さん。唯一僕の境界線の中に居る人物と言っていい人である。

 冷蔵庫からコーヒーのペットボトルを取り出してテーブルの前に座る。そして僕はコーヒーを飲みながら立ち上がったノートパソコンでネトゲの検索を始めた。

「この間までやってたRPGはクリアしたけどあまり面白くなかった。なんかこう変わり種のネトゲがないかなぁ」

 色々キーワードを変えて検索するが、どれも似たような題目と内容のものばかり。そして十分ほど検索をしていると突然ノートパソコンの画面がブラックアウトした。

「えっ?なんで?壊れちゃった?」

 停電かと思ったがノートパソコンの電源ランプは点灯している。そして部屋のエアコンも元気よく作動していた。

 どうしようかと悩んでいるとノートパソコンの画面に文字が浮かび上がってきた。

『ゴッズタイムキリング』と‥‥‥‥

 そして静かに流れる音楽。その音色は心を落ち着かせるようでいて、闘志を掻き立てるようでもあった。

 僕がその音色に聞き入っていると、追加でメッセージが表示された。

『あなたは選ばれた。怠惰たいだの神に。

 あなたは怠惰の神の使徒となり、異世界で怠惰の神の信仰者を増やすのです。

 使徒となる or ならない

 ★一度だけのチャンス。「ならない」を選択した時点で二度目は無い。』

 いったいこれは何なのだろう。

 説明文かヘルプがあるのではとマウスで色々な場所を調べてみたが、二択の選択項目しか反応しない。僕は新手のウィルスかと思い電源ボタン長押しで強制終了したが無理だった。

 怖くなった僕はコンセントから電源コードを抜いてバッテリーパックも取り外した。だが画面は消えなかった。

 僕は震える手でペットボトルを掴み、勢いよく残りのコーヒーを飲み干した。そしてゆっくりと深呼吸をし、少し落ち着きを取り戻す。

(これは普通の事では無いよな。『ゴッズタイムキリング』か。訳すと「神々の暇潰し」となるが‥‥‥そして怠惰の神。僕が引きこもりだから選ばれたのか?)

 僕は考える。そして答えを出した。

 「とりあえず決めるのは明日にしよう」

 引きこもり必殺技「先延ばし」である。

 僕はまだ昼前だというのに、ベッドに戻り布団を被って深い眠りについた。

 さすが引きこもり歴半年。いつでもいつまでも寝れる技を修得済みであった。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

処理中です...