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ラバニエル王国編
第50話 ギュードンツユダック大盛り
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私は第2ラウンドの会場となる王城にある竜舎に行き、極度の魔力枯渇状態で生死の境を漂い地に伏せている飛竜『ギュードンツユダック』に聖女の力を使った。
「悪いところを全部治して。大盛りで」
この『大盛り』の言葉のせいなのか発動するまで時間がかかり、そしていつもより盛大に白く輝く光りに包まれるダック。
(あ、あのぅ‥‥‥大丈夫ですか‥‥‥)
そしてその白く輝くダックの光景と私を交互にポカンと口を開けて見ている少しアホなトムソンさん。そして私はそのトムソンさんを安心させるために笑顔を向ける。だがその私の頬には一筋の汗が「ツゥー」と流れて落ちていた。
それからいつもより長時間眩しく耀いていたその白光が徐々に収まりダックの姿がうっすらと見えてくる。どうやらもう元気に立ち上がっているようだ。
その光景をいつの間にか私の左右に全員横1列で並んで眺める私達。カルビーンお爺さんが「これが聖女の力‥‥」とささやくと、「私の時と少し違うような?」と小さな声で言うサーシャさん。エルフィーさんは「こりゃすげぇ」と感心し、トムソンさんは相変わらずポカンと口を開けていた。
そしてついに光が収まり立ち姿のダックが私達の前に現れた。その姿はキリッとした顔付きで翼の骨格が鋭利になり一回り大きくなっている。そして体も引き締まり長い尾の先端には尾翼が生えていた。それは全体がシャープで切れがあり、広大な空を縦横無尽に素早い動きで飛び回る姿を想像させるものだった。
(こ、これって前の姿と全然違うよね‥‥)
私は不安になりバレないように正面を向いたまま目だけをギロりと横に向けトムソンさんの様子を確かめてみた。そのトムソンさんはワナワナと震えている。(やっぱりこれってヤバイよね‥‥‥)
「そ、そんな‥‥‥」
(ど、ど、どうしよう。『元気になったんだから許してね!』じゃ駄目?だよね‥‥‥)
そのトムソンさんはワナワナしたままダックにゆっくりと近付いて行き、少し手前で両膝を突き項垂れて言った。
「ああそんな‥‥ちょっと折れ曲がった尻尾が真っ直ぐになってる‥‥お気に入りだったのに」
(お前‥‥‥全身の違いじゃなくて尻尾かよ!違う姿になった事よりも曲がった尻尾がそんなにお気に入りなのかい!はぁ、仕方ない)
私はため息をついてからダックに近付き右手で尻尾を触り再び聖女の力を使った。
「おかわり」
その私の言葉に反応して今度は尻尾のみが白い輝きに包まれる。そしてその輝きは私に抗議しているかのように高速点滅していた。
そして光が収まりそこには上向きに緩やかに曲がりそして先端がまた水平に戻っている尻尾が見えた。(尾翼が生えてるからちょっと飛行機やヘリコプターの尾翼みたいで意外と格好いいかも?)
『ほぉ、意外と格好いいね』
その私の小さな呟きが聞こえていたのか治った尻尾を撫でながら目尻を下げ口角を上げて小憎らしい笑顔で私を見るトムソンさん。(さっきまで項垂れてたのに‥‥そしてその顔‥‥思いっきりグーパンしていいですか?)
「おおー、前より一段と素敵な尻尾になってるぞ!なぁダック、お前もそう思うだろ?」
そう言ってダックの顔を見るトムソンさん。
「お、お前は誰だ!」
そして全身が変化している事に気が付き驚いてワナワナし始めたどこか抜けてる男。
(気付くの遅いんじゃ!)
「ああ、ダックか。そ、その姿は‥‥‥」
そう言って何故か小憎らしい笑顔で私を見てなにかを待っている10代少女1人に聞いたグーパンしたい男第一位。
『はいはい、凄く格好いいですねー』
その私の言葉に満足したのかダックの方を向き撫でながら「素敵な尻尾だね」「その切れ長の顔も最高だよ」と言ってるトムソンさん。そしてその包容タイムは10分ほど続いた。
それから満足したのかダックの元を離れて私の所に歩いてくるトムソンさん。そして真剣な顔をして私に深く頭を下げると両膝を突いて目線を合わせ話し始めた。
「私はドラゴンライダーとしては一流だったが剣術が未熟で戦闘がまるで駄目だった。その私がカール隊長の部下になって10年。今では一角の剣士だ。カール隊長は頭がよくて部下にも優しくそしてとても強い。そのカール隊長は戦闘が苦手な私に根気強く剣術を教えてくれ、戦闘で危ないところを何度も救って頂いた。私はそんなカール隊長を尊敬している。
そのカール隊長が私に大事な任務を与えてくれた。だから私はその任務を達成しようと血を分けた可愛い妹とも言えるダックに無理をさせてしまった。そしてもう駄目かと思っていた時にあなたが現れダックを治してくれた」
そこまで一気に話したトムソンさんは、地面に突いた両膝のうち片膝を上げ右手を胸に掲げ頭を下げた。
「第2部隊ドラゴンライダーであるトムソンは最大の敬意を持ってお礼申し上げます。奏様、本当にありがとうございました。あなたのお陰でダックは治り、そしてこれで窮地に居るカール隊長の元へと戻る事が出来ます」
そう言って立ち上がるその姿は正に勇敢な戦士を思わせるものだった。(ほぅ、アホなだけかと思ったらイカす男じゃないか。好感度アップだね!そしてそのダックは女の子だったんだ。なのにダック?好感度ダウンだね!)
それから皆で集まって話し合いを始めた。もちろん聖女の森に行くことについてだ。
「悪いところを全部治して。大盛りで」
この『大盛り』の言葉のせいなのか発動するまで時間がかかり、そしていつもより盛大に白く輝く光りに包まれるダック。
(あ、あのぅ‥‥‥大丈夫ですか‥‥‥)
そしてその白く輝くダックの光景と私を交互にポカンと口を開けて見ている少しアホなトムソンさん。そして私はそのトムソンさんを安心させるために笑顔を向ける。だがその私の頬には一筋の汗が「ツゥー」と流れて落ちていた。
それからいつもより長時間眩しく耀いていたその白光が徐々に収まりダックの姿がうっすらと見えてくる。どうやらもう元気に立ち上がっているようだ。
その光景をいつの間にか私の左右に全員横1列で並んで眺める私達。カルビーンお爺さんが「これが聖女の力‥‥」とささやくと、「私の時と少し違うような?」と小さな声で言うサーシャさん。エルフィーさんは「こりゃすげぇ」と感心し、トムソンさんは相変わらずポカンと口を開けていた。
そしてついに光が収まり立ち姿のダックが私達の前に現れた。その姿はキリッとした顔付きで翼の骨格が鋭利になり一回り大きくなっている。そして体も引き締まり長い尾の先端には尾翼が生えていた。それは全体がシャープで切れがあり、広大な空を縦横無尽に素早い動きで飛び回る姿を想像させるものだった。
(こ、これって前の姿と全然違うよね‥‥)
私は不安になりバレないように正面を向いたまま目だけをギロりと横に向けトムソンさんの様子を確かめてみた。そのトムソンさんはワナワナと震えている。(やっぱりこれってヤバイよね‥‥‥)
「そ、そんな‥‥‥」
(ど、ど、どうしよう。『元気になったんだから許してね!』じゃ駄目?だよね‥‥‥)
そのトムソンさんはワナワナしたままダックにゆっくりと近付いて行き、少し手前で両膝を突き項垂れて言った。
「ああそんな‥‥ちょっと折れ曲がった尻尾が真っ直ぐになってる‥‥お気に入りだったのに」
(お前‥‥‥全身の違いじゃなくて尻尾かよ!違う姿になった事よりも曲がった尻尾がそんなにお気に入りなのかい!はぁ、仕方ない)
私はため息をついてからダックに近付き右手で尻尾を触り再び聖女の力を使った。
「おかわり」
その私の言葉に反応して今度は尻尾のみが白い輝きに包まれる。そしてその輝きは私に抗議しているかのように高速点滅していた。
そして光が収まりそこには上向きに緩やかに曲がりそして先端がまた水平に戻っている尻尾が見えた。(尾翼が生えてるからちょっと飛行機やヘリコプターの尾翼みたいで意外と格好いいかも?)
『ほぉ、意外と格好いいね』
その私の小さな呟きが聞こえていたのか治った尻尾を撫でながら目尻を下げ口角を上げて小憎らしい笑顔で私を見るトムソンさん。(さっきまで項垂れてたのに‥‥そしてその顔‥‥思いっきりグーパンしていいですか?)
「おおー、前より一段と素敵な尻尾になってるぞ!なぁダック、お前もそう思うだろ?」
そう言ってダックの顔を見るトムソンさん。
「お、お前は誰だ!」
そして全身が変化している事に気が付き驚いてワナワナし始めたどこか抜けてる男。
(気付くの遅いんじゃ!)
「ああ、ダックか。そ、その姿は‥‥‥」
そう言って何故か小憎らしい笑顔で私を見てなにかを待っている10代少女1人に聞いたグーパンしたい男第一位。
『はいはい、凄く格好いいですねー』
その私の言葉に満足したのかダックの方を向き撫でながら「素敵な尻尾だね」「その切れ長の顔も最高だよ」と言ってるトムソンさん。そしてその包容タイムは10分ほど続いた。
それから満足したのかダックの元を離れて私の所に歩いてくるトムソンさん。そして真剣な顔をして私に深く頭を下げると両膝を突いて目線を合わせ話し始めた。
「私はドラゴンライダーとしては一流だったが剣術が未熟で戦闘がまるで駄目だった。その私がカール隊長の部下になって10年。今では一角の剣士だ。カール隊長は頭がよくて部下にも優しくそしてとても強い。そのカール隊長は戦闘が苦手な私に根気強く剣術を教えてくれ、戦闘で危ないところを何度も救って頂いた。私はそんなカール隊長を尊敬している。
そのカール隊長が私に大事な任務を与えてくれた。だから私はその任務を達成しようと血を分けた可愛い妹とも言えるダックに無理をさせてしまった。そしてもう駄目かと思っていた時にあなたが現れダックを治してくれた」
そこまで一気に話したトムソンさんは、地面に突いた両膝のうち片膝を上げ右手を胸に掲げ頭を下げた。
「第2部隊ドラゴンライダーであるトムソンは最大の敬意を持ってお礼申し上げます。奏様、本当にありがとうございました。あなたのお陰でダックは治り、そしてこれで窮地に居るカール隊長の元へと戻る事が出来ます」
そう言って立ち上がるその姿は正に勇敢な戦士を思わせるものだった。(ほぅ、アホなだけかと思ったらイカす男じゃないか。好感度アップだね!そしてそのダックは女の子だったんだ。なのにダック?好感度ダウンだね!)
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