怠惰の神の使徒となり、異世界でのんびりする。筈がなんでこんなに忙しいの?異世界と日本で怠惰の魔法を使って駆け巡る。

七転び早起き

文字の大きさ
3 / 35
クエスト「アズール家族を救え」

第2話 そして始まる物語

しおりを挟む
 翌朝四時。いつもなら遅くに起きるが、今日はとても早起きの僕だった。

 だって昨日起きたことが頭から離れないんだもん。ノートパソコンからは、音楽が流れっぱなしだし‥‥‥‥

 僕は諦めてベッドから降りてノートパソコンを前にして座った。

 昨日と変わらない画面。

 約十六時間眠った僕の頭はスッキリを通り越して覚醒状態である。

(うん、これは運命だ。僕が変われるチャンスを神様が与えてくれたんだ。そう思うことにしよう。よし!押しちゃうぞ)

 僕はマウスを強く握り締め、「使徒となる」にカーソルを合わせる。

(このマウスをクリックすると、僕は異世界に行くのだろうか?何も準備しなくてもいいのか?てか、信じてる僕が少し怖い)

 寝巻き姿の僕は立ち上がる。そして異世界行きの準備を始めた。クローゼットから大きめのリュックを二つ出し、一つには着替えとタオルを入れる。毛布も必要かと悩んだが、かさ張るので諦めた。その変わり着ていく服にジャンパーを追加した。(今は夏だけど異世界が夏かどうか判らないしね)

 そしてもう一つのリュックを持ってキッチンに向かった。食料調達の為だ。家政婦さんは朝七時に出勤して夕方四時に帰宅するので今は居ない。兄と妹はまだ寝ている。

 キッチンの冷蔵庫を開けると、昨日の晩御飯と思われるものがラップに包まれていた。
 おにぎりとトンカツだ。僕はタッパーを見つけて詰め込む。付け合わせのサラダを食べながら。(残すのは良くないからね)

 そして調理しなくても食べれそうなものを探した。冷蔵庫にあったのはソーセージくらい。家政婦さんは毎日買い物して来るから食材は朝食用くらいしか無い。あとは棚にあった食パンと保管庫にあった缶詰めを持ち出した。

 また、その保管庫でいいものを見つけた。防災用グッズが詰まったリュックだ。僕はそのリュックが二つあったが一つだけ持ち出した。
 それから玄関に行き、丈夫そうな靴を選んで手に持ち部屋に戻った。

 ヘルメットが無いかと探したが、見つからなかったのでキャップを被る。そして大事な武器だがキッチンから包丁一本を持ち出した。(危ないからタオルでグルグル巻きだ)

 服を着替えて靴を履く。靴の汚れが気になるが無視をした。リュックは三つあるので一つを背負い、残りの二つは両肩に引っ掛ける。

 準備万端だ。(大丈夫かな?)

 そして僕は膝をついてテーブルにあるマウスを握り、再び「使徒となる」にカーソルをあわせる。そして勢いに任せてクリックした。

 そして待つこと一分。なにも変化無い。

 いや変化はあった。パソコンのモニターに表示されている内容だ。

「はぁ、期待した僕がバカだった」

 担いでいた三つのリュックを横に置き、靴を脱いで季節外れのジャンパーを脱ぐ。そして冷蔵庫からコーラを取り出して、緊張で乾いた喉を潤す為に半分ほど飲んでテーブルの前にドカッと座った。(ああ、飲み物持っていくの忘れてたな。もう必要無いけどね)

 そして僕はパソコンのモニターを見た。

 モニターに映し出されているのは何処かの家の中のようだ。屋根をカットした状態で上からの視点で一つの部屋が見える。
 モニターの右端には、何種類かの項目が表示されている。その項目の一番下には全方向に移動を促す矢印があった。

 今、映し出されている部屋は台所のようだ。広さは六畳ほどだろうか。四人用のテーブルがあり、流し台と竈がある。その横には大きな壺があった。(水が入っているようだ)

 異世界ファンタジーでよくある光景だ。

 僕は人が居ないのかと、右下の矢印を操作した。この矢印の操作で視点を変える事も出来て、部屋を移動することも出来た。

 そして見つけた。

 台所から隣の部屋に移動すると、そこは寝室であった。ここも六畳ほどの広さでベッドが二つ両サイドに置いてあった。
 そしてそのベッドで寝ている人影が三つ。母親らしき女性と子供が一つのベッドで寝ており、もう一つのベッドには一人だけ寝ていた。

 僕はその人物をよく見ようとズーム機能を使う。まずは親子と思われる方から。

 季節が夏なのか、薄い布をお腹の辺りに掛けているだけだった。ゲームのような画像ではなくリアルな映像だ。(これってほんとの映像のような気がしてきた。僕って犯罪者?)

 それでも僕は欲望に負けてズームした。そしてそこには綺麗な寝顔をした二十代前半と思われる女性の顔。そして少し下にズレて、可愛い顔をした男の子の顔があった。

 母親と思われる女性は少しやつれていて顔色が悪い。(病気なのだろうか)男の子の方も、やつれているようだが病気ではなさそうだ。

 そして驚いたことに頭の上には、三角の獣耳があった。(猫じゃないな。犬?狼?)
 続けて隣のベッドに視点を変える。そこには薄い布をベッドの下に投げ出して、下着姿でお腹丸出しの女の子が寝ていた。

(うわっ!ごめんなさい!)

 と、言いつつも視点はそのままでズームする僕は思春期真っ盛りの男の子。「これはゲームの映像なのだ!決してリアル映像ではないのだ!」と、本当はリアルだと思っている心を騙してじっくりと観察する僕であった。

 うん、パンツは紐パンなのね。

 足元からゆっくりと上に視点をスライドさせる犯罪者の春馬。日に焼けた足は細く、体つきも細かった。仰向けに寝ているお尻付近から、細長い銀色のしっぽが少し見えた。
 身長は140cmくらいだろうか。肩くらいまでの銀色の髪で可愛い顔だ。寝ているので瞳の色は判らない。そしてこの女の子もやつれた顔をしていた。

 僕はこの家族と思われる三人の事がとても気になった。何故こんなにやつれているのだろうと。父親は居ないのだろうか。母親は病気なのだろうかと。

 僕は確信している。これはゲームなのではなく、異世界の住人を映し出しているのだと。

 ならば僕は何故この映像を見せられているのだろうか?その疑問はすぐに解決した。

「ピコン」と電子音が鳴ると、画面下側にチャットウインドウが現れた。そしてそこにはメッセージが入っていた。

『アズール家族を救い、怠惰の神の信者へと導くのだ』

 うん、やっと流れが見えてきた。(説明が少な過ぎない?操作方法も手探りだし)

 ここから始まるのだ。僕とアズール家族との物語が。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...