異世界の宇宙に転移しましたが、お兄ちゃんのいない宇宙には住めないので、お兄ちゃんを探す事にしました!〜男装ブラコン少女の宇宙冒険記〜

黴男

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シーズン8-ケラカ星系編

212-友人契約

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ユルトに連れ出された私たちは、ステーションの商業区画を歩いていた。
傭兵や輸送艦に乗る民間人のために誂えられた場所であり、私は見たことがないけれど風俗店もある所にはあるらしい。

「親分、酔っ払ってどこ行くんすか」
「カル、任せる!」

勝手に連れ出しておいて、人任せなのか。とは思ったけれど、一応先輩だし。
敬意を払って、周囲を見渡す。
看板を見る限り、飲食店、日用品店、酒場といった様子だ。
うーん、悩むな...そう思っていた時、ユルトの仲間の男が耳打ちしてきた。

「...もうちょい進んでください、陶器の専門店があります」
「...助かる、ユルト、行こう」
「ああ!」

物凄い強面だが、さすがに面子は大事だったらしい。
親切にも教えてくれた陶器の店に、私達は足を運ぶ。

「ここはなんの店なんだ、皿か...?」
「親分...」
「元々皿とは、プラスチックではなく何かを練り、焼きを入れることで固めて作っていたものだ。その技術は数代掛けて成熟され、ここに並ぶ物のように完成に至る」

私は知ったような風に説明する。
実際はもっと時間をかけて、精密に先鋭化されていく。
私が過去にやった時は、職人のものに近づけるのだけで精一杯だった。
沢山作るなんて、お兄ちゃんのためじゃなかったらきっと出来ないだろう。

「ほう、では...ここにあるのは、情熱の記録というわけだな!」
「そうだ」

値札をチラ見すると、消耗品にしては高いなという感じだった。
買えなくもない。

「親分...無駄遣いは...」
「だが、少しくらいはいいだろう!?」
「...」

私はユルトの眼を見る。
濁ってはいるものの、綺麗な翡翠色をしている。
私は商品棚の上の方にあった、緑色の陶器を指差す。

「店主」
「あー...へい、何ですか?」
「これをくれ、支払いは送金か? それとも支払い端末が?」
「送金です、こっちにコードが....」

私はコード先にMSCを送金し、品物を受け取った。
丁寧に包装されたそれを、ユルトの部下に持たせる。

「俺からの贈り物と思ってくれ、友好の証というやつだ」
「....ああ! 忝い!」

部下がそれを船に持ち帰る間に、ユルトは私を武器屋に連れて行ってくれた。

「コレが私の愛用のドラクター社製DRタイプ2型だ!」
「持ちにくそうだが....」
「逆だな! 持ちにくいように見えるが、握れば中々落ちないものだ、大きく動く戦闘では有利なのだ」
「成程....」

銃を落とさない構造というのは珍しい。
私はユルトの銃を見た。
確かに、握りにくいけど、握ってさえしまえば絶対落ちない。
腕ごとやられたら無理だろうけど。

「銃はこれだけなのか?」
「そうだ! 撃っても死なない相手には、仲間と共に対処するからな」
「というと?」
「プラズマキャノンなどで焼き払うのだ!」
「成程」

うちの仲間は皆肉弾戦特化だからなぁ.....
防御が厚い敵=全員で囲んで殴るイメージしかない。

「俺の仲間は肉弾戦特化だからな....」
「君の仲間は確か、人類種で無いものが多かったな、それなら肉弾戦でも十分だろう」
「はぐれ者に亜人はいないのか?」
「いるにはいるが、大抵は庇護を必要としないほど強い者ばかりだからな!」

成程、やっぱりそうなるのか。
最終的に、他人の庇護を必要とする亜人とは、種族系の敗北者なのだ。
うちの場合は、皆強いけれど、それは好きでついてきてくれるって事だね。

「ところで、急にデートなんて言い出したのは何故だ?」
「...その場の勢いだ!」
「...そうか」

この人、慎重なんだかノリが軽いんだかよく分からないな...
掴みどころのない人だ。

「...だが、そうだな...ちょっと着いてきてほしい」
「ああ」

ユルトは店から出て、暫く歩いた。
立ち止まったそこは、路地裏だった。

「ユルト?」
「カル」

ユルトは真っ直ぐ私を見た。
その目は、普段の自信に溢れた様子ではなかった。

「...私は、アプレンティス傭兵として、常にそれ相応の振る舞いを求められる。カル、君は...それが常に出来ているようだな」
「ああ」

話が見えない。
脈絡がない話をされても困る。

「私は、友人が欲しい。私をラータ種族の穢らわしい女とも、頼るべきボスとも、アプレンティス傭兵のリーダーとも思わずに付き合ってくれる、君のような人が」
「...そうか?」

どうでもいいからこそ、何も思わない。
私の態度は、常にそれだけだ。
お兄ちゃん以外に媚びるつもりも、理解しようとするつもりもない。
ただ人によって微妙に態度を変えて、角が立たないようにしているだけだ。

「私のような人間は、君の無関心さでも美酒のように感じるんだ」
「契約のような関係だな」
「まさに、そうだな」

何となくそうした方が善いと思って、私は手を差し出した。
彼女はその手を握った。
こうして、私は強力なコネを手に入れた。
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