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シーズン4-ビージアイナ侵攻編
082-不幸な行き違い
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MT-WXE星系の通信途絶は、すぐに帝城へと伝わった。
「バカな、早過ぎる...!」
そう発言したのは、ヴィッピス軍事総括であった。
MT-WXE星系に配備した艦隊の規模は、帝都周辺の警備艦隊の十倍である。
いかにゲートから出てきた敵が強かろうとも、数日は耐え切る事のできる耐久性と、練度を持っていた。
まさか単純な技術力の差で押し切られたとは思わないヴィップスは、敵の存在に怖気付く。
「ヴィッピス、貴様まさか...戦術を読み違えたか?」
「まさか...そもそも、何の知らせもない事の方が不気味だ」
勝ったなら勝ったで。
負けたなら負けたで。
何かしらの報告が来ていなければおかしい。
だが、防衛艦隊は、まるで霧に包まれたかのように消え去ってしまった。
「それだけではないぞ、MT-WXE星系へと接続されたゲートは、全て停止してしまった」
「何より、一番まずいのは...」
「ああ、分かっておる」
その場にいた全員が、危惧していた。
女帝ディーヴァは現在避暑の旅行に出ており、その目的地はウンドラ星系。
占拠されたMT-WXE星系から、帝都に侵攻ルートが伸びた場合、直結する星系でもあった。
「呼び戻さなければなるまい」
「いや、それよりもシエラ星系に避難していただこう」
シエラ星系とは、メインの最短侵攻ルートから外れた星系であり、辿り着くまでに通過するクロワ星系も含めてスターゲートが一本道の、侵攻メリットの薄い星系であった。
「休暇はとても大切な行事。このような些事で呼び戻しては帝室の威信に関わろう」
宰相シグペンはそう言ったのだった。
「次の戦略目標はここ...XTG-CWだ」
『帝国内ではシエラ星系と呼ばれていますね』
俺は次の戦略目標を示す。
戦闘指揮所には既に戦闘機隊長のルル、指揮官見習いのネム、ゲート封鎖役のナージャ、無職のアインスが待機していた。
「あ、あのっ!」
「どうした、ネム?」
ネムが何か言いたそうにしていたので、俺は発言を許可する。
ネムもアインスと同じ...といっても苦痛は伴わない形で、知識を少しだけ身につけているので、この場に立つ資格はある。
「通り道から外れた場所に見えるけど...大丈夫なの? ...痛い、お姉ちゃん!」
「シン様には敬語を使いなさい」
ネムはそう質問したが、ルルに腕をつねられて叫ぶ。
泣きそうになっていたが、すぐに落ち着きを取り戻し、
「大丈夫...ですか?」
と言ってきた。
「ああ、全く問題がない」
俺は頷く。
その質問は確かに、正しい。
袋小路は不利...それは、スターゲートを使って移動する上では常識だろう。
だが。
「しかし...ジャンプドライブもしくは、ジャンプゲートの経由地点としてならどうだ?」
「...!」
ネムが納得したような顔で頭をぶんぶん振って頷く。
こちらには、スターゲートを使わずとも星系を、それどころか星座を跨いで移動できる技術がある。
そして、その防衛はスターゲートを封鎖するだけで容易に事足りる。
出口が一つしかない星系をポケットと呼ぶが、俺たちはこのポケットを複数占領下に置き、プリメイドジャンプゲートの設置場所とする予定だ。
こうする事で、敵地により多くの船を送り込める。
「実はジャンプゲートには二種類ある。双方向型のプリメイドジャンプゲートと、一方向型のアクセラレーションゲートだな」
『...双方向、破壊されるリスク。一方向だと破壊、可能性低?』
「そういうことだ」
双方向のジャンプゲートは破壊される可能性がある。
一方向で送り込み、帰りはジャンプドライブで。
首都星系には全部で四つのジャンプゲートがあるため、何度かの襲撃でこれを一つずつ封鎖していく。
そして、その事前準備として...
「敵から奪った星系図のうち、全部で五十二箇所を、次の七日間で攻略する」
俺はそう宣言したのだった。
「バカな、早過ぎる...!」
そう発言したのは、ヴィッピス軍事総括であった。
MT-WXE星系に配備した艦隊の規模は、帝都周辺の警備艦隊の十倍である。
いかにゲートから出てきた敵が強かろうとも、数日は耐え切る事のできる耐久性と、練度を持っていた。
まさか単純な技術力の差で押し切られたとは思わないヴィップスは、敵の存在に怖気付く。
「ヴィッピス、貴様まさか...戦術を読み違えたか?」
「まさか...そもそも、何の知らせもない事の方が不気味だ」
勝ったなら勝ったで。
負けたなら負けたで。
何かしらの報告が来ていなければおかしい。
だが、防衛艦隊は、まるで霧に包まれたかのように消え去ってしまった。
「それだけではないぞ、MT-WXE星系へと接続されたゲートは、全て停止してしまった」
「何より、一番まずいのは...」
「ああ、分かっておる」
その場にいた全員が、危惧していた。
女帝ディーヴァは現在避暑の旅行に出ており、その目的地はウンドラ星系。
占拠されたMT-WXE星系から、帝都に侵攻ルートが伸びた場合、直結する星系でもあった。
「呼び戻さなければなるまい」
「いや、それよりもシエラ星系に避難していただこう」
シエラ星系とは、メインの最短侵攻ルートから外れた星系であり、辿り着くまでに通過するクロワ星系も含めてスターゲートが一本道の、侵攻メリットの薄い星系であった。
「休暇はとても大切な行事。このような些事で呼び戻しては帝室の威信に関わろう」
宰相シグペンはそう言ったのだった。
「次の戦略目標はここ...XTG-CWだ」
『帝国内ではシエラ星系と呼ばれていますね』
俺は次の戦略目標を示す。
戦闘指揮所には既に戦闘機隊長のルル、指揮官見習いのネム、ゲート封鎖役のナージャ、無職のアインスが待機していた。
「あ、あのっ!」
「どうした、ネム?」
ネムが何か言いたそうにしていたので、俺は発言を許可する。
ネムもアインスと同じ...といっても苦痛は伴わない形で、知識を少しだけ身につけているので、この場に立つ資格はある。
「通り道から外れた場所に見えるけど...大丈夫なの? ...痛い、お姉ちゃん!」
「シン様には敬語を使いなさい」
ネムはそう質問したが、ルルに腕をつねられて叫ぶ。
泣きそうになっていたが、すぐに落ち着きを取り戻し、
「大丈夫...ですか?」
と言ってきた。
「ああ、全く問題がない」
俺は頷く。
その質問は確かに、正しい。
袋小路は不利...それは、スターゲートを使って移動する上では常識だろう。
だが。
「しかし...ジャンプドライブもしくは、ジャンプゲートの経由地点としてならどうだ?」
「...!」
ネムが納得したような顔で頭をぶんぶん振って頷く。
こちらには、スターゲートを使わずとも星系を、それどころか星座を跨いで移動できる技術がある。
そして、その防衛はスターゲートを封鎖するだけで容易に事足りる。
出口が一つしかない星系をポケットと呼ぶが、俺たちはこのポケットを複数占領下に置き、プリメイドジャンプゲートの設置場所とする予定だ。
こうする事で、敵地により多くの船を送り込める。
「実はジャンプゲートには二種類ある。双方向型のプリメイドジャンプゲートと、一方向型のアクセラレーションゲートだな」
『...双方向、破壊されるリスク。一方向だと破壊、可能性低?』
「そういうことだ」
双方向のジャンプゲートは破壊される可能性がある。
一方向で送り込み、帰りはジャンプドライブで。
首都星系には全部で四つのジャンプゲートがあるため、何度かの襲撃でこれを一つずつ封鎖していく。
そして、その事前準備として...
「敵から奪った星系図のうち、全部で五十二箇所を、次の七日間で攻略する」
俺はそう宣言したのだった。
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