2度目の結婚は貴方と

朧霧

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父と息子達

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 実家に到着するとテオドールが出迎えてくれる。

「兄上、お久しぶりです。父上は執務室におりますので一緒に参りましょう」

「ありがとうテオ。今日は冷静に話し合いできれば良いのだが色々と苦労をかけてすまないな」

執事のトマスも挨拶してきたが、先日のリオナへの対応に腹が立っていたので大人気ないが素っ気ない態度をする。
二人で父の執務室へと向かい、扉をノックした。

「父上、ご無沙汰しております」

「何でテオも一緒にいるんだ? レオナード、お前は何をしに来た!」

「テオにも今日は話し合いに参加してもらいたいので私がお願いしました」

「まぁ、良い。それで話とは何だ?」

「はい。再度、家を継ぐ意志は無いと伝えに参りました。彼女は関係ありません。元々、私は騎士を選択するときから考えていたことです。家のことを考えて弟達の成長を待っていたのもあり遅くなりましたが、テオも成長したので話し合いもできると思います」

「それでお前は自分だけ勝手にするのか? テオ、兄はお前に何もかも押し付けて自分に都合よく言っているとは思わんか? 嫡男の義務も果たさずになぁ」

「父上、兄上が無理矢理に家を継いでも兄上の人生は幸せになりません。貴族に生まれたからには当然義務や責任もありますが、押し付けることを私はしたくありません」

「お前達は随分と甘い考えだな。それでこの家も維持できると思っているのか? 何が幸せなどと夢を見ている子供みたいで情けない息子達だ」

「家を潰すつもりなんて私達にはありません。兄上が継ぎたくないだけで兄上が継がなくても家は維持できます。我が国は長男が継がなければならない決まりもないですよね? 父上は兄上に継がせたいかもしれませんが幸い私は家を継ぐ覚悟があります。
父上が認めてくだされば精一杯、家のために努力しますので兄上を許していただけませんか?」

「テオ…、ありがとう。あれからよく考えてくれたんだな。無理はしてないか? 俺のためだったらやめてくれ。お前だって自分の考えがあるだろう?」

「兄上、無理はしていません。それに兄上のためでもありません。私が考えた結果ですから心配しないでください。兄上が騎士を目指したように私は領地経営を以前から考えていたのですから」

「ふん、まだテオに継がせるとは決めておらん。勝手に二人で話を進めても認めない。それでレオナード、お前はあの女とまだ一緒にいるつもりか?」

「はい、父上。私をいつまで待っていても別れることはないです。彼女と死に別れをしたとしても他の女性とは結婚しません。ですから父上が何か策略をしても自分の意志は変わりませんので意味がないですよ。どうしても父上がリオナを認めずに家名に傷が付くと言うのであれば、仕方がありませんので私は貴族籍から抜けます」

「待ってください! 私が父上に家を継がせてもらえるように努力しますので兄上は私の兄でいてください」

「ありがとう、テオ。でも自分の意志ばかり相手に受け入れてもらうつもりはない。籍が抜けて貴族でなくなってもお前は私の弟には変わりがないし書類上のことで済む」

「愚かだな、レオナード。あの女に上手く篭絡されてしまい育ててやっても駒にもならないから勝手にしろ。お前のような息子がいたらブルーベル家にとって迷惑だ。レオナードという息子はいないということにするだけだ」

「はい、承知しました。育てていただいたことには感謝します。こうして生きてきたおかげで彼女と出会えましたから。私のことは何とでも仰ってください。しかし、彼女のことをよく知らないのに悪く言うことは許せませんので口を慎んでいただきたい。籍を抜ける手続きについては後日連絡しますのでよろしくお願いします」

「不愉快だ、早く出て行け!」

「それでは失礼します。ご息災でお過ごしください」

こうして父との話し合いは終わった。もうこれで二度と会うこともないだろう。子供を駒扱いの父には落胆し、もしリオナとの子供ができたら大切に育てていこうと思った。


俺は帰宅してリオナに一部始終を話した。

「貴族をやめて平民になるが良いか? 駄目だと言っても離さないがな。騎士団は続けるから金には困らない。リオナが心配することは一つもないから安心しろ」

「レオナードさんは自分で決めたの? 誰かのためなら駄目よ」

「そうだよ、自分で決めた。父とはもう少し分かり合えると良いのだが、父は家名に傷が付くことは父自身許せないことなんだ。お互い意志は曲げられないから中間の解決をした。テオが家を継ぐことを決意したから大丈夫だろう」

「テオドールさんも家を継ぐのは自分で決めたの? レオナードさんのためではない?」

「テオも俺のことは考えずに自分で決めたと言っていた。この前テオが家に来たときにも話をしてあったから」

「それならいいけど。私にとってレオナードさんが貴族でも平民でも変わらないわ。レオナードさんも私が平民でも孤児でも変わらないでしょ? それと同じよ。私も働いてるしお金は普通に暮らせればいい。贅沢をしたいとも思わないわ」

「そう言うと思った。俺はリオナと共に暮らせればいい。リオナ、愛してる」

「私も愛してるわ。これからもよろしくお願いします」


翌朝、俺は騎士団に着くと心配をしてくれていたジルベルトにも一部始終を伝えることにする。

「ジル、昨日父に会ってきた。父を納得させることはできなかったが話し合いは終わったよ」

「ん? それはどういうこと? まだ解決してないの?」

「解決というか…、俺が籍を抜けてテオが継ぐことになりそうだ。父はリオナを認めないし俺は駒にならないから縁を切ることになった。テオは自分が継ぐことを父に話したからそのうちテオに継がせるだろう」

「えっ? レオ平民になるの? うわぁ、後悔しない? まぁ、テオは立派な当主になりそうだけど」

「後悔? 少しもないぞ。なんだ、ジル。平民の俺が団長だと不満でもあるのか?」

「そうではないよ。まぁ、上層部のお偉いさん方も今までの実績があるから何も言ってこないと思うけどな」

「俺は普通に団員になっても構わない。団長なんて面倒なだけだしな」

「そんな体の大きくて厳つい顔の殺気が溢れてる団員は遠慮しておくよ。叔父さん、このまま引き下がればいいけどな」

父は決して納得はしていない。これ以上、無謀な行動はしないようにと願った…。
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