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シーズン1-クロトザク戦線
028-加速する誤解
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地上へと帰還したネムとルルは、族長たちの質問攻めにあった。
「い、生贄として受け取られたのか!?」
「もしや、あの御方を怒らせる事をしたのかっ!?」
存亡の危機にあると判断した族長たちは、二人を恫喝していた。
だが、ルルは落ち着いた様子で説明した。
自分たちが、「族長が婚姻を認めた場合は天に帰ることを許される」という条件で地上に戻された事、「自分を神とは思わないでほしい」というシンの言葉を。
「どういう事なのでしょうか.....」
「恐らく、星空の王は、我々を救ったことを他の神々に知られたくないのでは?」
「どういう事だ、メリバス」
メリバスと呼ばれた神官が、声を潜めて予想を話す。
神々の蒼穹では、定命の者の声は蚊の羽音程も小さいとはいえ、どこで誰が聞いているかもわからないのだから。
「恐らく、獣神様は神々の条約か何かで、我々をお救いする事が出来なかったのだ」
「ふむふむ」
「だが! それを、星空の王様が代わりにお救いになられたに違いない。だが、それは神々の協定違反であり、星空の王は名無しの神が勝手にやった事にしたいのだろう」
「だが、何故婚姻の許可を我々に?」
「わからんが、我々をこの地の代表者として御認めになるという事であろう」
こうして、勘違いは加速していく。
「我々はお前達の婚姻を認めよう...というよりは、星空の王様が我々に願う事などあり得ない。これは既に決定事項だったのだ」
「ありがとうございます」
「こんいん?」
ルルの横で、ネムが不思議そうな顔をしていた。
そう、婚姻云々は完全にルルの策略であった。
外堀から埋めようというわけだ。
「私たち、あの人と結婚するのよ」
「結婚...? それって、美味しいの?」
「どうかな...ええ、多分美味しいかもしれないわ」
ルルはそう言って、空を見上げた。
『以上が、獣人の里からの定時報告になります』
「何ということだ」
俺は報告を見て呆然としていた。
よりにもよって、出会って間もない娘らと結婚しないといけないとは...
「......まあ、統治に必要なんだろうな」
体裁は必要だ。
統治者と婚姻した巫女が二人いれば、獣人族をまとめ上げるには十分な理由となる。
俺が神だという認識は正せなかったが、時間が解決してくれるだろう。
「それから、獣人族の里の防衛計画は上手く行っているか?」
『はい、適切な戦力が調整されるまでは、引き続き敵対勢力への”天罰”を行っています』
「酷いことしやがるなー、誰だろうなそんな事をしたのは」
俺は神じゃないので、天罰だなんてそんなの畏れ多い。
よってこれは支援にはあたらない。
「.....はぁ、それよりも」
結婚か.....
「愛のない結婚は、あの二人にとっても傷付く原因にしかならないだろうが....」
俺を愛してるってわけでもないだろうし、となると政略結婚に違いない。
ここにまた来たいと言ったら受け入れるって言ったのに婚姻になっているという事は、族長に何か吹き込まれたのだろう。
「......オーロラ、獣人族では未成年の娘を結婚させる文化はあるのか?」
『はい、データベースにはあります』
「性こ.....繁殖行為は、結婚したらやるのか?」
『いいえ、適切な年齢になるのを待ってから行う例が多いようです』
「良かった、俺が身体目当てで結婚するロリコンだと思われたら困る」
それが一番まずい。
我が妹、流歌にも顔向けできなくなるからな。
『そんなことを思っている方はいらっしゃらないと思いますが...』
「ん?」
オーロラが何か言った気がしたが、俺の胸中は結婚で占められていた。
まあ、彼女らが大きくなったらまた彼女らの自主性に任せればいいだろう。
「い、生贄として受け取られたのか!?」
「もしや、あの御方を怒らせる事をしたのかっ!?」
存亡の危機にあると判断した族長たちは、二人を恫喝していた。
だが、ルルは落ち着いた様子で説明した。
自分たちが、「族長が婚姻を認めた場合は天に帰ることを許される」という条件で地上に戻された事、「自分を神とは思わないでほしい」というシンの言葉を。
「どういう事なのでしょうか.....」
「恐らく、星空の王は、我々を救ったことを他の神々に知られたくないのでは?」
「どういう事だ、メリバス」
メリバスと呼ばれた神官が、声を潜めて予想を話す。
神々の蒼穹では、定命の者の声は蚊の羽音程も小さいとはいえ、どこで誰が聞いているかもわからないのだから。
「恐らく、獣神様は神々の条約か何かで、我々をお救いする事が出来なかったのだ」
「ふむふむ」
「だが! それを、星空の王様が代わりにお救いになられたに違いない。だが、それは神々の協定違反であり、星空の王は名無しの神が勝手にやった事にしたいのだろう」
「だが、何故婚姻の許可を我々に?」
「わからんが、我々をこの地の代表者として御認めになるという事であろう」
こうして、勘違いは加速していく。
「我々はお前達の婚姻を認めよう...というよりは、星空の王様が我々に願う事などあり得ない。これは既に決定事項だったのだ」
「ありがとうございます」
「こんいん?」
ルルの横で、ネムが不思議そうな顔をしていた。
そう、婚姻云々は完全にルルの策略であった。
外堀から埋めようというわけだ。
「私たち、あの人と結婚するのよ」
「結婚...? それって、美味しいの?」
「どうかな...ええ、多分美味しいかもしれないわ」
ルルはそう言って、空を見上げた。
『以上が、獣人の里からの定時報告になります』
「何ということだ」
俺は報告を見て呆然としていた。
よりにもよって、出会って間もない娘らと結婚しないといけないとは...
「......まあ、統治に必要なんだろうな」
体裁は必要だ。
統治者と婚姻した巫女が二人いれば、獣人族をまとめ上げるには十分な理由となる。
俺が神だという認識は正せなかったが、時間が解決してくれるだろう。
「それから、獣人族の里の防衛計画は上手く行っているか?」
『はい、適切な戦力が調整されるまでは、引き続き敵対勢力への”天罰”を行っています』
「酷いことしやがるなー、誰だろうなそんな事をしたのは」
俺は神じゃないので、天罰だなんてそんなの畏れ多い。
よってこれは支援にはあたらない。
「.....はぁ、それよりも」
結婚か.....
「愛のない結婚は、あの二人にとっても傷付く原因にしかならないだろうが....」
俺を愛してるってわけでもないだろうし、となると政略結婚に違いない。
ここにまた来たいと言ったら受け入れるって言ったのに婚姻になっているという事は、族長に何か吹き込まれたのだろう。
「......オーロラ、獣人族では未成年の娘を結婚させる文化はあるのか?」
『はい、データベースにはあります』
「性こ.....繁殖行為は、結婚したらやるのか?」
『いいえ、適切な年齢になるのを待ってから行う例が多いようです』
「良かった、俺が身体目当てで結婚するロリコンだと思われたら困る」
それが一番まずい。
我が妹、流歌にも顔向けできなくなるからな。
『そんなことを思っている方はいらっしゃらないと思いますが...』
「ん?」
オーロラが何か言った気がしたが、俺の胸中は結婚で占められていた。
まあ、彼女らが大きくなったらまた彼女らの自主性に任せればいいだろう。
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