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シーズン1-クロトザク戦線
022-ドリドリーク
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ガスガイア系外縁部に、その星はあった。
かつては緑豊かで、今はその大地の殆どが金属と赤土に覆われた星。
その名を、「ドルドリーク」と言った。
その星の周囲には、夥しい数の建造物が係留されており、それはドルドリークの衛星である「カシオ」の周囲も同様であった。
ドルドリークを覆う分厚い雲を突き抜け、地表を見れば。
冷たい街がそこにはあった。
だが、街は半透明のドームで覆われ、地上に降り注ぐ止むことのない小雨から、星の人間たちを守っている。
ドームの下では、白く美しい街並みが広がっている。
秩序立って建造された無数のビルディングは、柱のように反り立ち、その壁面に無数のホログラム広告を投影している。
『お昼の時間になりました。皇女様の御命令により、全ての労働者には15分の休憩が平等に与えられます』
その時、ファンファーレが鳴り響き、都市に人が溢れ出していく。
この星を統治する統治機構、「クロトザク皇室」による命令で、すべての労働者には15分休憩が与えられており、それを怠ったり、逸脱した休息を取る事は全て銃殺刑に値する愚行なのである。
『お昼のニュースですが、ここで皇室からの発表があります。発表時間中は特例として休憩時間となります、皇女様のお慈悲に感謝を』
その時、スピーカーからそんなアナウンスが流れる。
都市にいる労働者たちは、渋々、もしくは熱狂的に、狂信的に叫ぶ。
「ルー・クロトザルク!」
都市中にその声が伝播していく。
左手を額にかざし、右手で腰に手を当てる敬礼のポーズを、オフィスで働く人間も、街中で立つ人間も、トラムのような電車内にいる人間もそれぞれ平等に取っていた。
腕がないなどの理由なくそのポーズをしなければ、収容所送りだと皆わかっているからだ。
『...私は、皇女マリアンヌ・デルトレ・クロトザクである! 皆、敬礼をやめ休憩へ戻れ! これより、皇室からの重大な発表を行う!』
まるで魔法が解けたように、都市の人間たちは敬礼をやめそれぞれの休憩へと戻る。
その間にも、都市のすべてのスクリーンには皇女マリアンヌの顔が映り続けている。
『皇室は昨夜未明、宇宙空間にて謎の勢力との交戦状態に入った! あろうことか、我々の採掘艦隊を襲い、資源を奪おうとしたのである!』
その言葉に、都市の人間たちはざわめく。
不真面目な者は、へぇそうかと斜めに構え、愛国者はなんたる蛮行! と怒りに震え、凡庸な者は未確認だった異星人の存在に怯え、狂信者たちはそんな蛮族など排除して仕舞えばいい! と喚いた。
『案ずるな! 我々は卑劣な簒奪者などには決して屈しない! このクロトザク皇室ある限り、この星に侵略者共が土足で踏み入ることは無い! だが...けじめは必要だ』
そこで言い切り、皇女は悲しげに目を伏せる。
皇女のその仕草に、多くの者がこれから起こることを察した。
『我がクロトザク皇国は、これより非常事態宣言を発令し、同時に未確認勢力への交戦を全面許可する! 敵勢力の統治機構と連絡が取れ次第、宣戦布告を行う!』
戦争の始まりであった。
だが、国は確かに震えた。
労働者たちは新たな稼げる職場...航宙軍を夢想し、資産家たちは上がることも下がることもなかった宇宙軍事産業の活発化に狂喜した。
それがもっとも愚かな選択肢であったことに、全く気が付かずに。
かつては緑豊かで、今はその大地の殆どが金属と赤土に覆われた星。
その名を、「ドルドリーク」と言った。
その星の周囲には、夥しい数の建造物が係留されており、それはドルドリークの衛星である「カシオ」の周囲も同様であった。
ドルドリークを覆う分厚い雲を突き抜け、地表を見れば。
冷たい街がそこにはあった。
だが、街は半透明のドームで覆われ、地上に降り注ぐ止むことのない小雨から、星の人間たちを守っている。
ドームの下では、白く美しい街並みが広がっている。
秩序立って建造された無数のビルディングは、柱のように反り立ち、その壁面に無数のホログラム広告を投影している。
『お昼の時間になりました。皇女様の御命令により、全ての労働者には15分の休憩が平等に与えられます』
その時、ファンファーレが鳴り響き、都市に人が溢れ出していく。
この星を統治する統治機構、「クロトザク皇室」による命令で、すべての労働者には15分休憩が与えられており、それを怠ったり、逸脱した休息を取る事は全て銃殺刑に値する愚行なのである。
『お昼のニュースですが、ここで皇室からの発表があります。発表時間中は特例として休憩時間となります、皇女様のお慈悲に感謝を』
その時、スピーカーからそんなアナウンスが流れる。
都市にいる労働者たちは、渋々、もしくは熱狂的に、狂信的に叫ぶ。
「ルー・クロトザルク!」
都市中にその声が伝播していく。
左手を額にかざし、右手で腰に手を当てる敬礼のポーズを、オフィスで働く人間も、街中で立つ人間も、トラムのような電車内にいる人間もそれぞれ平等に取っていた。
腕がないなどの理由なくそのポーズをしなければ、収容所送りだと皆わかっているからだ。
『...私は、皇女マリアンヌ・デルトレ・クロトザクである! 皆、敬礼をやめ休憩へ戻れ! これより、皇室からの重大な発表を行う!』
まるで魔法が解けたように、都市の人間たちは敬礼をやめそれぞれの休憩へと戻る。
その間にも、都市のすべてのスクリーンには皇女マリアンヌの顔が映り続けている。
『皇室は昨夜未明、宇宙空間にて謎の勢力との交戦状態に入った! あろうことか、我々の採掘艦隊を襲い、資源を奪おうとしたのである!』
その言葉に、都市の人間たちはざわめく。
不真面目な者は、へぇそうかと斜めに構え、愛国者はなんたる蛮行! と怒りに震え、凡庸な者は未確認だった異星人の存在に怯え、狂信者たちはそんな蛮族など排除して仕舞えばいい! と喚いた。
『案ずるな! 我々は卑劣な簒奪者などには決して屈しない! このクロトザク皇室ある限り、この星に侵略者共が土足で踏み入ることは無い! だが...けじめは必要だ』
そこで言い切り、皇女は悲しげに目を伏せる。
皇女のその仕草に、多くの者がこれから起こることを察した。
『我がクロトザク皇国は、これより非常事態宣言を発令し、同時に未確認勢力への交戦を全面許可する! 敵勢力の統治機構と連絡が取れ次第、宣戦布告を行う!』
戦争の始まりであった。
だが、国は確かに震えた。
労働者たちは新たな稼げる職場...航宙軍を夢想し、資産家たちは上がることも下がることもなかった宇宙軍事産業の活発化に狂喜した。
それがもっとも愚かな選択肢であったことに、全く気が付かずに。
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