異世界の宇宙に転移しましたが、お兄ちゃんのいない宇宙には住めないので、お兄ちゃんを探す事にしました!〜男装ブラコン少女の宇宙冒険記〜

黴男

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シーズン8.5-エミドの少女と旅のアレコレ

222-『オクティアン』

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フローサ星系を抜けた私たちは、クロイセン星系を航行していた。
ここはハイ・セキュリティ宙域で、ワープ中の警戒もシトリンに任せておけばいい。
ユルトと話したいと思ったけれど、今日の私は別の用事があるので、事前に断っておいた。

「それで、何の用?」
「用がなければお呼びしてはいけませんか?」
「ううん。ただ、ノルスがわざわざ呼ぶって事は、何か重要な事なのかと思って」

私はノルスに呼ばれていた。
場所はアドアステラの生産区画。

「以前より依頼されていた、Ve’z遺物の解析・発展ですが、劣化版という形で何とか実現できました」
「やっぱり、私が知った理論だけじゃダメだった?」
「理論としては正しいのですが、それを立証する手段がないのです、少なくともこの船の中では.....」
「ごめんね、大がかりな装置は用意できないんだ」

これはお金の問題ではなくて、維持費と場所の問題だ。
私達は固定の拠点を持たないし、そこに置いたところで使わない間の維持費が莫大になる。
かといって艦内に置ける大きさの施設じゃないしね。
この船は大きいけど、それでも巡洋艦の枠外に出るほどじゃない。

「いいえ。私は「知る事」が趣味です。「知るために動く」のも好きですから、テーマを与えてくださった主人には感謝が尽きません」

いくつかの防護扉を潜り、私達は中型作業台のあるスペースに辿り着いた。
そこで組み立てられているのは、何か....筒のような、レーザーポッド?
そんな感じのものだ。

「これは?」
「以前頂いたパラライシスリンクをもとに、此の身なりの解釈を交えて改良を重ね、兵器としての運用が可能なレベルにまでアップグレードしたものです」
「ふーん......名前は?」
「『エントーシスチェイン』です、理論上、接続したシステムを時間さえかければ完全に掌握できる筈です」

さらっととんでもない事言ってない?
とは思ったけれど、”時間をかければ”、か。

「どれくらい必要なの?」
「数分から数時間程度です。そもそも、これを運用するのには、別の兵装が必要なので....これです」

設計図を見せられた私は、すぐにそれが何かを理解する。

「作業用重機....って感じ? 戦闘にも使えるけど」
「はい。遺跡のシステムをハッキングしつつ、戦闘もこなせる.....そういう目的で、設計を進めています」
「名前はあるの?」
「....まだ未定です、よければ、決めていただけませんか?」

うーん、名前、名前かぁ。
それなら....

「オクティアン、ってのはどう?」
「どういう意味なのですか?」

即興にしてはよく出来てると思う名前だ。
私はちょっとだけ得意げに解説する。

「私の故郷の言葉で、タコ....つまり、ノルスそっくりの生き物がいて、オクトパスって呼ばれてるんだ。その前半だけを取って、プロティアン....変化し続ける、って意味の言葉を合わせたんだ」
「変化....確かに、アップグレードを続けることをそう捉えるのであれば、確かな表現です」

こうして、オクティアンと名前の決まった開発段階の機体は、近々プロトタイプの製造が始まるそうだ。
アドアステラに積んでいる金属資源だけで作れるそうだから、リーズナブルというかコンパクトというか.....
武装も衝撃波砲という、任意で変更可能な威力の衝撃波を放つというものだし、操縦システムもパラライシスリンクの精神リンクシステムを応用するそうだから、完全にノルス専用機だね。
さて....

「お風呂でも入ろうかな...」

私はお風呂に向けて歩き出すのであった。
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