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シーズン3-ジスト星系編
062-”裁定者”
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「さあ、椅子に座れ。堅苦しい挨拶は抜きにして、お前に...お前たち傭兵に頼みたいことがある」
席を勧められたので、私たちは席に座る。
本当にすぐに、話が始まる。
「儂はすでに自己紹介を済ませていますので、悪しからずお考えください」
そう宣言したゼーレンさんは、椅子に座って腕を組んだ。
私たちも、それに反論する理由はないので遮らない。
「言っておくが、お前に頼んでいるのも、お前のその無礼な言葉遣いを許してやっているのも、全てあのくそ野郎の頼みだからだ」
シラードの目が、ゼーレンに向く。
だがゼーレンは、大岩のようにどっしりと構えて動じない。
どういう関係なんだろう?
「......最近、ジスト星系を中心としたこのジスティアン領全体で、船の被害報告が大量に出ている」
「それで儂らも調査に出たが、結果として襲われ、艦隊は全滅したのじゃよ」
「このくそ爺の艦隊は敗れたが、持ち帰ることのできた情報は価値がある。奴らは無目的に襲撃をかけるわけではない」
それはそうだ。
襲撃を繰り返しているならば、もっと広く周知されてもおかしくないだろうし、アドアステラだって接敵していただろう。
「奴らは何かを探している。金品や、高価なパーツなんてくだらないものでは無い。この宇宙を、大きく揺るがす何かをな」
「何か...」
一瞬、私が運んだ物品が頭を過ぎる。
だがあれがこの星系に運び込まれる前から、襲撃は多発していたのだ。
あり得ない。
「スリーパー達は、基本的には昆虫と同じ生態だ。襲われれば防衛のために飛び出すし、繁殖しろと言われれば、生体的な自らの複製を生み出す。だからこそ、今回の行動はおかしい...と、俺たち上層部は考えている、分かったか?」
「...ああ」
「その小さい頭で考えるに、奴らは何を探していると思う?」
「...」
小さい頭で悪かったね。
私はそれを真剣に考える。
「....主人、思ったのですが」
「何だ? ファイス」
「あの謎のドローン? は恐らくですが、裁定者ではないかと思うのです」
「裁定者....か」
ファイスが意外に難しい言葉を使ったので、私は記憶を掘り返す。
そう言えばお兄ちゃんが話していたような気がする。
『世界をあるべき姿に変える力と知識を持った人間が、裁定者と呼ばれることはあるんだよな....まあ実際は、神の意思とか、超越的な存在に縋るだけなんだが』
と。
つまり、あのドローンはバランサーであるという事だろうか?
「ふむ、面白い考察だな、どう思う? ゼーレン」
「ええ、」
もし本当にあのドローンが裁定者の役割を持つなら、何かに対して罰を与えようとしているということだ。
つまり、あのドローン達が定める規律に反する行為をした者が、この近辺にいる。
「.........カルと言ったな? エミド事変について知っていることはあるか?」
「えみど?」
聞いたことのない名前だ。
だが、周知の事実であるようで、ゼーレンは少し顔が引き攣っていた。
「二十年ほど前になるか?」
「ええ、そのくらいでしょうな」
前置きをして、シラードは話してくれた。
エミド事件について。
エミドという、ワームホールの奥底からやってきた謎の種族がいて、合衆国アンデュラスがその技術をサルベージングしてしまった事。
そして、アンデュラスという国そのものが、首都星系を滅ぼされたことによって散逸した大事件。
「技術か、もしくは敵対行動か...何かはわからないが、奴らが動く目的は、奴らを刺激した特定の個人か勢力に、然るべき罰を与えることだろう」
今は、それだけしか分からない。
「そこで、お前に依頼を出す。最近ここらの海賊どもが騒がしい、お前が行って殲滅し、情報を奪ってこい、仲間を連れて行っても構わん。...前金はそうだな...400万MSC、成功すれば1000万出す」
「シラード様!? それはあまりに」
「くそジジイ、俺のポケットマネーだから構わないだろう...どうだ?」
その提案に、私は......
席を勧められたので、私たちは席に座る。
本当にすぐに、話が始まる。
「儂はすでに自己紹介を済ませていますので、悪しからずお考えください」
そう宣言したゼーレンさんは、椅子に座って腕を組んだ。
私たちも、それに反論する理由はないので遮らない。
「言っておくが、お前に頼んでいるのも、お前のその無礼な言葉遣いを許してやっているのも、全てあのくそ野郎の頼みだからだ」
シラードの目が、ゼーレンに向く。
だがゼーレンは、大岩のようにどっしりと構えて動じない。
どういう関係なんだろう?
「......最近、ジスト星系を中心としたこのジスティアン領全体で、船の被害報告が大量に出ている」
「それで儂らも調査に出たが、結果として襲われ、艦隊は全滅したのじゃよ」
「このくそ爺の艦隊は敗れたが、持ち帰ることのできた情報は価値がある。奴らは無目的に襲撃をかけるわけではない」
それはそうだ。
襲撃を繰り返しているならば、もっと広く周知されてもおかしくないだろうし、アドアステラだって接敵していただろう。
「奴らは何かを探している。金品や、高価なパーツなんてくだらないものでは無い。この宇宙を、大きく揺るがす何かをな」
「何か...」
一瞬、私が運んだ物品が頭を過ぎる。
だがあれがこの星系に運び込まれる前から、襲撃は多発していたのだ。
あり得ない。
「スリーパー達は、基本的には昆虫と同じ生態だ。襲われれば防衛のために飛び出すし、繁殖しろと言われれば、生体的な自らの複製を生み出す。だからこそ、今回の行動はおかしい...と、俺たち上層部は考えている、分かったか?」
「...ああ」
「その小さい頭で考えるに、奴らは何を探していると思う?」
「...」
小さい頭で悪かったね。
私はそれを真剣に考える。
「....主人、思ったのですが」
「何だ? ファイス」
「あの謎のドローン? は恐らくですが、裁定者ではないかと思うのです」
「裁定者....か」
ファイスが意外に難しい言葉を使ったので、私は記憶を掘り返す。
そう言えばお兄ちゃんが話していたような気がする。
『世界をあるべき姿に変える力と知識を持った人間が、裁定者と呼ばれることはあるんだよな....まあ実際は、神の意思とか、超越的な存在に縋るだけなんだが』
と。
つまり、あのドローンはバランサーであるという事だろうか?
「ふむ、面白い考察だな、どう思う? ゼーレン」
「ええ、」
もし本当にあのドローンが裁定者の役割を持つなら、何かに対して罰を与えようとしているということだ。
つまり、あのドローン達が定める規律に反する行為をした者が、この近辺にいる。
「.........カルと言ったな? エミド事変について知っていることはあるか?」
「えみど?」
聞いたことのない名前だ。
だが、周知の事実であるようで、ゼーレンは少し顔が引き攣っていた。
「二十年ほど前になるか?」
「ええ、そのくらいでしょうな」
前置きをして、シラードは話してくれた。
エミド事件について。
エミドという、ワームホールの奥底からやってきた謎の種族がいて、合衆国アンデュラスがその技術をサルベージングしてしまった事。
そして、アンデュラスという国そのものが、首都星系を滅ぼされたことによって散逸した大事件。
「技術か、もしくは敵対行動か...何かはわからないが、奴らが動く目的は、奴らを刺激した特定の個人か勢力に、然るべき罰を与えることだろう」
今は、それだけしか分からない。
「そこで、お前に依頼を出す。最近ここらの海賊どもが騒がしい、お前が行って殲滅し、情報を奪ってこい、仲間を連れて行っても構わん。...前金はそうだな...400万MSC、成功すれば1000万出す」
「シラード様!? それはあまりに」
「くそジジイ、俺のポケットマネーだから構わないだろう...どうだ?」
その提案に、私は......
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