2度目の結婚は貴方と

朧霧

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突然の告白

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 近くの木陰に座りぼんやりと湖を眺めながらポツポツと話しをする。綺麗な景色を眺めていると日頃の疲れが癒やされ気持ちも穏やかになるようで心地よい。

「このように穏やかな時間が過ごせるなんてこの国はとても平和だなと思います。維持するためには団長さん達のお仕事も重要ですね」

「レオナード」

「はい?」

「俺の名前、もう忘れたか?」
 
「もちろん覚えていますよ。それがどうしたんですか?」

「仕事でないときは名前で呼んでくれ。俺も名前だけで呼びたいがいいか?」

「えっ? はい、私の方が歳下ですしさん付けしなくていいです」

「リオナ」

なんだか名前を呼ばれて小恥ずかしくなりそわそわしておかしい…。

「普段ミシェルさんや友人から呼ばれているのに団長さんだとなんだか慣れないですね」

「レオナード」

これはもしかして名前で呼んで欲しいのだろうか? 団長さんでいいと思うけど役職がバレてしまうと何か問題なのだろうか?

「レオナードさん。あっ、貴族の方だとレオナード様の方がいいですか?」

「いや、様もさんも要らない」

「えっ! 歳上の方を呼び捨てなんてできないですよ。やっぱりレオナードさんで」

「まぁ、慣れる時間が必要だな」

時間? 私には一生呼び捨てなんかできないと思うけど…。

「リオナ」

「はい、何でしょう」

「リオナは結婚したくないけど恋愛はしてもいいとこの前話していたよな?」

「またその話題ですか? 私の個人的な考えなので忘れてくださいよ。それに普通の女の子なら結婚に憧れますので私の考えが人より変わっているんです」

「忘れない。いや、忘れられない。リオナ、俺はお前が好きだ。最初に出会ったときから気になって仕方がない。リオナが結婚したくない気持ちも受け入れるし無理は言わないからただ俺と共に生きて欲しい。家を継ぐことも爵位も興味が無いし俺には必要ないんだ。だが、リオナだけはどうしても諦めたくない。俺はどうやら一目惚れの初恋らしくてな、上手くリオナに気持ちが伝えられないかもしれないが真剣な気持ちだ。嫌か?」

「嫌…、ではないと思います。驚きましたがレオナードさんの気持ちは嬉しく思いました。私の考えを受け入れてくれた人も初めてなのでいつもはすぐにお断りしていたはずなのに心が揺れ動きました。ただレオナードさんが私に好意を寄せているとは思っていなかったので少し時間をください」

「突然告白をしたから返事はもちろん待つよ。嫌ではないと言ってくれただけでも良かったと思う。仕事のことは関係なく気の済むまで俺のことを考えてくれ。リオナ、聞いてくれてありがとう」

「はい、こちらこそありがとうございます」

告白されて気まずい雰囲気にならなかったのは初めての経験だ。団長さんにはとても驚いたけど帰りの乗馬も体が密着しても嫌ではなかったし、むしろ乗馬を楽しめた。

団長さんと別れて自宅に帰ってみたものの嬉しい気持ちもあったが考えることなどできずにいつも通りの生活をした。また明日になれば心に余裕ができて考えられるのだろうか? 


翌朝、商会に行くとミシェルさんから呼ばれた。

「リオナ、おはよう」

「おはようございます、ミシェルさん。どのようなご用件ですか?」

「やだ、ご用件なんて。ふふ、昨日の遠乗りはどうだったかしら?」

「ど、どうって…あ、ミシェルさんに服をお借りして良かったです。乗馬も無事にできましたのでありがとうございました。洗濯してお返ししますのでもうしばらくお待ちください」

「あら、服なんてあげるからどうでもいいわよ。ところで今、珍しく動揺したわね」

「えっっ、何も動揺なんてしていませんよ?」

「それで団長さんとはどうなったの?」

「馬に乗って湖に行きのんびり過ごして帰りました。それに乗馬も慣れたら楽しかったです」

「もう、そんなことは聞いてないわよ。団長さんに告白されたの?」

「な、何で知っているんですか?」

「知ってるも何も、最初から誰が見ても分かるじゃない。リオナだけよ、全く気づいていないの」

「うぅぅ…。はい、告白されましたけど驚いてしまったので返事はまだしてません」

「あら、珍しく即答しなかったのね」

「実はこの前モーリスさんとラモン亭で飲んでいたら団長さんと副団長さんがお店に来て合流したんです。そのときに結婚の話題になってあまり人には話したことがないのですが自分の考えを話しました。告白されて結婚を考えなくてもいいからと言ってくれたので私の気持ちを考えてくれたのが嬉しかったです。でもそんなことを言われて告白されたのも初めてだったので即答できませんでした」

「即答できなかったのはもう答えが出てる感じがするけどね。リオナは告白されて嫌だったのかしら?」

「嫌ではありませんでした。団長さんが私に好意を寄せてくれることは嬉しかったです」

「そう、良かった。私はリオナが少しでも嬉しいと思えるようになって安心したわ。これでもリオナには幸せになって欲しいといつも願っているのよ」

「ミシェルさん、ありがとうございます」

「さぁ、仕事しましょうか」

「はい」

なんだか心がとても温かくなる。今世では親も兄弟もいなくて孤児だけどミシェルさんのことを本当のお姉さんのように思えた。ありがたい出会いをしたな…。
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