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シーズン4-スリーパー防衛編
120-危険な花火
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多くの人間達が、ワームホールの内部へと入り込む。
そこは、ポケット空間と化しており、数千体のドローンが存在していた。
だが彼等は、センティネルを守るように戦いを続けていた。
しかし...
『身の程を知れ、賢く非ざる者どもよ!』
圧倒的なのは、スリーパーキャプテンとも言うべき一体のドローンの存在。
キャプテンの左右にエリートドローンが展開し、まるで翼のように動きながらレーザーを放ってくる。
それだけでは無い。
キャプテンの連射する極太のレーザー、大出力のそれが防衛側艦隊の両翼を襲っていた。
弾着までが遅いそれを回避できない傭兵達ではなかったが、星系軍は練度の所為で回避に失敗し、数を減らしていた。
『まずいな...ネメシス、左翼へ!』
『言われなくても、分かってるぜ!』
『カル、小さいのは任せろ!』
『戦艦は俺たちが潰す、任せた!』
そして。
シルバー上位三人組は、互いに連携しながら最前線で戦っていた。
アドアステラも、ネメシスも、アクシズⅡも、速度に特化した艦であるために出来る挙動だ。
「アリア、ネメシスのプライマリターゲットに合わせて射撃、弾頭はフォーカスブラスト!」
「はいっ!!」
ネメシスは魚雷、巡航ミサイル、ヘビーミサイル、ライトミサイル、スマートミサイル全てを扱える船であり、その圧倒的な攻撃力でドローンを蹴散らしていた。
アドアステラもそれにミサイルを合わせ、その援護をアクシズⅡが行っていた。
『悪い...カル』
だが。
作戦はそう上手くいくものではない。
ネメシスが逃げに徹し始めたのだ。
『弾切れだ!』
「だからレーザーくらい積んでおけと、あれほど!」
カルは怒りながらも、ネメシスとアクシズⅡの撤退を支援する。
それを明確な区切りとしても良いほどに、突入隊の状況は悪くなっていた。
ドローンの数が多すぎるのだ。
数千、数万といるドローンの群れ、長射程かつ高威力のレーザーを回避しながら、一機ずつ潰していくなど狂人の沙汰であった。
「シラード、あれはまだ使えないか!?」
『ダメだ、圧倒的に射程が足りん...』
センティネルの最終兵器に期待するカルだったが、それはすぐに裏切られることとなる。
有効射程の狭いセンティネル最終兵器では、ドローン艦隊に届かせるためには十分近づかなければならない。
「つまり...一撃を入れてすぐに離脱する必要があるわけか...」
カルは暫し考える。
彼女の脳内に、アドアステラに積まれたありとあらゆる兵器が巡っていく。
そして、彼女は答えに辿り着く。
だがそれは、彼女に取って受け入れ難いものだった。
「......インファブ」
INFERB...Impacts Nuclear Focus Enhanced Radiation Effective Bomb。
超強化核爆弾という名を持つそれは、極めて小さい範囲への破壊と、生物の体外においてのみ数分という半減期を持つ放射線を齎す凶悪そのもの、破壊の権化のような兵器である。
だがそれは、アドアステラの中に一個しかない。
本来アドアステラの武装ではない上、それは...
「お兄ちゃんとの、花火セットの余り...」
大切な思い出の品でもあった。
だが、今回は比較的軽めの品物だったため、カルの決断も早かった。
何より、
「お兄ちゃんは、これをいつか使えと、私に言ったんだから...」
カルはファイスと協力して、アドアステラ甲板最前部に設置されたボムランチャーへとそれを運び込む。
そのデザインはピンク色で、表面には英語で「To my dearest sister.」と刻印されている。
本当は、宇宙の花火イベントに乗じてプレイヤーを爆殺しようという共同企画の時に、カルの兄が冗談でカルに残したものだ。
『サ終までには使えよ』
そう言った兄の顔を、カルは今でも鮮明に覚えている。
「(だから、これは私のエゴとの決別だ。)」
お兄ちゃんが使えと言ったものは、すぐにでも使うべきだったのだと。
彼女は誓った。
「セット完了、軸線入力開始!」
ブリッジに上がったカルは、シラードに通信を送る。
「シラード、全艦隊をアドアステラより後方に退避させろ」
『何かする気か!?』
「そうだ...だが、上手くいくかはわからない」
『......上手くいかなかったら?』
「俺は死ぬだろう」
その威力は、アドアステラで耐えられるものではない。
『ダメだ! そんな事をすれば...』
「お前はアレンスターの親友なんだろう? あとは頼んだ」
カルは改めてブリッジ全員を見渡す。
だが、誰一人として。
通信を聞いていた誰一人として、カルには目もくれずコンソールを見ていた。
もはや覚悟は要らない。
「アリア、ミサイル全弾発射! 弾頭は空でいい!」
「了解!」
「ファイス、撃て」
「はっ」
アドアステラの前面部から、円筒状の爆弾が放たれた。
それは発射されたミサイルに紛れて、至近距離まで迫っていたスリーパー艦隊に向かい...
「反転180°! このままCJDで離脱する!」
アドアステラは180°の反転をその場で見せ、そのまま進行方向の逆へと突き進んで消えた。
直後、ドローン艦隊のど真ん中で光が膨れ上がり.........
そして。
全てがその光に呑まれた――――
そこは、ポケット空間と化しており、数千体のドローンが存在していた。
だが彼等は、センティネルを守るように戦いを続けていた。
しかし...
『身の程を知れ、賢く非ざる者どもよ!』
圧倒的なのは、スリーパーキャプテンとも言うべき一体のドローンの存在。
キャプテンの左右にエリートドローンが展開し、まるで翼のように動きながらレーザーを放ってくる。
それだけでは無い。
キャプテンの連射する極太のレーザー、大出力のそれが防衛側艦隊の両翼を襲っていた。
弾着までが遅いそれを回避できない傭兵達ではなかったが、星系軍は練度の所為で回避に失敗し、数を減らしていた。
『まずいな...ネメシス、左翼へ!』
『言われなくても、分かってるぜ!』
『カル、小さいのは任せろ!』
『戦艦は俺たちが潰す、任せた!』
そして。
シルバー上位三人組は、互いに連携しながら最前線で戦っていた。
アドアステラも、ネメシスも、アクシズⅡも、速度に特化した艦であるために出来る挙動だ。
「アリア、ネメシスのプライマリターゲットに合わせて射撃、弾頭はフォーカスブラスト!」
「はいっ!!」
ネメシスは魚雷、巡航ミサイル、ヘビーミサイル、ライトミサイル、スマートミサイル全てを扱える船であり、その圧倒的な攻撃力でドローンを蹴散らしていた。
アドアステラもそれにミサイルを合わせ、その援護をアクシズⅡが行っていた。
『悪い...カル』
だが。
作戦はそう上手くいくものではない。
ネメシスが逃げに徹し始めたのだ。
『弾切れだ!』
「だからレーザーくらい積んでおけと、あれほど!」
カルは怒りながらも、ネメシスとアクシズⅡの撤退を支援する。
それを明確な区切りとしても良いほどに、突入隊の状況は悪くなっていた。
ドローンの数が多すぎるのだ。
数千、数万といるドローンの群れ、長射程かつ高威力のレーザーを回避しながら、一機ずつ潰していくなど狂人の沙汰であった。
「シラード、あれはまだ使えないか!?」
『ダメだ、圧倒的に射程が足りん...』
センティネルの最終兵器に期待するカルだったが、それはすぐに裏切られることとなる。
有効射程の狭いセンティネル最終兵器では、ドローン艦隊に届かせるためには十分近づかなければならない。
「つまり...一撃を入れてすぐに離脱する必要があるわけか...」
カルは暫し考える。
彼女の脳内に、アドアステラに積まれたありとあらゆる兵器が巡っていく。
そして、彼女は答えに辿り着く。
だがそれは、彼女に取って受け入れ難いものだった。
「......インファブ」
INFERB...Impacts Nuclear Focus Enhanced Radiation Effective Bomb。
超強化核爆弾という名を持つそれは、極めて小さい範囲への破壊と、生物の体外においてのみ数分という半減期を持つ放射線を齎す凶悪そのもの、破壊の権化のような兵器である。
だがそれは、アドアステラの中に一個しかない。
本来アドアステラの武装ではない上、それは...
「お兄ちゃんとの、花火セットの余り...」
大切な思い出の品でもあった。
だが、今回は比較的軽めの品物だったため、カルの決断も早かった。
何より、
「お兄ちゃんは、これをいつか使えと、私に言ったんだから...」
カルはファイスと協力して、アドアステラ甲板最前部に設置されたボムランチャーへとそれを運び込む。
そのデザインはピンク色で、表面には英語で「To my dearest sister.」と刻印されている。
本当は、宇宙の花火イベントに乗じてプレイヤーを爆殺しようという共同企画の時に、カルの兄が冗談でカルに残したものだ。
『サ終までには使えよ』
そう言った兄の顔を、カルは今でも鮮明に覚えている。
「(だから、これは私のエゴとの決別だ。)」
お兄ちゃんが使えと言ったものは、すぐにでも使うべきだったのだと。
彼女は誓った。
「セット完了、軸線入力開始!」
ブリッジに上がったカルは、シラードに通信を送る。
「シラード、全艦隊をアドアステラより後方に退避させろ」
『何かする気か!?』
「そうだ...だが、上手くいくかはわからない」
『......上手くいかなかったら?』
「俺は死ぬだろう」
その威力は、アドアステラで耐えられるものではない。
『ダメだ! そんな事をすれば...』
「お前はアレンスターの親友なんだろう? あとは頼んだ」
カルは改めてブリッジ全員を見渡す。
だが、誰一人として。
通信を聞いていた誰一人として、カルには目もくれずコンソールを見ていた。
もはや覚悟は要らない。
「アリア、ミサイル全弾発射! 弾頭は空でいい!」
「了解!」
「ファイス、撃て」
「はっ」
アドアステラの前面部から、円筒状の爆弾が放たれた。
それは発射されたミサイルに紛れて、至近距離まで迫っていたスリーパー艦隊に向かい...
「反転180°! このままCJDで離脱する!」
アドアステラは180°の反転をその場で見せ、そのまま進行方向の逆へと突き進んで消えた。
直後、ドローン艦隊のど真ん中で光が膨れ上がり.........
そして。
全てがその光に呑まれた――――
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