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クエスト「アズール家族を救え」
第16話 こんばんわ異世界
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タルクから聞いた話を自分なりに纏めてみたが、思った以上に辛く酷い話だった。そんな過去があったのに、ミーナとタルクは心優しく真っ直ぐに生きている。僕にはその二人がとても輝いて見え、たいした理由も無いのに引きこもりになった自分がとても恥ずかくなった。
パソコンのモニターには、楽しく夕食をしている家族が映っている。僕はこれからもその光景を見る為に頑張ろうと心に決めた。
夕食は、桜子さんお手製の唐揚げと玉子焼きを食べているようだ。
「お母さん、このお肉スッゴい美味しいよ!外はカリッと中はジューシーで、塩だけじゃなくていろんな味がするんだ」
一部どこかのCMのようなコメントを言って唐揚げを食べるタルク。
「ふふ、これは多分生姜とニンニクを使ってるのね。風味がとてもいいわ。あと、何か知らない調味料も使ってるみたい。油で揚げるなんて贅沢な一品ね。味わって食べるのよ」
母親のミスカは、嬉しそうに食べるタルクを見て笑っていた。
「久々のお肉は最高ね!ソーセージも美味しかったけどお肉には勝てないわ。それとあとこの玉子料理なんだけど、こんなにたくさん玉子を使って凄いわね。ほんのり甘くて深い味わいがあって美味しいわ」
ミーナは皿に唐揚げと玉子焼きを乗せ、交互に食べていた。
「ふふ、こんなに楽しい夕食がとれるようになるなんて思っても見なかったわ。お母さんね、正直に言うと私はもう助からないと思ってたの。二人の為にも生きようと頑張ってはいたけどね。それがこんな奇跡のような事が起こるなんて夢にも思わな‥‥‥‥‥‥‥」
ミスカは再び愛する子供達と生きていく事が出来るんだと、感極まったのか話の途中で泣き始めた。
「「お母さん‥‥‥」」
ミーナとタルクは、ミスカの両隣に来て抱き付くと、一緒になって泣いていた。
「ふふ、急に泣いちゃってごめんね。お母さん、これからも二人と一緒に居られると思ったら嬉しくて堪らなかったの。これも全て神様のお陰ね。さあ、心を込めて神様に感謝のお祈りをしましょう」
ミーナとタルクが席に戻るのを確認したミスカが二人に頷くと、三人は両手を組み胸の前に持っていき目を閉じた。
「神様、私の病気を治してくださってありがとうございます。そしてたくさんの美味しい食べ物や飲み物を頂き、私達は幸せな生活を送ることが出来ました。本当にありがとうございます。これから頑張って三人で生きていきますので、どうか見守っていてください」
僕は最近泣き虫になったようだ。溢れる涙が止まらない。手のひらで涙を拭きながら祈る三人を見ていると、それは突然起こった。
「パンパカパーン、クエスト「アズール家族を救え」をクリアしました。クリア報酬は『魔法の腕輪』です。装備する為に、これから異世界に転移します。転移は三分後です」
「ええぇー!」
ノートパソコンからいきなり聞こえてきた女性の声。クエストクリアで魔法の腕輪で異世界転移で三分後??僕の頭はパニックだ。
(落ち着くんだ春馬。トイレは行ったか?ハンカチ持ったか? ちがーーう!!)
僕は壁に向かって頭をガンガン打ち付けた。(ふう、やっと落ち着いた)そして額から僅かに流れる何かを無視して部屋にあった防災グッズを拾い上げ、部屋を出て一階に駆け降りた。
まずは玄関に行き靴を履く。この時点で残り時間はもう無いと思った僕はキッチンに向かった。
「うわー、もう時間が無い!何処に飛ばされるか判らないから武器が必要だ!」
大きな声で独り言を叫びながら走る僕。その時に兄とすれ違ったが、そんな事を気にしている場合ではない。キッチンに着いた僕は包丁立てから一本の包丁を抜き出した。
『転移するよ』
右手にむき出しの包丁を持った時、頭の中に聞こえてきた軽薄そうな女性の声。その瞬間に世界は暗転した。
そこは闇の世界だった。
僕は少し肌寒さを感じていた。それはただ寒いだけではなく、この場所が発する何かを感じ取ったのだろう。どうやらここは森のようだ。
風に吹かれて枝や葉が揺れる音がする。だが、動物や虫の鳴き声は聞こえない。
僕は動揺して手に持っていた防災グッズが入ったリュックと包丁を手放した。ドサッ、ズサッと音がして包丁は地面に突き刺さった。
僕は心を落ち着けようと空を見上げて深呼吸をした。その空には地球の二倍はあるのではと言った大きな月があった。
「そうか、夜だから真っ暗なのね」
少しだけホッとした僕は闇に目を慣らせ、ゆっくりと周りを見渡した。僕が立っている場所は空き地のようだ。その周りには大きな木がたくさんある。そして空き缶を木の棒に被せているものが五本あった。
(あれはタルクが魔法の練習に使っていたもの。それじゃあここは「不浄の森」だ!)
僕は急いでまだ見ていない方向を見た。そして見つけた一軒の家。パソコンのモニター越しで見ていたアズール家族の家だ。
手前に畑があるようだが、暗くてなにがあるのかはよく見えない。僕は畑を横切って家の前まで歩いていった。この家の中にミーナ、タルク、ミスカさんが居る。そう思った僕は不思議な気持ちになりドキドキしていた。
僕は玄関の前まで来た。耳を澄ますと楽しそうな話し声が聞こえてくる。僕はもう一度深呼吸をして大きな声で叫んだ。
「こんばんわ!」
パソコンのモニターには、楽しく夕食をしている家族が映っている。僕はこれからもその光景を見る為に頑張ろうと心に決めた。
夕食は、桜子さんお手製の唐揚げと玉子焼きを食べているようだ。
「お母さん、このお肉スッゴい美味しいよ!外はカリッと中はジューシーで、塩だけじゃなくていろんな味がするんだ」
一部どこかのCMのようなコメントを言って唐揚げを食べるタルク。
「ふふ、これは多分生姜とニンニクを使ってるのね。風味がとてもいいわ。あと、何か知らない調味料も使ってるみたい。油で揚げるなんて贅沢な一品ね。味わって食べるのよ」
母親のミスカは、嬉しそうに食べるタルクを見て笑っていた。
「久々のお肉は最高ね!ソーセージも美味しかったけどお肉には勝てないわ。それとあとこの玉子料理なんだけど、こんなにたくさん玉子を使って凄いわね。ほんのり甘くて深い味わいがあって美味しいわ」
ミーナは皿に唐揚げと玉子焼きを乗せ、交互に食べていた。
「ふふ、こんなに楽しい夕食がとれるようになるなんて思っても見なかったわ。お母さんね、正直に言うと私はもう助からないと思ってたの。二人の為にも生きようと頑張ってはいたけどね。それがこんな奇跡のような事が起こるなんて夢にも思わな‥‥‥‥‥‥‥」
ミスカは再び愛する子供達と生きていく事が出来るんだと、感極まったのか話の途中で泣き始めた。
「「お母さん‥‥‥」」
ミーナとタルクは、ミスカの両隣に来て抱き付くと、一緒になって泣いていた。
「ふふ、急に泣いちゃってごめんね。お母さん、これからも二人と一緒に居られると思ったら嬉しくて堪らなかったの。これも全て神様のお陰ね。さあ、心を込めて神様に感謝のお祈りをしましょう」
ミーナとタルクが席に戻るのを確認したミスカが二人に頷くと、三人は両手を組み胸の前に持っていき目を閉じた。
「神様、私の病気を治してくださってありがとうございます。そしてたくさんの美味しい食べ物や飲み物を頂き、私達は幸せな生活を送ることが出来ました。本当にありがとうございます。これから頑張って三人で生きていきますので、どうか見守っていてください」
僕は最近泣き虫になったようだ。溢れる涙が止まらない。手のひらで涙を拭きながら祈る三人を見ていると、それは突然起こった。
「パンパカパーン、クエスト「アズール家族を救え」をクリアしました。クリア報酬は『魔法の腕輪』です。装備する為に、これから異世界に転移します。転移は三分後です」
「ええぇー!」
ノートパソコンからいきなり聞こえてきた女性の声。クエストクリアで魔法の腕輪で異世界転移で三分後??僕の頭はパニックだ。
(落ち着くんだ春馬。トイレは行ったか?ハンカチ持ったか? ちがーーう!!)
僕は壁に向かって頭をガンガン打ち付けた。(ふう、やっと落ち着いた)そして額から僅かに流れる何かを無視して部屋にあった防災グッズを拾い上げ、部屋を出て一階に駆け降りた。
まずは玄関に行き靴を履く。この時点で残り時間はもう無いと思った僕はキッチンに向かった。
「うわー、もう時間が無い!何処に飛ばされるか判らないから武器が必要だ!」
大きな声で独り言を叫びながら走る僕。その時に兄とすれ違ったが、そんな事を気にしている場合ではない。キッチンに着いた僕は包丁立てから一本の包丁を抜き出した。
『転移するよ』
右手にむき出しの包丁を持った時、頭の中に聞こえてきた軽薄そうな女性の声。その瞬間に世界は暗転した。
そこは闇の世界だった。
僕は少し肌寒さを感じていた。それはただ寒いだけではなく、この場所が発する何かを感じ取ったのだろう。どうやらここは森のようだ。
風に吹かれて枝や葉が揺れる音がする。だが、動物や虫の鳴き声は聞こえない。
僕は動揺して手に持っていた防災グッズが入ったリュックと包丁を手放した。ドサッ、ズサッと音がして包丁は地面に突き刺さった。
僕は心を落ち着けようと空を見上げて深呼吸をした。その空には地球の二倍はあるのではと言った大きな月があった。
「そうか、夜だから真っ暗なのね」
少しだけホッとした僕は闇に目を慣らせ、ゆっくりと周りを見渡した。僕が立っている場所は空き地のようだ。その周りには大きな木がたくさんある。そして空き缶を木の棒に被せているものが五本あった。
(あれはタルクが魔法の練習に使っていたもの。それじゃあここは「不浄の森」だ!)
僕は急いでまだ見ていない方向を見た。そして見つけた一軒の家。パソコンのモニター越しで見ていたアズール家族の家だ。
手前に畑があるようだが、暗くてなにがあるのかはよく見えない。僕は畑を横切って家の前まで歩いていった。この家の中にミーナ、タルク、ミスカさんが居る。そう思った僕は不思議な気持ちになりドキドキしていた。
僕は玄関の前まで来た。耳を澄ますと楽しそうな話し声が聞こえてくる。僕はもう一度深呼吸をして大きな声で叫んだ。
「こんばんわ!」
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