異世界の宇宙に転移しましたが、お兄ちゃんのいない宇宙には住めないので、お兄ちゃんを探す事にしました!〜男装ブラコン少女の宇宙冒険記〜

黴男

文字の大きさ
176 / 272
シーズン6-ビージアイナ戦線編

174-ハダウガゴ第二アウトポスト奪還戦(後編)

しおりを挟む
『撃て』

指揮官の命令が響き、戦場を無数の光弾が一閃する。
王国騎士団の「騎馬隊」に当たるラグリア級コルベット、ナベタ級フリゲート、アルトラス級駆逐艦で構成された分隊が敵艦隊内部に突入、撹乱すると同時に「弓兵隊」とされるバークシア級巡洋艦、ナラロイア巡洋戦艦による長距離射撃を行う。

「初陣ですな」
「黙れ」
「おお、手厳しいですなあ」

指揮官――――王国騎士団長、アルドマン・ゼンクレイは、不満顔の王太子、アーラム・ディクロス・オルトスを宥めていた。

「おっと.....騎馬隊! 帝国艦隊左翼が突出しすぎている、抑えに回れ!」
「いや、その必要はない」
「何故です?」

アーラムは通信機を奪い取り、別の回線に繋ぐ。

「カル! 聞こえているな、帝国艦隊の左翼が突出し始めている、抑えに回れ」
『言われなくとも、もう動いている。お前は黙って居ろ』
「(何たる物言い.....)」

アルドマンは、カルらしき声の傍若無人さに呆れる。
だが同時に、王太子である彼が、騎士団の分隊数個を一つの戦力に劣ると判断していることにも驚いていた。

「王太子、面で攻めてくる相手に点をぶつけるのはお勧めできませんぞ」
「フッ、愚か者め。奴は点より面の方が得意だ」

直後。
アドアステラが攻撃を開始した。
高速で発射される高出力の砲撃が、帝国艦隊を次々と轟沈させていく。

「馬鹿な......なんですか、あれは?」
「分からぬ。しかし、我等にあれが向くことが無い事が、唯一の幸運だ」

アドアステラの撃墜スコアがとんでもない速度で伸びていく。

「聞けば、帝国軍の間ではたった一週間でブラックリスト入りした傭兵だそうですね」
「懸賞金もそれなりに高いだろうな、倒せればの話だが」

帝国軍左翼、その中でも射程距離の長い数百隻に攻撃されているにも拘らず、アドアステラは金色の粒子に守られて攻撃が通らない。
それどころか、射撃の精度が低い。

「電子戦にも特化しているのですね」
「そのようだな」
「しかし、彼に任せたままではこちらも示しが付きません、アドアステラの後方に弓兵隊を展開しても?」
「構わんだろう、気にする性分の男......ではない」
『第十二分隊より入電! シールドを突破された艦船が半数を越えたため、戦線より離脱するとの事です』
「....おっと、第十二分隊に返電! 直ちに後退せよ。第四十三分隊、第十二分隊と位置を後退せよ!」

王国騎士団は、高い練度を維持しつつ敵艦を葬っていた。
帝国軍の本隊ではない艦隊であるため、流石に練度の差が出る。

『ええい、何故ここに王国騎士団が!』
『中央翼を突破されます! 艦隊の密度が保てません!』
『こうなったら最重要ターゲットだけでも!』
『無理です! 肉薄を試みた艦載機編隊が全滅! 撤退指示を!』

帝国軍の最大の誤算が、二つも同じ戦域にあった。
ひとつは、アドアステラ。
主力艦のシールドを突破でき、かつ大艦隊を真正面から相手取り、宇宙艦の弱点である艦載機に対しても有効打を持つ。
その懸賞金は今や、3500万ISCとなっている。
そして、最後のもう一つの誤算。
それは、王国騎士団の登場である。
王国軍とは比べ物にならないほどの強敵、それこそ帝国騎士団が出てこなければ互角に戦えないほどの強敵がそこにいるのだ。
頼みの綱である主力艦が撤退してしまった今、帝国軍に後退する以外の選択肢はなかった。

『せっかく奪取した前哨基地を....糞が!』

指揮官は悪態をつきつつ、撤退を指示した。
撤退に際して前哨基地は破壊されたが、王国軍の一方的な勝利であった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

処理中です...