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ε-エストジール帝国編(後編)
238-リアシュ皇帝との対面
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謁見は、ブルーアーク内にあるという玉座の間で行われることになった。
無論、帝都サルバンにも玉座の間はあるが、ここにあるのは移動式、つまりは儀礼用であり、敵将と話すための場なのだろうな。
「じゃ、先に失礼」
いつの間にか仕立てのいい服へと着替えていたナスカは、俺の横を通って玉座の間へ続く扉へ入っていく。
後には俺と、ジャミアンが残される。
「どうか肩の力を抜いてください、皇帝は貴方に関心を持っているようですが、それは決して肉食獣の見定めではございませんので」
「ええ」
そう言われると逆に緊張する。
相手は一国の長だぞ、本来であれば一生かかっても知り合いどころか、話すことすら叶わないような相手と、俺は今から会って話さなければならない。
並の胆力では失神するレベルの緊張だ。
「謁見というと、複数人同時に行われる印象があるのですが...一人なんですね」
俺は緊張に耐えかねて、ジャミアンに話を振る。
彼は頷き、
「英雄の救世主であられるあなたを差し置いて、他人と会われることなどありませんよ」
と答える。
どうやら、かなりの賓客待遇らしい。
その後もジャミアンと雑談をしたが、そもそも謁見とはこのような場でするものではなく、必ず帝都にて行うものだそうだ。
皇帝が宇宙に出ることは滅多になく、そして謁見の許可を得るには最低でも王宮内に家を持つ子爵クラスの推薦が必要だという。
「おっと、お時間です。では...向かいましょう」
「...ええ」
そして、俺とジャミアンは謁見へと向かう。
控室を抜け、大きな扉の前へ。
扉がゆっくりと音を立てて開き、宇宙船内部の寒々しい様子とは打って変わって、暖かい空気が扉の向こうから漏れ出る。
その先は、とても広大な場所だった。
「.........」
「驚かれましたか?」
「ええ」
艦がデカいと、こういうスペースの使い方も出来るのか。
大広間、いや聖堂か...?
壁面の左右には何かの紋章が描かれた旗が、等間隔で並んでいる。
そして、その最奥には...
「驚かせてしまったかな?」
よく通る声で、話しかけられた。
目を凝らすと、玉座に座る男と、もう一人...よく知る男が、そこに立って居た。
もう一人はナスカ、そしてもう一人は。
「御前です、失礼ですが頭を...」
「構わない、こちらへ来て欲しい」
俺はジャミアンに従い頭を下げようとしたが、それを知らない声が制止した。
この場においてナスカを差し置き、近衛騎士団長に命じることのできる立場。
つまり...
「っ、帝国の永遠なる太陽...に、お会い出来て光栄でございます」
凄まじい重圧だ。
挨拶って、礼儀ってなんだ?
どうすりゃいい?
「うむ」
俺はそのまま前へと歩く。
とりあえず前へ向かわなければどうにもならないだろう。
「そこで止まってください」
「...はい」
今この場を切り抜けるには、皇帝とジャミアンの言葉がヒントだ。
幸い、俺は帝国の人間ではない。
多少儀礼のルールを守れなくても、それを咎められることはない。
だが...ヤバい。
「表を上げよ、私はそうして欲しいと望む」
「......」
俺は顔を上げる。
近づいたことで、彼の顔が分かりやすくなる。
ナスカに似ている。
「んだよ、畏まって。俺にはそうしなかった癖に」
ナスカが何か言っているが、身分を明かさなかったせいだろ。
「畏まる必要はない、君は私にとって大恩人なのだから」
「は、い...」
彼こそが、リアシュ・サマドール・サエル・カナバスタ・エストジール。
帝国の、ひいては貴族たちの、正統なる帝王なのだと。
俺は改めて感じたのだった。
無論、帝都サルバンにも玉座の間はあるが、ここにあるのは移動式、つまりは儀礼用であり、敵将と話すための場なのだろうな。
「じゃ、先に失礼」
いつの間にか仕立てのいい服へと着替えていたナスカは、俺の横を通って玉座の間へ続く扉へ入っていく。
後には俺と、ジャミアンが残される。
「どうか肩の力を抜いてください、皇帝は貴方に関心を持っているようですが、それは決して肉食獣の見定めではございませんので」
「ええ」
そう言われると逆に緊張する。
相手は一国の長だぞ、本来であれば一生かかっても知り合いどころか、話すことすら叶わないような相手と、俺は今から会って話さなければならない。
並の胆力では失神するレベルの緊張だ。
「謁見というと、複数人同時に行われる印象があるのですが...一人なんですね」
俺は緊張に耐えかねて、ジャミアンに話を振る。
彼は頷き、
「英雄の救世主であられるあなたを差し置いて、他人と会われることなどありませんよ」
と答える。
どうやら、かなりの賓客待遇らしい。
その後もジャミアンと雑談をしたが、そもそも謁見とはこのような場でするものではなく、必ず帝都にて行うものだそうだ。
皇帝が宇宙に出ることは滅多になく、そして謁見の許可を得るには最低でも王宮内に家を持つ子爵クラスの推薦が必要だという。
「おっと、お時間です。では...向かいましょう」
「...ええ」
そして、俺とジャミアンは謁見へと向かう。
控室を抜け、大きな扉の前へ。
扉がゆっくりと音を立てて開き、宇宙船内部の寒々しい様子とは打って変わって、暖かい空気が扉の向こうから漏れ出る。
その先は、とても広大な場所だった。
「.........」
「驚かれましたか?」
「ええ」
艦がデカいと、こういうスペースの使い方も出来るのか。
大広間、いや聖堂か...?
壁面の左右には何かの紋章が描かれた旗が、等間隔で並んでいる。
そして、その最奥には...
「驚かせてしまったかな?」
よく通る声で、話しかけられた。
目を凝らすと、玉座に座る男と、もう一人...よく知る男が、そこに立って居た。
もう一人はナスカ、そしてもう一人は。
「御前です、失礼ですが頭を...」
「構わない、こちらへ来て欲しい」
俺はジャミアンに従い頭を下げようとしたが、それを知らない声が制止した。
この場においてナスカを差し置き、近衛騎士団長に命じることのできる立場。
つまり...
「っ、帝国の永遠なる太陽...に、お会い出来て光栄でございます」
凄まじい重圧だ。
挨拶って、礼儀ってなんだ?
どうすりゃいい?
「うむ」
俺はそのまま前へと歩く。
とりあえず前へ向かわなければどうにもならないだろう。
「そこで止まってください」
「...はい」
今この場を切り抜けるには、皇帝とジャミアンの言葉がヒントだ。
幸い、俺は帝国の人間ではない。
多少儀礼のルールを守れなくても、それを咎められることはない。
だが...ヤバい。
「表を上げよ、私はそうして欲しいと望む」
「......」
俺は顔を上げる。
近づいたことで、彼の顔が分かりやすくなる。
ナスカに似ている。
「んだよ、畏まって。俺にはそうしなかった癖に」
ナスカが何か言っているが、身分を明かさなかったせいだろ。
「畏まる必要はない、君は私にとって大恩人なのだから」
「は、い...」
彼こそが、リアシュ・サマドール・サエル・カナバスタ・エストジール。
帝国の、ひいては貴族たちの、正統なる帝王なのだと。
俺は改めて感じたのだった。
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