2度目の結婚は貴方と

朧霧

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ハラル

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 会長さんはそのあとも違う話題を根掘り葉掘り色々な質問をしてきたが、取引の為と思い長時間お話しをした。
帰り際になると毎回同じ誘いを受ける。

「今日はとても有意義な一日だったよ、ありがとう。イルベナ国に来る気にならない? 素敵な結婚相手も私が見つけてあげるしできるだけ待遇もよくするからどうだろう? リオナが嫌でなければ私の息子と結婚してくれたら嬉しいよ」

「ありがとうございます。でも結婚相手も自分で見つけますし今の仕事は不満もありません。マララ商会もミシェルさんも私にとって大切な存在なのでお断りさせていただきます。またリイベル会長がいらっしゃるのを楽しみに待っていますね」

そもそも私には自力の能力は持っていない。あくまでも前世のものであってたまたま会長さんにとっては参考になる話なだけ。

「残念だなぁ。また次の機会に口説くとしよう。そうそう、取引の件は明日にでもチルと話してくれ。予定は大丈夫かい?」

「はい、大丈夫です。チルさんもよろしくお願いします。リイベル会長、本当にありがとうございました」

「では明日の時間と場所をリオナさんに後でお知らせしますのでよろしくお願いします」

明日、チルさんと詳細の打ち合わせをすることになった。



打ち合わせの日、指定された場所に着くとチルさんはすでに到着しておりチルさん、モーリスさん、私の3人で打ち合わせをする。
騎士団側が購入したいタイプのクロスボウはやはり思ったよりも高値になり、数量を減らすか騎士団側の予算を増やしてもらうかどちらかの選択となった。

これは騎士団側の意向も聞かなければならないのでチルさんには滞在中に回答しますという話になった。

打ち合わせが終わり商会に戻ってミシェルさんに報告したら疲れが出たので自宅に帰ることにする。
夕食も作るのが面倒になり適当な食べ物を屋台で購入し自宅に近づくと玄関の前に人影が見える。辺りが暗くてよく分からないが男性のようだ。
近づくに連れて顔がはっきりと見えると予想外の人に驚き息が止まりそうになった。

「ハラルさん…」

見たことの無い形相で私に気がつくと近づいでくる一瞬の間に私は身の危険より違うことを咄嗟に考えていた。

もしかして帰れるかも、あの子に会いたい…。

私の目の前に立つと突然首を絞められ苦しい中でなすがままになっていた。

「お前が、お前が悪いんだ!」

ハラルさんが繰り返し言っているのが聞こえ女性の悲鳴なような声が聞こえたと同時に意識がなくなった。


気がつくとベッドの上にいた。日差しがやけに眩しく感じたが生き延びていたことを受け入れる。誰かが部屋に入ってきたけど、どうやら医師と看護師のようだ。

呆然としながら話を聞くと通行人が巡回中の町の警備団に助けを求め病院に運んでくれたらしい。私はただ聞いていただけだがマララ商会のミシェルさんに連絡が取りたいとお願いする。しばらくするとミシェルさんが来てくれた。

「リオナ、無事でよかった…」

泣きながら抱きしめられた。心がとても温かい…。

「大丈夫ですよ、ミシェルさん。ご心配をおかけしました。申し訳ございませんが今日は仕事を休ませてください。
それとチルさんと打ち合わせをした結果を騎士団に伝えなくてはならないのですが、見た目が痛々しく見えてしまうのでモーリスさんにお願いできますか? 見積書は机の引き出しに入れてあります」

「こんなときにまで仕事の話なんて。リイベル会長との商談は済んでいるのだからあとのことは心配しなくていいわよ。いくらでも休んで構わないわ。それよりも首は大丈夫なの?」

「はい、痛みもさほどありませんが手の痣が付いているようであまり見た目が良くありません。明日から仕事に戻りますがしばらく外出する仕事は相手を不快にさせるのでやめた方がよさそうです」

「明日? もっとゆっくりお休みしなさいよ」

「お気遣いありがとうございます。でも私は家にいる方が精神的に良くありませんので大丈夫です」

「それならリオナの好きにしたらいいわ。でも決して無理したら駄目よ。それで犯人は知っている人?」

「……」

「リオナの希望で事件性にはしないと言ってたけど誰かを庇いたいの?」

「庇いたいたいわけではありません…。自業自得な部分もありますし何事も無かったので事件にしないだけで相手の方には反省して立ち直って欲しいです」

「ハラルね…」

「……」

「また来たらどうするの? 女性だから今度こそ命が危ないわよ」

「はい、それでも今回は…。本当は本人と話し合いができればいいのでしょうけど恨んでいるような顔をしていたので無理でしょうね。私も冷たい態度でちゃんと話をしなかったのが悪いのです。相手の気持ちは全く考えなかったと思われても仕方ないですね。何が正解なのかは分かりませんが自分の態度は反省しなければと思います」

「そう…。今回はリオナの気持ちを受け入れるけれども次は駄目よ」

ミシェルさんが自宅まで送ってくれることになり私は病院から自宅へ帰った。
自分の身に起きた事なのにまるで他人事のような態度になりミシェルさんも本当は理解していないと思う。ただ私の意見を受け入れてくれただけで納得はしていないよな。

不思議だった。今世に生きているはずなのに身の危険の恐怖を感じなかったから。とても苦しかった。でも元の世界に帰れるかもと期待して首を絞められることを受け入れていた。
ハラルさんには恨みも感じずに何も思わない。帰れなかったことの方が落胆した。

私の本心はやっぱり帰りたい…。
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