2度目の結婚は貴方と

朧霧

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遠乗りの日

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 リオナさんを自宅まで送り俺は騎士団棟の自室に帰ってきた。扉をノックする音がして開けると酒場で一旦別れたジルベルトが入室する。

「おかえり。ちゃんとリオナちゃんと話せた?」

「あぁ、話せた」

「話せた割には何でそんな顔してるんだ?」

「明後日の休みに遠乗りに誘ったら予定がないみたいで来てくれることになった」

「レオ、勇気出したな。良かったね!」

「良かったのか? なんだか会話が噛み合わなかったような気がしてもやもやするんだ」

「何でそう思ったんだ? 誘って断られたわけでもないだろ」

「役に立つとか言ってたんだよな。どんな意味なんだろう?」

「全部聞いたわけではないから分からないけどリオナちゃんは嫌ならはっきり断るでしょう。とりあえず来てくれるのなら嫌ではないことは確かだね」

「そうだろうか…。それならいいけど」

「これからレオはどうするの? あれだけはっきり結婚したくない宣言した女の子に告白するのかい? しかも平民だけならまだしも孤児だよ。交際や結婚するのには障害が大きいけど考えてる?」

「なんだよジル。お前が仕掛けたんだろう? 全く無責任な。俺は平民とか孤児とか関係ない。弟も二人いるし家を継ぐことにも爵位にも興味がない。
父は反対するだろうがなんとか説得するさ。ただリオナさんは結婚したくないから告白しても相手にされないかもな。逃したくないのにどうしたらいいのかわからん」

「へぇー、そんなに惚れちゃってるんだ。レオが困っているのを初めて見たよ」

「今日、ラモン亭で会ったときに同僚といただろ? それを見た瞬間に焦りと怒りが込み上げてきたような感じで自分に驚いたよ。好きだと自覚したら全てがしっくりきて遠乗りに誘ったまではいいのだが口説く方法が分からず混乱している」

「まぁ、彼女の結婚に対しての考えはなかなか変わりそうにもないよな。どうしても彼女がいいならとりあえず結婚はしなくてもいいからと告白してみたら?
あとはレオが頑張るしかないでしょう。しかも家の問題だってそんなに簡単にはいかないと思うよ。相当な覚悟も必要だしね」

「家のことはこれから考えるさ。まだ彼女に告白もしてないし。はぁぁ…」


遠乗りに行く日がやってきた。私は馬に乗ったことがないので服装すら分からない。とりあえず馬に跨げるようにスカートは履かずミシェルさんにお借りした乗馬用のパンツとブーツを履いた。前世でいうとスパッツみたいな感じ? オリンピックの競技で見たことがある服装と似たような感じだった。

昨日、ミシェルさんに相談したときにクスクス笑われたんだよな。初心者がいきなり遠乗りなんて無謀だと思われたんだろうか?

「ミシェルさん、実は明日遠乗りすることになって馬に乗るんですけど服装はどのような感じなんですか? 跨げるような服なんて持っていないのですがやはり行かない方がいいですかね?」

「リオナ、ちなみに誰と遠乗りに行くわけ?」

「団長さんですけど遠乗りに行くとなんだか役に立つみたいです。馬に乗ったことがないから最初はお断りしましたが大丈夫だからとおっしゃって断れない雰囲気だったので行くことにしました」

「本当の意味が分かってる?」

「はい、分かっていますよ。今回の取引に役に立つなら乗馬くらい頑張りますけど?」

「ふふふ、団長さんもやるわね。そうねぇ、私の乗馬服があるから使いなさい。上はブラウス的な物でいいわよ。汚れても構わないから楽しんできて」

「ありがとうございます、助かりました。ブラウスは手持ちがあるので下だけお借りします」

こうしてミシェルさんに服をお借りしたけど果たして本当に馬に乗れるんだろうか? ゆっくり行けば落とされることはないのかな? などと考えながら待ち合わせ場所の公園入口へ行った。

入口には馬一頭と体の大きな団長さんがすでに到着していた。

「こんにちは、お待たせしてすみません。団長さんは馬に乗らないで歩きですか? それとも私が歩いて行きましょうか? 歩くのは得意なのでお任せください」

「? リオナさん、歩いて行くと遠乗りにならないよ。馬には一緒に乗るんだ。しかし…、今日はスカートではないんだな」

「えっ! 一緒に乗るんですか? 私、そんなに重い方ではないのですが馬は大丈夫なんでしょうか? 今日は馬に跨るかもしれないのでミシェルさんに服を借りてきました」

「二人くらい大丈夫、乗せれるよ。でも跨るつもりだったとは驚いた」

「跨がらないでどうやって乗るんですか? 何も知らなくてすみません」

「いや、いいんだ。女性は大抵スカートだから横座りで乗る人が多いので驚いただけだ。気にするな」

「はぁ、横座り。あの体制は結構つらいんですよね」

前世で自転車の二人乗りしたけど横座りって結構大変だったよな。二人乗りが禁止になる前だからかなり昔だけど。

「馬に乗るのは初めてだったのではないのか?」

「あ、すみません。馬は初めてで横座りしたのは馬ではないので気にしないでください。出発しましょうか?」

団長さんが先に乗り私を引き上げてくれて前に跨ると視界に入る景色の高さに驚いた。へぇ、実際乗ってみると馬の高さは思ったよりあるんだな。

「出発するぞ。舌を噛むから口を閉じているといい。俺が落ちないように支えているから大丈夫だ」

「はい、よろしくお願いします」

前世でも馬に乗ったことはなく、一時期ブームになったロ○オマシーンなら友人宅で乗せてもらった。
子供はファミリー牧場で乗馬をしていたけどもっぱら撮影隊だった私は初体験。
ちょっと心がワクワクした。

郊外の森林地帯を少し入ると湖が見えてきた。大きさはさほどなく一目で分かるくらいだった。ただ自然破壊もされていないから前世で見る湖よりも遥かに綺麗だ。

「着いたぞ。体は大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。思ったより弾みますね」

「そうか。痛いところが無いなら良かった。降りよう」

団長さんが先に降りて私を手伝ってくれる。口数は少ない人だけど優しい人なんだなと思った。

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