異世界の宇宙に転移しましたが、お兄ちゃんのいない宇宙には住めないので、お兄ちゃんを探す事にしました!〜男装ブラコン少女の宇宙冒険記〜

黴男

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シーズン5-ショートバケーション編

143-要塞の守り手達

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予想通り、私たちの道を阻む者は人間ではなかった。
狂暴化させられたキメラと、本来の用途ではなさそうな自動制御の重機が襲い掛かってきたのだ。

「ふんっ!!!」
「ファイス、そのまま!」

私はカルセールを抜き、ファイスが抑えている重機のパワーコアを破壊する。
そして、次にニケを抜いて、シトリンが気を引いていたキメラの心臓部を撃つ。

「すまない」

キメラは苦悶に顔を歪め、すぐに穏やかな顔に戻って倒れ込む。
人体構造はともかく、心臓が一つしかないのは変わらないようで、位置さえ変わっていなければそれを撃ち抜けば終わりだ。
でも、人として人型のものを始末するのは少しだけ心が痛い。
だけど、私にはお兄ちゃんの名言が味方についている。

『何を敵と思い、何を残酷かと思うかは人の心次第なんだ。だから、もし俺がお前にとって敵だと思う行動をしたなら、お前も遠慮なく俺に敵対するんだ』

勿論そんな気は全くないけれど、襲い掛かられた以上は私の側に正義がある。
これは残酷ではなくて、救いなのだ。
...と思うことにする。

「主人! そちらに!」
「ああ!」

手甲のシールドを展開をする必要もない。
私は重機の鈍重な一撃を回避して、その電子頭脳部分をカルセールで撃ち抜く。
これで後三発...。

「ハァアアアッ!」

ファイスが跳躍し、バトンによる一撃で重機のシールドを破壊する。
そして、着地後再度の跳躍で片手のバトンで装甲を破壊、電子頭脳部分のコードを断線させて停止させた。
その横では、シトリンがキメラ相手に戦闘を繰り広げていた。
シトリンはバックパックを背負っていて、それにより一時的に跳躍が可能だ。
だからこそ、鈍重かつ愚鈍なキメラ相手にも対応できていた。
人間の延長線上である以上は、遠距離攻撃手段や突飛な攻撃手段を持たない。

「カナード製ならまた違うんだけどね」

カナード製のキメラは複数の改造やインプラントによって、巨体を維持したまま戦闘が可能な芸術品...と言っても差し支えのないキメラだ。
だがこちらは、強引に接合したか、変異させただけのキメラ。
勿論、脅威にはなりうるけど...心臓が一個しかなかったり、脳が変異してるせいで、どうしても弱い印象が覆せない。

「でも、こうなったらどうしようもないからね」

脳の変異ばかりはどうしようもできない。
高速再生ナノマシンだって、数に限りがあるから、全員は救えないだろうし。
凶暴化させられた時点でもう戻す事はできない。
とどめを刺すしかないのは悲しいけど...

「おっと!」

重機の攻撃をシールドで受け止める。
衝撃だけは完全には逃せないけど、この程度なら問題ない。
受け流せないのはパワードカナードくらいの一撃だから。

「出口だ!」
「...しかし、敵が相変わらず...」
「突破する。俺たちなら出来るだろう」
「はっ!」

私とファイスは同時に飛び出し、重機の無力化に動く。
ファイスが足を破壊して、私がシールドで殴り付ける。
数度殴ると、シールドの方が過干渉で弱まるので、そこにニケを押し付けて数発放つ。
頭部が剥き出しになったところで、アイカメラ部分を拳で殴って潰し、動きを封じてから蹴りで頭部を破壊する。

「結構いけるね」
「元々戦闘用ではないようですから」

外装は金属製だけど、蹴りで歪むくらいなら大したことはないか。
反対側では、シトリンがキメラ数体を始末していた。
シトリンは殺戮兵器ではないけど、カナードの謎パッチのせいかな、これも....

『エネルギーパックが尽きました』
「俺のを分けるよ」

ファイスはエネルギーパックを持っていないので、私の予備を渡す。
ニケ用の小容量版だけど、規格は同じだ。
二つセットすることで、エネルギーの充填は終わったようだ。

「先へ急ぐぞ」
『はい』
「はっ!」

私たちは激しい戦闘の跡が残る回廊を抜け、先を目指すのであった。
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