異世界の宇宙に転移しましたが、お兄ちゃんのいない宇宙には住めないので、お兄ちゃんを探す事にしました!〜男装ブラコン少女の宇宙冒険記〜

黴男

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シーズン9-オストプライム編(前編)

238-各々のショッピング

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カルは、ソフと共に調理器具区画を訪れていた。
流石に惑星表面上の一区画を占拠するだけはあり、まるで都市のようなビル群の、一室一室に、王国中の調理器具メーカーが肩を並べているのだ。

「こういうものはあまり分からないな」
「私もです…」
「専門家がいるわけでも無し、良さそうなものを見つけて購入するか。何が必要だと考える?」

カルもソフも、良し悪しを見抜くほど専門家では無い。
ソフは質の低い調理器具を使っていた経験から、競争が激しいこの場所で売られている金属鍋の焼きの技術に感嘆を隠せない様子だった。
カルは、鍛冶技術には造詣が深く無いため、並んでいるものが、過去に自分で作った鍋には遠く及ばないことも理解していた。

「ここは、ブランドに頼るほかないだろうな」
「ブランド....ですか?」
「そうだ、”いい物を作る”と覚えてもらうためには、看板が必要だからな」

カルは携帯端末を操作し、ネットワークの検索エンジンで評価の高いメーカーを探していた。
直ぐに見つかったらしく、そわそわと周囲を見渡すソフの手を優しく握る。

「ひゃっ!? だ、旦那様...?」
「あっちだ、行くぞ」
「はいっ!」

カルとソフは、共にビルの合間の通路を歩く。
この場所において特筆すべきは、車両用の道路がない事である。
歩道は広く平坦で、歩いていて疲れないように加重計算がされた舗装がされている。

「”アショテーオン”か? 読み方が分からないな」
「読めないです…」

発音がわからないカルと、そもそも文字が読めないソフは、とあるビルの前に立つ。
逆さまの星が壁に突き刺さったデザインのロゴを持つ会社であり、ディスプレーには目立つ形で商品が展示されている。
中へと入れば、若干の冷たい空気と共に、販売エリアの案内が目に入る。

「それで、何が欲しいんだ?」
「あ.....その、まずはお鍋が欲しいかなと....」
「鍋だけで調理は出来ないだろう」
「は、はい....」
「俺が適当に見繕う、足りないものがあれば指摘してくれ」
「わ、分かりました!」

カルとソフは店内を練り歩き、まずは注文通りに鍋を探す。
だが、彼女たちを待ち受けていたのは――――

「お、多すぎる.....こんなに種類があるのか」

材質から、耐用年数。
用途に、それにプラスアルファの性能。
数多くの要素が、「たかが鍋」と思われていたそれらを、壁のはるか向こうまで双璧のように聳え立つ棚に並べる結果となったのであった。

「...まあ、ゆっくり探そう」
「はい!」

カルとソフは、密林のような鍋用スペースに足を踏み入れるのだった。



ケインとファイスは、戦闘支援区画を訪れていた。
傭兵や警備員などが使う物品が売られている場所であり、傭兵ライセンスが無ければ高額な入場料を取られる場所でもある。
ただの見学ですら、テーマパークに行くのと同じようなものなのだ。

「ところで。あなたは何を求めているのですか?」
「なにを....? 武器がかっこいいから見に行きたいだけだけど」
「はぁ...」

ファイスはため息を吐く。
彼は、現行のバトンを使った戦闘に少しばかりの不満を覚えており、名実ともに鉄砲玉のような主人を支えるため、より素早く機動戦を行う装備を買い揃えるためにここへ来ていた。

「折角です、あなたのコンバットスーツをよりアップグレードされては? どこで購入したかくらいは覚えているのでしょう?」
「うん!」
「恐らく、予算の関係で切った装備が複数あるのでは?」
「どうして分かるの?」
「軍用の装備にしては、機動性と攻撃性がありません。あの電撃波も、本来は制圧用でしょう?」

ファイスは、ケインのパワードスーツの性能をある程度高く評価していたものの、完全ではないと考えていた。

「予算はどれくらいなのですか?」
「えっとね、500万MSC!」

それではほぼ全財産ではないか、とファイスは嘆息する。
プライバシーの観点から、カルは自分以外が船員の財布の中身を見れないように設定しているものの、毎回いくらくらいの分配か覚えているファイスは、もう少し加減するようにケインに忠告する。
もし彼が財産を使い果たすようなことがあれば、迷惑を被るのが主人である事を理解しているのだ。

「まずは私の装備を揃えたいので、後であなたのスーツにのメーカーを尋ねましょう」
「うん!」

二人は、ファイスが事前に見当を付けていた装備専門ショップを訪れる。

『いらっしゃいませ、お探しのものはございますか?』
「軍規格の装備品売り場はどこにある?」
『三階に御座います』

ファイスとケインは、三階の装備品売り場に向かう。
そこに並ぶのは、防弾チョッキやブーツなどの軍規格(軍で使われているものとはタイプが同じなだけのもの)品の数々。

「買うのは武器じゃないの?」
「いいですか、装備は重要です」

ファイスはすぐそばにあったブーツを手に取る。

「素足よりも速度を出せる靴というものは無数にあります。足に負担をかけないように設計されたサポーターなども」
「......大事なの?」
「ええ」

結局ファイスは、新たに数十万MSC分の買い物を済ませて店を出る。
特に希望が無ければ買ったものは配送され、荷物を持つ必要はない。

「では、向かいましょうか」
「ファイス、こだわりは大事なんだよね?」
「...? はい」
「じゃあ、予算は増額する!」
「なっ....何故そうなるのです!」

ファイスはつい声を荒げる。
周囲の買い物客が、なんだなんだと二人の方を見る。
主人の事なので、ファイスも引き下がるわけにはいかない。

「ぼくも、ごしゅじんさまが大事! だから――――装備には、”いとめをつけない”よ!」
「ハァ....お好きにすればいいでしょう」

ファイスは嘆息する。
しかし、仲間と信頼しているからこそ――――二度忠告することはなかった。



「これとかどう! カルにぴったりだと思うんだけど!」
「ちょ、ちょっと派手じゃないですか....?」

同時刻。
服飾店エリアに来ていたラビとアリアは、水着売り場で騒いでいた。

「(このヒト、ご主人様とラブラブなのに、ご主人様の好みはよくわからないんだな....)」

アリアは、ラビの選ぶ水着のセンスに引いていた。
布面積を極限まで減らした水着か、布面積の多さの代わりに極限まで派手な水着ばかりなのだ。

「普通のじゃダメなんですか?」
「もう買ってあるからね!」
「はぁ....?」

じゃあどうして選んでいるのか?
アリアは疑問を隠せない様子だった。

「カルは普段から肌を全然見せないんだから! 泳ぐ時くらい生まれたままの姿でいいんだよ!」
「そういうものですか...?」
「裸だっていいくらい! 私はそれでも全然いい!!!」

アリアは理解するのを諦め、ラビが選ぶ水着に適当に頷いていた。
その後も――――

「カルにはもっと可愛い服が似合うんだから! ホラ、これとか!」
「....その、ご主人様の意見も聞いたほうがいいのでは」
「今きっと忙しいよ! 大丈夫、合わなくてもいつか着る機会があるから!」

ゴシックロリータ類をチョイスするラビに、アリアはついに介入する覚悟を示した。

「…あのっ! 私も服を選びたいですし…その…ラビさんのお洋服は選ばなくていいんですか!」
「私は…そうだっ、アリアちゃんのお洋服を選んであげるよ! 私のお洋服は、カルに選んでもらうんだもん!」
「え、ええ....」

アリアはラビに掴み掛かられ、目をグルグルと回すのだった。
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