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ラバニエル王国編
第31話 冒険者ギルド(2)
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冒険者ギルドでウイスキーの製造方法を登録しようとエルフィーさんと私はギルド長ダルタンさんの元へと訪れた。そしてエルフィーさんが取り出した20年物のウイスキーに食い付いたダルタンさんであった。
「おいおい、その酒はいったいなんなんだ。エルフィー、笑ってないで教えてくれよ」
仕事中だったダルタンさんは、その書類を放り出して私達の前に座るとエルフィーさんが注いだウイスキーに目が釘付けになっていた。
そのダルタンさんを気にすることなく、エルフィーさんはコップを手に持ちゆっくりと口まで持ってく。そして幸せそうな顔をして「ゴクリ」と一口飲んだ。
「くぅ~、この香りと深くまろやかな味わい。そして喉と胃にガツンとくる感覚。何度飲んでも最高じゃわい!」
その一部始終を見たダルタンさん。恨めしそうにエルフィーさんを睨み付けて言った。
「ぐぬぬ、お前がそこまで言う酒だ。さぞかし旨い酒なんだろう。そろそろ意地悪はやめて教えてくれないか?」
それを聞いたエルフィーさんはもう上機嫌だ。
「ふははは、すまんすまん。まあ取りあえずお前も飲んでみろ。説明はそれからじゃ」
エルフィーさんはそう言って、アイテム袋からコップを2つ追加で取り出した。そして大事そうに小樽を持ってそのコップにウイスキーを注ぐと、ダルタンさんの前とドアの側で物欲しそうに見ていたメリーナさんに「ほれ」と言って手渡した。
「まずは香りを楽しめ。そして口に含み酒の旨さを感じろ。それで最後に飲んで喉と胃にくる酒精の凄さを味わえ」
2人はエルフィーさんの言葉に頷いてまず香りを楽しんだ。
「こ、これはなんて芳醇な香りなんだ。とても複雑で言葉で言い表せないほど凄まじい」
「ほんと、とても素敵な香りですね」
そして次に口に含むと2人の表情は次々と変わっていった。それは驚き、喜び、幸福、納得だ。それから最後にウイスキーを飲んで同じ表情を繰り返す2人であった。
「こりゃあすげえ‥‥‥」
「ほんと、すげぇ‥‥‥」
ウイスキーを飲んだダルタンさんはコップに残る琥珀色のウイスキーに目を向けたままそう呟いた。そしてメリーナさんは雑な言葉使いになっている事にも気付かず惚けていた。
エルフィーさんと私はその2人の様子を見て悪党ボスと三下チンピラ顔になっていた。(もうお前らはこれ無しでは生きていけない体になってしまったのだよ。ふはははは!)
「その酒はウイスキーだ。今日はその製造方法の登録に来たんじゃ。メリーナさん、悪いが魔法紙を準備してもらえるか?それとダルタン。お前はいつまでウイスキーを眺めとるんじゃ、さっさと動け!」
「あ、ああ、すまん。あまりにもこの酒が衝撃的で‥‥メリーナ、エルフィーが頼んだ魔法紙だが急いで持ってきてくれ」
「は、はい。判りました!」
惚けていたメリーナさんは正気に戻り部屋を出ていった。そしてダルタンさんはエルフィーさんに向かって質問を始めた。
「それで登録してからはどうするんだ?誰がこの酒、ウイスキーを造るんだ。そして販売はするのか?」
「造るのはこのワシじゃ」
「エルフィーさん!」
ダルタンさんの質問に即答するエルフィーさん。(武器屋を辞めないと言ったのに‥‥)
「奏、すまんな。ワシはこのウイスキーに心底惚れたんだ。だから他のヤツに任せる事など出来んのじゃ。だが奏とは約束したから武器屋は続ける。ただその時間が少なくなる。それで許してはくれないか?」
(そこまで言われると‥‥‥どうしよう‥‥‥)
エルフィーさんの言葉に私が悩んでいるとダルタンさんが話し掛けてくる。それは私の悩む気持ちを軽くしてくれるものだった。
「奏、と呼び捨てでいいよな。あのな、奏。コイツは気に入った相手にしか売らない頑固者として有名だ。だから元々造る数も少なく酒を飲んでる時間のほうが長いくらいなんだ。
そして名匠と呼ばれるコイツが造る武器だ。造る数が少なくてもその武器は高価で売れるから使いきれないほどの金を持っている。趣味のないコイツは酒を買うくらいしかないしな。
だからその酒を飲む時間が造る時間に変わったと思えばいいんだ。気にすることはない」
その言葉を聞いた私はエルフィーさんの顔を見る。とても真剣で心を決めた男の顔だった。そして私を見てエルフィーさんは頷いた。
「まあそこまで言われたら仕方ないか。でも絶対に武器屋は辞めちゃ駄目だからね?」
「ああ、約束は守る。ワシは約束を破ったことはない。なあ、ダルタンよ」
「そうだな。コイツは頑固で真面目な男だからな。それにウイスキーだけならそんなに時間を掛けることはないんじゃないか?まだ製造方法を聞いてないから断言は出来ないがな」
ダルタンさんはエルフィーさんを見て「どうなんだ?」と聞いていた。
「ああ、火酒からウイスキーを造るからそんなに時間は取られることはないじゃろ。火酒は故郷から仕入れるつもりじゃしな。あとは樽に入れて寝かせるだけじゃから、樽の選定や詰め替え作業が終わればあとは保管したウイスキーの管理だけになる筈じゃ」
そう言ったエルフィーさんとダルタンさんは「なら問題ない」と安心顔だ。
「でもなぁ、ウイスキーってあれだけじゃ無いんだよね。それと他の種類だけど旨い酒もまだまだあるんだよねー」
「「まぢか!!」」
2人で「問題ない、問題ない」とお互いの顔を見てニコニコして話していたところ、私の爆弾発言に驚き顔で2人仲良く一緒に振り向く髭もじゃとハゲ。
「でも教えないよ?」
「「まぢかーーー!」」
その髭もじゃとハゲは2人仲良く叫び、そしてソファーの前にあるテーブルに突っ伏した。
(お前らオモれーな。ナイスコンビ!)
「おいおい、その酒はいったいなんなんだ。エルフィー、笑ってないで教えてくれよ」
仕事中だったダルタンさんは、その書類を放り出して私達の前に座るとエルフィーさんが注いだウイスキーに目が釘付けになっていた。
そのダルタンさんを気にすることなく、エルフィーさんはコップを手に持ちゆっくりと口まで持ってく。そして幸せそうな顔をして「ゴクリ」と一口飲んだ。
「くぅ~、この香りと深くまろやかな味わい。そして喉と胃にガツンとくる感覚。何度飲んでも最高じゃわい!」
その一部始終を見たダルタンさん。恨めしそうにエルフィーさんを睨み付けて言った。
「ぐぬぬ、お前がそこまで言う酒だ。さぞかし旨い酒なんだろう。そろそろ意地悪はやめて教えてくれないか?」
それを聞いたエルフィーさんはもう上機嫌だ。
「ふははは、すまんすまん。まあ取りあえずお前も飲んでみろ。説明はそれからじゃ」
エルフィーさんはそう言って、アイテム袋からコップを2つ追加で取り出した。そして大事そうに小樽を持ってそのコップにウイスキーを注ぐと、ダルタンさんの前とドアの側で物欲しそうに見ていたメリーナさんに「ほれ」と言って手渡した。
「まずは香りを楽しめ。そして口に含み酒の旨さを感じろ。それで最後に飲んで喉と胃にくる酒精の凄さを味わえ」
2人はエルフィーさんの言葉に頷いてまず香りを楽しんだ。
「こ、これはなんて芳醇な香りなんだ。とても複雑で言葉で言い表せないほど凄まじい」
「ほんと、とても素敵な香りですね」
そして次に口に含むと2人の表情は次々と変わっていった。それは驚き、喜び、幸福、納得だ。それから最後にウイスキーを飲んで同じ表情を繰り返す2人であった。
「こりゃあすげえ‥‥‥」
「ほんと、すげぇ‥‥‥」
ウイスキーを飲んだダルタンさんはコップに残る琥珀色のウイスキーに目を向けたままそう呟いた。そしてメリーナさんは雑な言葉使いになっている事にも気付かず惚けていた。
エルフィーさんと私はその2人の様子を見て悪党ボスと三下チンピラ顔になっていた。(もうお前らはこれ無しでは生きていけない体になってしまったのだよ。ふはははは!)
「その酒はウイスキーだ。今日はその製造方法の登録に来たんじゃ。メリーナさん、悪いが魔法紙を準備してもらえるか?それとダルタン。お前はいつまでウイスキーを眺めとるんじゃ、さっさと動け!」
「あ、ああ、すまん。あまりにもこの酒が衝撃的で‥‥メリーナ、エルフィーが頼んだ魔法紙だが急いで持ってきてくれ」
「は、はい。判りました!」
惚けていたメリーナさんは正気に戻り部屋を出ていった。そしてダルタンさんはエルフィーさんに向かって質問を始めた。
「それで登録してからはどうするんだ?誰がこの酒、ウイスキーを造るんだ。そして販売はするのか?」
「造るのはこのワシじゃ」
「エルフィーさん!」
ダルタンさんの質問に即答するエルフィーさん。(武器屋を辞めないと言ったのに‥‥)
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(そこまで言われると‥‥‥どうしよう‥‥‥)
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「奏、と呼び捨てでいいよな。あのな、奏。コイツは気に入った相手にしか売らない頑固者として有名だ。だから元々造る数も少なく酒を飲んでる時間のほうが長いくらいなんだ。
そして名匠と呼ばれるコイツが造る武器だ。造る数が少なくてもその武器は高価で売れるから使いきれないほどの金を持っている。趣味のないコイツは酒を買うくらいしかないしな。
だからその酒を飲む時間が造る時間に変わったと思えばいいんだ。気にすることはない」
その言葉を聞いた私はエルフィーさんの顔を見る。とても真剣で心を決めた男の顔だった。そして私を見てエルフィーさんは頷いた。
「まあそこまで言われたら仕方ないか。でも絶対に武器屋は辞めちゃ駄目だからね?」
「ああ、約束は守る。ワシは約束を破ったことはない。なあ、ダルタンよ」
「そうだな。コイツは頑固で真面目な男だからな。それにウイスキーだけならそんなに時間を掛けることはないんじゃないか?まだ製造方法を聞いてないから断言は出来ないがな」
ダルタンさんはエルフィーさんを見て「どうなんだ?」と聞いていた。
「ああ、火酒からウイスキーを造るからそんなに時間は取られることはないじゃろ。火酒は故郷から仕入れるつもりじゃしな。あとは樽に入れて寝かせるだけじゃから、樽の選定や詰め替え作業が終わればあとは保管したウイスキーの管理だけになる筈じゃ」
そう言ったエルフィーさんとダルタンさんは「なら問題ない」と安心顔だ。
「でもなぁ、ウイスキーってあれだけじゃ無いんだよね。それと他の種類だけど旨い酒もまだまだあるんだよねー」
「「まぢか!!」」
2人で「問題ない、問題ない」とお互いの顔を見てニコニコして話していたところ、私の爆弾発言に驚き顔で2人仲良く一緒に振り向く髭もじゃとハゲ。
「でも教えないよ?」
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