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シーズン1-クロトザク戦線

030-襲撃

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「あーあ、暇だな」
「そう言うなよ」

中央管制室で、一人の男が呟く。
艦船の発着を管理する部署だが、同時に索敵班も兼ねている。
レーダーを監視し、敵の出現を捕捉するのだ...しかしながら、敵の出現など内戦以降は無くなったので、船の発着を管理するだけの部署となっていた。
しかし、今日は違った。

「なっ、えっ、な、何だ!? おい!」
「ガキ共、こいつぁ緊急警報だ!」

その場にいる一人を除いて誰も聞いたことのないアラートが鳴り響き、悲劇的な事態を表すようにモニターの複数が赤色に点滅する。
直ぐに管制室につけられたパトランプが光り始め、老人が叫んだ言葉が事実であるとその場の人間全員が認識した。

「緊急事態って!?」
「おい、ヤバいぞ! この惑星周辺に200以上の何かがいる!」
「ワープ反応はなかっただろ!」
「と、突然現れたんだ!」
「皇都全域に緊急事態宣言を!」

そこからの動きは速かったが、もはや事態は手遅れであった。

『全艦隊、正常にジャンプ終了。プロトスカウターが事前に調査したショートワープ用の座標に飛びながら、敵艦隊の追撃をかわしてステーション前へ移動します』
「ストラクチャはまだ撃たなくていい、今回の目的は民間人の殺害だ」

今回の目的はコルベット/フリゲートの足の速い艦隊で的確な対象を撃滅し、敵の喉元にナイフを突きつけるのが目的だ。
「いつでもこうやって民間人を殺せるんだぞ~」と言っているようなものだ。
これで交渉する気にならないようなら、国家としては狂っている。

「不平等条約を結ぶか、面子のために滅ぶまで戦い続けるか...楽しみだな」

こっちの素性は相手にわかっていないので、俺が何をしたいかはわからないだろう。

『通信をジャミングしました、皇都全域に緊急事態宣言が発令されているようです』
「動きが早いな、そうでないと困る」

俺は艦隊の位置から最も近い民間の遊覧船に目をつける。

「あの船を襲うぞ、近距離にワープイン、長射程のカノープス、敵ブリッジ向けて砲撃開始」
『基地からスクランブル発進を確認、こちらへ向かってきます』
「全艦、支援可能な距離を維持しつつ散開」
『了解』

カノープスは超長射程のフリゲートで、レーザー武装を積むと普通の射程の約5.2倍の距離まで攻撃が届く。
皇国軍の戦い方は、ビームを面制圧で放つのが主流だが(精度がまだ悪く、狙った場所には当たらないらしい)、こちらは射程範囲であれば狙った場所に当てられる。
集中砲火を浴びせれば、たちまち遊覧船のブリッジは蜂の巣となる。

「アコライト艦隊、独自で遊覧船付近にワープし、生体反応の集中している場所を射撃、即座に離脱せよ」
『了解』

逆にアコライトは、射程こそカノープスには劣るが、高火力の強襲型フリゲートだ。
孤立した艦に張り付き、集中砲火を浴びせることで撃沈する、そういう船だ。

『敵艦隊の接近を確認。360秒後に接敵します』
「よし、全艦転進開始、座標3にワープせよ」
『全艦ワープ開始』

コルベット/フリゲートは、大型艦相手には不利だが、何より身軽な船が多いのが魅力だ。
敵が近づけば、即座にワープして逃げる。
目標物の周囲に座標を合わせながら、ショートワープを繰り返して交戦をかわすのだ。

『ワープ完了。アコライト、ブラインドファイス、アロー射程範囲外』
「カノープスは遊覧船の機関部を集中射撃!」

機関部を狙われた遊覧船は、三回目の射撃の後に後方部の装甲板が吹き飛び沈黙した。
距離が離れたとはいえ迫ってくる艦隊を見て、俺は笑いを隠せなかった。

「“離れた”な?」
『全艦隊、座標“ステ付近4”にワープします』

あいつらはショートワープができない。
それは、破壊された船を解析した結果分かった。
どうも次元導管と呼ばれる特殊なフィラメントを急速燃焼させることで、光速を突破することが出来るようだ。
よってワープの回数は有限で、連続ワープは不可能だ。
つまりは...

『全艦隊ワープ完了、ターゲット開始、アンブロシア、シールドウェーブ発信』

一番大きいステーションの眼前にワープした艦隊は、ステーションを好きに狙えるというわけだ。

「アコライトは生命反応の集中する区画を、カノープスは中央部の熱源を、ブラインドファイスは装甲の薄い区画を計画的に破断させ、アローはステーション付近に展開している敵艦をボレーで叩け」
『全艦隊、行動開始』

こうなった以上、敵にできることは少ない。
ホールドスターの強力なシールドを、200隻程度いればたった15分で削れるアコライトの射撃から逃れる術はない。
くわえて、射程の長いレーザーはそのまま貫通力となり、ステーションの熱源を確実に破壊する。
恐らく核融合機関なので、放射能漏れでも起こせればいいんだが。

『敵艦隊、被害拡大。アローも射撃を受けていますが、アンブロシアによるシールド支援を継続中』

いい感じだな。
アンブロシアはロジスティクス艦なので、シールドやアーマーリペアに特化している。
俺はじっと敵がどう出るかを考えていた。

『司令官、敵からの通信申請が来ています』

オーロラが俺の呼称を変えて呼んだ。
俺もそれに応え、制帽を目深に被った。
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