35 / 59
ラバニエル王国編
第30話 冒険者ギルド(1)
しおりを挟む
商業ギルドで一悶着あった私達はその足で冒険者ギルドに向かった。その場所は第一城壁近くにある商業ギルドと違って第二城壁沿いで南門の近くにある。
そして冒険者ギルドを目指すエルフィーさんと私は話すことなく黙々と歩いている。それは商業ギルドに向かう時に気になった事が今でも尾を引いているからだ。エルフィーさんは私の正体が気になり、私は城下町の裏の顔と言われる街の北側の事が気になっていた。
「おい、着いたぞ。ここが冒険者ギルドじゃ。ここは腕に自信がある者が多く集まっている。そして勘違いしているヤツもな。ワシがおるから絡んでくる者は居ないと思うが、もし居たら遠慮することはない。奏の気が済むまでやればいいぞ。ただし殺しは駄目じゃ」
大きな建物の前で立ち止まり、私に向かって悪党のボスのような顔をして説明してくれたエルフィーさん。(まずはお前を成敗してやろうか!)
「へい、判りやしたボス!半殺しにすればいいんすね。任しといてくだせぇ」
(悪党のボスとくれば、三下のチンピラがセットだからね!)
「奏‥‥‥‥ワシは少し心配になってきたんじゃが‥‥‥出来れば大人しくしてくれよ。ホントに頼むぞ?判ってるな?」
「ふふふ、判ってますよー。それってアレでしょ?フリってやつ?任せといてよー」
私はエルフィーさんの隣に立って肘でお腹を突つき、ニヤけ顔でそう答えた。そのエルフィーさんは呆れ顔の心配顔だった。
「いや、頼むから本当にやるなよ。それじゃあ中に入るぞ。奏は脇目を振らずに付いてくるんじゃぞ。お願いじゃからな?」
「もう!そんなに期待されたら私張り切っちゃいますよー!」
(ぶふっ!髭もじゃの困り顔。めちゃくちゃオモれー!腹がよじれるんですがー)
そんな私はニコニコ顔で髭もじゃオヤジを通り越して冒険者ギルドの両開きのドアを勢いよく開け大声でさけんだ。
「たのもーー!‥‥‥‥ん?」
「しゃーーーー!バシャン!!」
私が開けたドアは左右に勢いよく滑っていき、遥か先の壁にぶち当たって激しい音をたてて弾けるように止まった。
「えーーと‥‥‥会心の一撃ってやつ?それともクリティカルヒットって言えばいい?」
私はエルフィーさんに向かって可愛く小首を傾げて聞いてみた。そしてエルフィーさんは「はぁ‥‥」とため息をついて答えてくれた。
「冒険者ギルドは時間帯によるが大勢での出入りが激しいから間口は広くしとるんじゃ。今は朝の忙しい時間を過ぎとるから扉を閉めとった訳じゃな」
(いや、こんなによく滑るレールにしてる事の説明をしてくれよ。お前の店もそうだよな?でも気にしてないよな?なんでだよ!)
私はなんとか心を落ち着けてエルフィーさんのあとを付いていく。思いっきり脇目を振りながら。(このイラつきを解消させてくれ!)
でもギルド内に居るゴロツキのような冒険者達はエルフィーボスが怖いのか、誰も目を合わせようとはしなかった。
そしてエルフィーさんは受付に行ってギルド長室まで案内してもらうよう頼み、私達はその受付嬢さんの案内で2階に上がった。
「コンコン」「エルフィー様とお連れ様がいらっしゃいました。中にお通ししますね」
そのギルド長室は2階の奥にあり、受付嬢さんが先に入り私達を迎え入れてくれる。そしてソファーの前に立ち私達を待ち、「こちらへどうぞ」とそのソファーに座るようにと勧めてくれた。私達は受付嬢さんにお礼を言って座り、私はギルド長室を見渡した。
この部屋は12畳ほどで大きく長い2対のソファーが置いてあり、あとは壁に本棚と窓際に大きな机が置いてあった。そしてその机で書類と奮闘している男性が居た。
その男性は背も横も大きく筋肉質でいい体格をしている。顔は凛々しくイケてるオジサンだがハゲ頭が私的にはマイナスポイントだ。そして左目に大きな傷があり目を塞いでいた。
「おお、エルフィー。久し振りだな。それと隣のお嬢さん、初めましてだな。俺はダルタンで冒険者ギルドのギルド長をしている。そこのエルフィーとは古い付き合いだ。宜しくな。
それでエルフィー、ちょっとこの書類を片付けるから少し待っててくれるか。メリーナ、悪いが2人にお茶と菓子を出してもらえるか」
さきほど案内してくれた受付嬢さんはドアの側で控えいる。(この人がメリーナさんか、背が高くてスラッとしててカッコいい女性だな。出るとこもちゃんとあるしね!)
そのメリーナさんはギルド長ダルタンさんの指示に頷いてドアを開けようとしたが何故かエルフィーさんが待ったをかけた。
「メリーナさん、ワシは自前のものがあるから隣に居る奏の分だけ頼む。ああ、ギルドで売ってる高い方の干し肉を持ってきてくれるか。金はあとで払うから値段を教えてくれ」
そう言ったエルフィーさんは、腰に着けていたアイテム袋から20年物ウイスキーの小樽とコップを取り出しテーブルに置き、小樽を慎重に持ち直して溢れないように注ぎ始めた。
すると静かな部屋に「トクトク」と小気味良い音が鳴り、ウイスキーの酒精と独特な甘い香りがほのかに漂った。
「お、おい、その琥珀色の輝き、そして強い酒精と甘い‥‥‥いや、甘いだけでなく複雑でいて高貴な香り。それは火酒なのか?でも火酒は無色透明だった筈だよな。エルフィー、それはなんだ!頼むから教えてくれ!」
ダルタンさんはそう言って手に持つ書類を放り出し、エルフィーさんの元へと歩き出す。そしてエルフィーさんと私はお互いに顔を見合せニヤリと笑い小さな声で言った。
「おい、ハゲ頭が釣れたぞ。大物だ」
「ぐふふ、今日は大漁ですね」
あと、オマケで受付嬢も釣れたとさ。
はい、おしまい‥‥‥‥じゃないよ!続くからね!
そして冒険者ギルドを目指すエルフィーさんと私は話すことなく黙々と歩いている。それは商業ギルドに向かう時に気になった事が今でも尾を引いているからだ。エルフィーさんは私の正体が気になり、私は城下町の裏の顔と言われる街の北側の事が気になっていた。
「おい、着いたぞ。ここが冒険者ギルドじゃ。ここは腕に自信がある者が多く集まっている。そして勘違いしているヤツもな。ワシがおるから絡んでくる者は居ないと思うが、もし居たら遠慮することはない。奏の気が済むまでやればいいぞ。ただし殺しは駄目じゃ」
大きな建物の前で立ち止まり、私に向かって悪党のボスのような顔をして説明してくれたエルフィーさん。(まずはお前を成敗してやろうか!)
「へい、判りやしたボス!半殺しにすればいいんすね。任しといてくだせぇ」
(悪党のボスとくれば、三下のチンピラがセットだからね!)
「奏‥‥‥‥ワシは少し心配になってきたんじゃが‥‥‥出来れば大人しくしてくれよ。ホントに頼むぞ?判ってるな?」
「ふふふ、判ってますよー。それってアレでしょ?フリってやつ?任せといてよー」
私はエルフィーさんの隣に立って肘でお腹を突つき、ニヤけ顔でそう答えた。そのエルフィーさんは呆れ顔の心配顔だった。
「いや、頼むから本当にやるなよ。それじゃあ中に入るぞ。奏は脇目を振らずに付いてくるんじゃぞ。お願いじゃからな?」
「もう!そんなに期待されたら私張り切っちゃいますよー!」
(ぶふっ!髭もじゃの困り顔。めちゃくちゃオモれー!腹がよじれるんですがー)
そんな私はニコニコ顔で髭もじゃオヤジを通り越して冒険者ギルドの両開きのドアを勢いよく開け大声でさけんだ。
「たのもーー!‥‥‥‥ん?」
「しゃーーーー!バシャン!!」
私が開けたドアは左右に勢いよく滑っていき、遥か先の壁にぶち当たって激しい音をたてて弾けるように止まった。
「えーーと‥‥‥会心の一撃ってやつ?それともクリティカルヒットって言えばいい?」
私はエルフィーさんに向かって可愛く小首を傾げて聞いてみた。そしてエルフィーさんは「はぁ‥‥」とため息をついて答えてくれた。
「冒険者ギルドは時間帯によるが大勢での出入りが激しいから間口は広くしとるんじゃ。今は朝の忙しい時間を過ぎとるから扉を閉めとった訳じゃな」
(いや、こんなによく滑るレールにしてる事の説明をしてくれよ。お前の店もそうだよな?でも気にしてないよな?なんでだよ!)
私はなんとか心を落ち着けてエルフィーさんのあとを付いていく。思いっきり脇目を振りながら。(このイラつきを解消させてくれ!)
でもギルド内に居るゴロツキのような冒険者達はエルフィーボスが怖いのか、誰も目を合わせようとはしなかった。
そしてエルフィーさんは受付に行ってギルド長室まで案内してもらうよう頼み、私達はその受付嬢さんの案内で2階に上がった。
「コンコン」「エルフィー様とお連れ様がいらっしゃいました。中にお通ししますね」
そのギルド長室は2階の奥にあり、受付嬢さんが先に入り私達を迎え入れてくれる。そしてソファーの前に立ち私達を待ち、「こちらへどうぞ」とそのソファーに座るようにと勧めてくれた。私達は受付嬢さんにお礼を言って座り、私はギルド長室を見渡した。
この部屋は12畳ほどで大きく長い2対のソファーが置いてあり、あとは壁に本棚と窓際に大きな机が置いてあった。そしてその机で書類と奮闘している男性が居た。
その男性は背も横も大きく筋肉質でいい体格をしている。顔は凛々しくイケてるオジサンだがハゲ頭が私的にはマイナスポイントだ。そして左目に大きな傷があり目を塞いでいた。
「おお、エルフィー。久し振りだな。それと隣のお嬢さん、初めましてだな。俺はダルタンで冒険者ギルドのギルド長をしている。そこのエルフィーとは古い付き合いだ。宜しくな。
それでエルフィー、ちょっとこの書類を片付けるから少し待っててくれるか。メリーナ、悪いが2人にお茶と菓子を出してもらえるか」
さきほど案内してくれた受付嬢さんはドアの側で控えいる。(この人がメリーナさんか、背が高くてスラッとしててカッコいい女性だな。出るとこもちゃんとあるしね!)
そのメリーナさんはギルド長ダルタンさんの指示に頷いてドアを開けようとしたが何故かエルフィーさんが待ったをかけた。
「メリーナさん、ワシは自前のものがあるから隣に居る奏の分だけ頼む。ああ、ギルドで売ってる高い方の干し肉を持ってきてくれるか。金はあとで払うから値段を教えてくれ」
そう言ったエルフィーさんは、腰に着けていたアイテム袋から20年物ウイスキーの小樽とコップを取り出しテーブルに置き、小樽を慎重に持ち直して溢れないように注ぎ始めた。
すると静かな部屋に「トクトク」と小気味良い音が鳴り、ウイスキーの酒精と独特な甘い香りがほのかに漂った。
「お、おい、その琥珀色の輝き、そして強い酒精と甘い‥‥‥いや、甘いだけでなく複雑でいて高貴な香り。それは火酒なのか?でも火酒は無色透明だった筈だよな。エルフィー、それはなんだ!頼むから教えてくれ!」
ダルタンさんはそう言って手に持つ書類を放り出し、エルフィーさんの元へと歩き出す。そしてエルフィーさんと私はお互いに顔を見合せニヤリと笑い小さな声で言った。
「おい、ハゲ頭が釣れたぞ。大物だ」
「ぐふふ、今日は大漁ですね」
あと、オマケで受付嬢も釣れたとさ。
はい、おしまい‥‥‥‥じゃないよ!続くからね!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる