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シーズン5-ビージアイナ決戦編
111-流通寸断
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Noa-Tun連邦は悪辣な手でも容赦無く使い、敵に嫌がらせを続ける国家である。
何故ならば、嫌がらせを続ければ相手が焦りを感じるからである。
大国としての矜持が、この挑発行為で徐々に揺らぎ始めているのだ。
『あー、こちら二番艦、周囲に異常なし』
『こちらも異常なし。通常通りゲートに到達できそうだな』
宇宙を、輸送艦の艦隊が飛んでいた。
その数は総勢六隻。
護衛艦一隻を随行させた輸送艦隊であり、ビージアイナの流通を支える優秀な働き手達である。
『細心の注意を払え。ここは近くで連邦の奴らの侵略が行われてるからな...』
『確か、侵略されたら通信が切れて終わりなんだろ? おっかねぇよなぁ...』
もうすぐ彼らの魔の手に掛かるとも知らずに、艦隊はゲート前に到着した。
全ての艦にデフォルトで組み込まれているゲート起動システムが作動し、船が一隻ずつジャンプしていく。
ジャンプした先には...何もいなかった。
『ふぅ、この時が一番ヒヤッとするんだが』
『心配しすぎだろう、第一並の海賊なら、我らが護衛艦様が一撃でやってくれるぜ』
『だが油断はするな、もし相手が悪かったら、俺はお前達を逃して死ぬからな』
護衛艦の艦長はそう口にした。
特に、カルメナス所属の艦船は注意が必要であり、近年において、強力な武装や未知の妨害手段を用いてくる可能性があった。
そして、カルメナスの内部粛清組織として名だけが伝わっているシャドウ・カルメナス...それに遭遇して仕舞えば、その命はそこで終わるだろうとまで言われている。
『とにかく、一隻でも辿り着くことが重要だ。一隻いれば、軍隊への支援もできるし、帰り道に避難者を乗せられる。護衛艦も、辿り着けさえすれば調達し放題だ...だから、その時は頼んだぞ』
『ああ、わかってる!』
『できれば全員生きて帰りたいけどね』
そんな事を言い合いながら、輸送艦隊はワープへと入る。
広くスペースを取るため、そのワープ速度は遅い。
だが今回は、ゲートとゲート間の距離が短かったために、40分程度で到着する事ができた。
『おい、なんかスキャンされてるぜ?』
『放っとけ、直ぐにジャンプする!』
艦隊は急いでジャンプする。
すぐにワープに入れば、海賊艦を振り切れるからだ。
しかし...今回は違った。
『一体何だぁ!?』
『分からん、ワープが出来ない!』
ゲートの先で、重力が異常に歪んだ空間が展開されており、輸送艦隊はそこで足止めされてしまった。
直後、
『艦影多数、待ち伏せだっ!』
『くそっ、護衛艦長...頼む!』
『ああ、分かってる!』
護衛艦が颯爽と前へ躍り出て、その主砲を敵へと向ける。
直後、砲火が一隻のフリゲートを捉え...
『避けられた!?』
『まずい、五番艦が撃たれて...くっ!』
『注意しろ、敵は魚雷を使ってくるぞ!』
弾速が速く、着弾と同時にシールドを中和して装甲に食い込んで爆発するタイプの魚雷であった。
輸送に特化し、防御力を削っていた輸送艦では耐えられなかったのだ。
『くそっ、ならば...! ダ、ッ!?』
直後、護衛艦からの通信が途絶した。
フリゲート艦隊の中に混じっていた妨害艦、ブラインドファイスの上位互換であるモノ・クリードが、護衛艦にECM、グラビティアンカー、キャパシタバニッシャーによる妨害を仕掛けたのだ。
そして、フリゲート艦隊を割って現れた大型の一隻が、動けない護衛艦に息をつく暇もないレーザーの連射を浴びせ掛けて、撃沈へと誘った。
凄まじい連射力を持った襲撃型戦艦、デリュージは、引き続き輸送艦隊に襲いかかる。
『残存艦点呼! 第一!』
『第三!』
『第六!』
もう三隻しか残っていなかった。
歯噛みしながら、第一輸送艦に乗る青年は決断する。
『シールドを最大にしろ、このフィールドの外に一隻だけ押し出す!』
『だが、それじゃあ!』
『生きて、生きて物資を届けろ! その金で俺たちの分まで...幸せに!』
第一と第六輸送艦がシールドを展開しながら第三輸送艦に突進し、衝突の衝撃で足の遅い輸送艦をフィールドの外まで追い出した。
『...ちっ、馬鹿野郎が!』
第三輸送艦に乗る男は、涙を抑えて一旦惑星へとワープした。
「はぁ...はぁ...はぁ...」
男は息を荒げてワープ先を見守る。
そして、幸いなことに、その先には何もいなかった。
「やった...逃げ切った...!」
『残念! 狩りは終わり、あなたの負けだよ!』
「何だ!?」
直後。
輸送艦の目の前の空間が歪み、一隻の船が姿を現した。
その姿は小さく、白い。
だが、男にとっては不運な事に、その船の両翼には、いかつい大型の砲台が付いていた。
ハッチが開き、左右でそれぞれ六門のレーザーが放たれて、第三輸送艦のいつの間にか消えたシールドを通過、装甲を貫いて破壊する。
「ずるい...だろ、それは...ハハっ」
第三輸送艦は機関部が停止した状態で、ワープしてきた爆撃艦に囲まれる。
気が付けば、白い機体はどこにも居なくなっていた。
魚雷の集中砲火を浴びて、男もろとも第三輸送艦は宇宙の塵と化したのであった。
何故ならば、嫌がらせを続ければ相手が焦りを感じるからである。
大国としての矜持が、この挑発行為で徐々に揺らぎ始めているのだ。
『あー、こちら二番艦、周囲に異常なし』
『こちらも異常なし。通常通りゲートに到達できそうだな』
宇宙を、輸送艦の艦隊が飛んでいた。
その数は総勢六隻。
護衛艦一隻を随行させた輸送艦隊であり、ビージアイナの流通を支える優秀な働き手達である。
『細心の注意を払え。ここは近くで連邦の奴らの侵略が行われてるからな...』
『確か、侵略されたら通信が切れて終わりなんだろ? おっかねぇよなぁ...』
もうすぐ彼らの魔の手に掛かるとも知らずに、艦隊はゲート前に到着した。
全ての艦にデフォルトで組み込まれているゲート起動システムが作動し、船が一隻ずつジャンプしていく。
ジャンプした先には...何もいなかった。
『ふぅ、この時が一番ヒヤッとするんだが』
『心配しすぎだろう、第一並の海賊なら、我らが護衛艦様が一撃でやってくれるぜ』
『だが油断はするな、もし相手が悪かったら、俺はお前達を逃して死ぬからな』
護衛艦の艦長はそう口にした。
特に、カルメナス所属の艦船は注意が必要であり、近年において、強力な武装や未知の妨害手段を用いてくる可能性があった。
そして、カルメナスの内部粛清組織として名だけが伝わっているシャドウ・カルメナス...それに遭遇して仕舞えば、その命はそこで終わるだろうとまで言われている。
『とにかく、一隻でも辿り着くことが重要だ。一隻いれば、軍隊への支援もできるし、帰り道に避難者を乗せられる。護衛艦も、辿り着けさえすれば調達し放題だ...だから、その時は頼んだぞ』
『ああ、わかってる!』
『できれば全員生きて帰りたいけどね』
そんな事を言い合いながら、輸送艦隊はワープへと入る。
広くスペースを取るため、そのワープ速度は遅い。
だが今回は、ゲートとゲート間の距離が短かったために、40分程度で到着する事ができた。
『おい、なんかスキャンされてるぜ?』
『放っとけ、直ぐにジャンプする!』
艦隊は急いでジャンプする。
すぐにワープに入れば、海賊艦を振り切れるからだ。
しかし...今回は違った。
『一体何だぁ!?』
『分からん、ワープが出来ない!』
ゲートの先で、重力が異常に歪んだ空間が展開されており、輸送艦隊はそこで足止めされてしまった。
直後、
『艦影多数、待ち伏せだっ!』
『くそっ、護衛艦長...頼む!』
『ああ、分かってる!』
護衛艦が颯爽と前へ躍り出て、その主砲を敵へと向ける。
直後、砲火が一隻のフリゲートを捉え...
『避けられた!?』
『まずい、五番艦が撃たれて...くっ!』
『注意しろ、敵は魚雷を使ってくるぞ!』
弾速が速く、着弾と同時にシールドを中和して装甲に食い込んで爆発するタイプの魚雷であった。
輸送に特化し、防御力を削っていた輸送艦では耐えられなかったのだ。
『くそっ、ならば...! ダ、ッ!?』
直後、護衛艦からの通信が途絶した。
フリゲート艦隊の中に混じっていた妨害艦、ブラインドファイスの上位互換であるモノ・クリードが、護衛艦にECM、グラビティアンカー、キャパシタバニッシャーによる妨害を仕掛けたのだ。
そして、フリゲート艦隊を割って現れた大型の一隻が、動けない護衛艦に息をつく暇もないレーザーの連射を浴びせ掛けて、撃沈へと誘った。
凄まじい連射力を持った襲撃型戦艦、デリュージは、引き続き輸送艦隊に襲いかかる。
『残存艦点呼! 第一!』
『第三!』
『第六!』
もう三隻しか残っていなかった。
歯噛みしながら、第一輸送艦に乗る青年は決断する。
『シールドを最大にしろ、このフィールドの外に一隻だけ押し出す!』
『だが、それじゃあ!』
『生きて、生きて物資を届けろ! その金で俺たちの分まで...幸せに!』
第一と第六輸送艦がシールドを展開しながら第三輸送艦に突進し、衝突の衝撃で足の遅い輸送艦をフィールドの外まで追い出した。
『...ちっ、馬鹿野郎が!』
第三輸送艦に乗る男は、涙を抑えて一旦惑星へとワープした。
「はぁ...はぁ...はぁ...」
男は息を荒げてワープ先を見守る。
そして、幸いなことに、その先には何もいなかった。
「やった...逃げ切った...!」
『残念! 狩りは終わり、あなたの負けだよ!』
「何だ!?」
直後。
輸送艦の目の前の空間が歪み、一隻の船が姿を現した。
その姿は小さく、白い。
だが、男にとっては不運な事に、その船の両翼には、いかつい大型の砲台が付いていた。
ハッチが開き、左右でそれぞれ六門のレーザーが放たれて、第三輸送艦のいつの間にか消えたシールドを通過、装甲を貫いて破壊する。
「ずるい...だろ、それは...ハハっ」
第三輸送艦は機関部が停止した状態で、ワープしてきた爆撃艦に囲まれる。
気が付けば、白い機体はどこにも居なくなっていた。
魚雷の集中砲火を浴びて、男もろとも第三輸送艦は宇宙の塵と化したのであった。
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