34 / 59
ラバニエル王国編
第29話 商業ギルド(2)
しおりを挟む
ウイスキーの製造方法を登録する為に商業ギルドに来たエルフィーさんと私はギルド長室へやって来た。そこに居たのは小太りの男。
「これはこれは名匠エルフィー様。本日はどのようなご用件でしょうか。もしや以前からお願いしていた我が商業ギルドでエルフィー様の武器の販売を了承頂けるのでしょうか」
エルフィーさんはその男の言葉を無視して黒革の豪華なソファーに座り一言口を開いた。
「ギルド長のナンシーは何処だ」
その男は話を無視された事に僅かに顔を歪ませていたがなんとか笑顔を取り戻し、テーブルを挟んだ対面側のソファーに座って話し始めた。
「ギルド長は先週から出張に出ておりまして戻りは3日後の予定です。その間は私デルブがギルド長代理として業務を管理しておりますので用件をお伺いします」
それを聞いたエルフィーさんは思いっきり不満顔だ。オマケに「はぁ」とため息をついている。私はそんなエルフィーさんの横に行ってソファーになに食わぬ顔でちょこんと座る。するとギルド長代理のデブ?デルブさんが「お前は誰だ?」と言った目で私を見た。(さっきから表情に出すぎだね。商売人失格だよ?)
「仕方がないな。おいお前、この部屋に誰一人近付けるな。それと魔法紙の準備をしろ。今すぐにだ」
「はい、それではまずお茶の準備をさせますのでしばらくお待ちください」
デルブさんはそう言って席を立ちドアに向かったが、それをエルフィーさんが止めた。
「ワシは今すぐ準備しろと言ったんだ。茶などいらんわい!」
(エルフィーさんの言動は少し横暴だけど、あのデルブさんの態度がそうさせてるんだよね。だってエルフィーさんと一緒に部屋に入った私を見たのに挨拶1つも無いんだよ?それは駄目でしょ)
そのデルブさんはまたもや顔を歪ませ何故か今度は私を睨み付けた。そしてその顔のままで「判りました」と言って部屋を出ていった。
「奏、すまんな。すぐに登録を済ませるから我慢してくれ」
エルフィーさんは私に向かって頭を下げた。
「ふふ、気にしてないから大丈夫」
それから数分して額に汗を滲ませたデルブさんが書類を抱えて戻ってきてソファーに座った。それは割りと大きめの羊皮紙で何枚かを筒状にしていた。
「お待たせしました。ここに魔法紙5枚あります。それでは記入するにあたって立会人となる私に登録内容の説明をお願い致します」
エルフィーさんにそう話すデルブさん。私を完全に無視した状態だ。そのエルフィーさんは怒っても無駄だと思ったのか、そのまま話を進めようと口を開いた。
「今回登録する内容は酒の製造方法じゃ。その酒はウイス‥‥‥‥‥‥」
「エルフィーさんちょっと待って。あそこの絵画が飾ってある壁だけど隠し扉だよ。その扉の裏に人の気配がある」
私はエルフィーさんの話を遮り隠し扉と人の気配があることを伝えた。それを聞いたエルフィーさんはデルブさんを鋭く睨んでいる。(おいおい、お前もうダメダメだよ)
「おい、ワシは誰も近付けるなと言ったよな。何故それを守らんのじゃ?」
エルフィーさんに睨まれたデルブさんの顔は真っ青だ。そしてそのデルブさんが言い訳を始めた。
「あ、あの、このギルド長室で行う商談は扱う金額が高額なものが多く、後で問題が起きないように筆記専属者が記録するようになっているのです。これはお客様の為でもありま‥‥‥」
「そんなこと知っとるわい!だがその客が誰も近付けるなと言ったんだ。それを了承も得ずにするとはどういう事だ!」
もうデルブさんは話す気力を失ったようで項垂れて黙ってしまった。その項垂れる時に私を睨んでいたのは最悪だ。
「はぁ、もういいわい。この話は無しじゃ。奏、時間を無駄にして済まんかった。こんな所はすぐに出ていくぞ」
エルフィーさんと私はデルブさんに挨拶することなく部屋を出ていった。そして1階まで降りると受付をしていたアリアさんが私達に気付いて走り寄ってきた。
「あの、ギルド長代理が粗相をしたようで誠に申し訳ございません。出来れば今後ともご利用頂ければ助かります。本当にすみません」
そう言って深々と頭を下げるアリアさん。(この人凄いね。状況把握完璧だよ)
「ああ、気にするな。お主が謝る必要はない。また必要なことがあれば顔を出す。ただしあの男は2度とワシに近付けるな」
エルフィーさんはそう言って歩き出す。私はアリアさんに笑顔で手を振ってからエルフィーさんを追いかけた。そして私が追い付くとエルフィーさんが言った。
「これから冒険者ギルドに行くぞ」
「えっ、そうなの!終わりじゃないの?」
「そんな訳あるか!登録がまだ済んでなかろうが!」
(はぁ‥‥今日は長い1日になりそうだ‥‥‥)
私はトボトボと髭もじゃオヤジの後ろをついて歩いて行くのであった。
「これはこれは名匠エルフィー様。本日はどのようなご用件でしょうか。もしや以前からお願いしていた我が商業ギルドでエルフィー様の武器の販売を了承頂けるのでしょうか」
エルフィーさんはその男の言葉を無視して黒革の豪華なソファーに座り一言口を開いた。
「ギルド長のナンシーは何処だ」
その男は話を無視された事に僅かに顔を歪ませていたがなんとか笑顔を取り戻し、テーブルを挟んだ対面側のソファーに座って話し始めた。
「ギルド長は先週から出張に出ておりまして戻りは3日後の予定です。その間は私デルブがギルド長代理として業務を管理しておりますので用件をお伺いします」
それを聞いたエルフィーさんは思いっきり不満顔だ。オマケに「はぁ」とため息をついている。私はそんなエルフィーさんの横に行ってソファーになに食わぬ顔でちょこんと座る。するとギルド長代理のデブ?デルブさんが「お前は誰だ?」と言った目で私を見た。(さっきから表情に出すぎだね。商売人失格だよ?)
「仕方がないな。おいお前、この部屋に誰一人近付けるな。それと魔法紙の準備をしろ。今すぐにだ」
「はい、それではまずお茶の準備をさせますのでしばらくお待ちください」
デルブさんはそう言って席を立ちドアに向かったが、それをエルフィーさんが止めた。
「ワシは今すぐ準備しろと言ったんだ。茶などいらんわい!」
(エルフィーさんの言動は少し横暴だけど、あのデルブさんの態度がそうさせてるんだよね。だってエルフィーさんと一緒に部屋に入った私を見たのに挨拶1つも無いんだよ?それは駄目でしょ)
そのデルブさんはまたもや顔を歪ませ何故か今度は私を睨み付けた。そしてその顔のままで「判りました」と言って部屋を出ていった。
「奏、すまんな。すぐに登録を済ませるから我慢してくれ」
エルフィーさんは私に向かって頭を下げた。
「ふふ、気にしてないから大丈夫」
それから数分して額に汗を滲ませたデルブさんが書類を抱えて戻ってきてソファーに座った。それは割りと大きめの羊皮紙で何枚かを筒状にしていた。
「お待たせしました。ここに魔法紙5枚あります。それでは記入するにあたって立会人となる私に登録内容の説明をお願い致します」
エルフィーさんにそう話すデルブさん。私を完全に無視した状態だ。そのエルフィーさんは怒っても無駄だと思ったのか、そのまま話を進めようと口を開いた。
「今回登録する内容は酒の製造方法じゃ。その酒はウイス‥‥‥‥‥‥」
「エルフィーさんちょっと待って。あそこの絵画が飾ってある壁だけど隠し扉だよ。その扉の裏に人の気配がある」
私はエルフィーさんの話を遮り隠し扉と人の気配があることを伝えた。それを聞いたエルフィーさんはデルブさんを鋭く睨んでいる。(おいおい、お前もうダメダメだよ)
「おい、ワシは誰も近付けるなと言ったよな。何故それを守らんのじゃ?」
エルフィーさんに睨まれたデルブさんの顔は真っ青だ。そしてそのデルブさんが言い訳を始めた。
「あ、あの、このギルド長室で行う商談は扱う金額が高額なものが多く、後で問題が起きないように筆記専属者が記録するようになっているのです。これはお客様の為でもありま‥‥‥」
「そんなこと知っとるわい!だがその客が誰も近付けるなと言ったんだ。それを了承も得ずにするとはどういう事だ!」
もうデルブさんは話す気力を失ったようで項垂れて黙ってしまった。その項垂れる時に私を睨んでいたのは最悪だ。
「はぁ、もういいわい。この話は無しじゃ。奏、時間を無駄にして済まんかった。こんな所はすぐに出ていくぞ」
エルフィーさんと私はデルブさんに挨拶することなく部屋を出ていった。そして1階まで降りると受付をしていたアリアさんが私達に気付いて走り寄ってきた。
「あの、ギルド長代理が粗相をしたようで誠に申し訳ございません。出来れば今後ともご利用頂ければ助かります。本当にすみません」
そう言って深々と頭を下げるアリアさん。(この人凄いね。状況把握完璧だよ)
「ああ、気にするな。お主が謝る必要はない。また必要なことがあれば顔を出す。ただしあの男は2度とワシに近付けるな」
エルフィーさんはそう言って歩き出す。私はアリアさんに笑顔で手を振ってからエルフィーさんを追いかけた。そして私が追い付くとエルフィーさんが言った。
「これから冒険者ギルドに行くぞ」
「えっ、そうなの!終わりじゃないの?」
「そんな訳あるか!登録がまだ済んでなかろうが!」
(はぁ‥‥今日は長い1日になりそうだ‥‥‥)
私はトボトボと髭もじゃオヤジの後ろをついて歩いて行くのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる