日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

文字の大きさ
15 / 486
第一章:素敵な出会い、それは狂った妖刀でした

014:伯爵家の令嬢、その名は……

しおりを挟む
 必殺の『奥義・太刀魚』でプをほふった流は、流石に疲労困憊でその場に崩れ落ちる。
 両手は熱を帯び、しばらく使い物になりそうも無かった。

 首すら動かすのも億劫だったが、斬り落としたプの首が、もしかしたら生えて来るかもと思い、観察眼と気配察知で確認するが生体反応は無く、弱点も表示されない。
 やがて話す位は体力が戻り一安心した流は、今だ呆然としているクッコロさんに話しかける。

「やぁ、騎士様。無事で何よりだったよ」

 さっきまでは緊迫していたので容姿を見るのが適当だったが、女騎士を改めて見ると年齢は流とそう変わらないように見える。
 正に容姿端麗と言った感じで、太陽に照らされたまるで黄金のような綺麗な金髪をハーフアップにまとめ、その髪を引き立たせる様な青い瞳で、とても美しい白い肌の娘だった。
 
 状況が良く分かってない女騎士は放心していたが、死体となったプを見ると、自分は助かったのだと理解する。

「あ、ありがとう。まさかあの姿勢からどうやったか分からないけど、ゴブリン酋長を倒すなんて……」

 やっと実感が湧いたのか、女騎士は次第にテンションが上がって来る。

「ううん、凄いなんてものじゃないわ!! 一人でこの集落を殲滅したんでしょ!? とんでもない偉業よ! ゴブリンくらいだったら、それなりの使い手が数人も居たら殲滅出来たでしょうけど、酋長よ! あの酋長が居たのよ!! 酋滅級は間違いないわ! いえ、一人で倒したんだから、酋滅級++は確実よ!!」

 言っている意味が良く分からないが、クッコロさんは大興奮で流へ拳を強く握りアピールする。

「そ、そうか。良く分からんが良かったな?」
「何を言っているのよ! あなたの事よ! あのままなら大規模な拠点を作られてもおかしくなかったのよ? それにあなたは何処の町の冒険者なの? どう、ウチの家に雇われない? 絶対後悔させないわ!」
「その前にお前は何処のどいつ様なんですかね?」
「失礼な物言いね、まぁ命の恩人だし許してあげるわ。私はクコロー伯爵家の次女、セリアよ!」

 そう騎士の娘セリアは言うと、腰に両手を当てて胸を張る。

「マジでクッコロさんかよ。異世界テンプレもここまで来ると驚かねーぞ……って言うか、クコローが名前じゃないのか? 俺が知っている貴族の常識では、クコローが『名』で、セリアが『姓』なんだが?」
「え、そうなの? この国や周辺国では苗字が先になって、名前は後になるのが普通ね」
「異界言語理解の悪意を感じるぞ……」

 疲労困憊の流は今のが精一杯のツッコミだったが、セリアはどこ吹く風だった。

「俺は古廻流って言うんだ、古廻が性で流が名前な。流って呼んでくれ」
「コマワリ・ナガレ? 性があるって事は貴族か、町や村の長かしら?」
「いや、俺は異世界から……と言うか、違う国から来た骨董品をこよなく愛でるただの庶民さ」
「イセカイ? 聞いた事が無い国ね。それに庶民はこんな事出来ないわよ、まあいいわ。これからよろしくね、ナガレ! 私の事はセリアって呼んでね」

 セリアはそう言うと、大輪の花が咲いたかのような笑顔で微笑んでいた。

 普通の男なら目を奪われ、そして一目惚れするのは確実な程に、可憐で品のある笑顔だったが……。
 しかし流は骨董しか興味が無く、その魅力が分からない心底残念な漢であった。

「それより何でお前はこんな所に居たんだ? 俺がここに来たのもお前が連れ去られてるのを見たからなんだが」
「お前じゃなくてセ・リ・ア」
「あ、ああ。すまないセリア。それで?」

 するとセリアの表情が夜に萎む花のように消沈する。

「私を見つけてくれて……そうだったのね、重ねてお礼を言うわ。もしあなたが来てくれなかったら、私はあの獣どもの苗床として、壊れるまで奴らの子供を産んでいたでしょうね。そして最後は……」

 セリアは焚火の方に落ちている、人の一部だった物を一瞥する。

「なるほどな、そこもテンプレって訳か。異世界やばすぎだろう。でもセリアは一人でこんな所で何をしてたんだ?」

「一人じゃなかったわ。護衛の騎士五名と一緒に、ここの付近まで探索に来たのよ。この辺りで最近若い女ばかり連れ去られ、男は惨殺されているって聞いてね。その犯人はすぐに検討が付いたわ。でもゴブリンの集落が見つからず、仕方なく一時撤退しようとしたら、ゴブリンドッグ三匹とリーダー含むゴブリン五体。さらに酋長にまでに襲われたの。ドッグは二匹倒したけど、あっという間に護衛達が倒されてね……私一人が生き残ったの」

 流はその話を聞いて驚く、まさかゴブリンだったとは思わず、しかも犬はゴブリンドックと言うらしい。
 そう言えばあの犬の顔は、どちらかと言えば人に近い人面犬のようだったと思い出し、気持ち悪さがこみあげて来る。

「それは災難だったな……まぁ、俺としてはセリア一人でも助ける事が出来て良かったよ」
「ありがとう、本当に感謝しているわ。まさかこんな浅い場所に酋長がいるなんて思ってもみなかったから」

 プとの闘いの後を見回しながら、辺りを見るうちに流は思い出す。

「そう言えば小屋の中に居る人の気配はまだあるようだが、中の人達は無事なのか?」
「ええ、一応は無事ね。奇跡的にあなたが来てくれたから、まだ犯された感じはしないし、多分連れてこられたばかりじゃないかしら? 前の苗床だった人は……食べられた直後みたいだしね」
「なんとも胸糞が悪い話だな。緑の小人……いや、ゴブリンは見つけ次第殲滅確定だな」
「ええ、そうして貰えると助かるわ。アイツ等は――女の怨敵よ!!」
 
 セリアは怒りを目に宿したまま、ゴブリンが食べ残した誰かの左手をそっと持ち上げる。

「貴女達の無念はナガレが晴らしてくれたよ。だから安心して旅立ってね……」

 セリアはそう言うと焚火の中へ残った手を放り込み、傍にあった薪を沢山くべて犠牲者に黙祷する。
 流もセリアの背後から娘だったであろう左手が、積み上げられる薪で見えなくなるまで見つめ、その後無事に天へ行けるように方合掌をし黙祷を捧げた。

「セリアはこれからどうするんだ? 俺はしばらく動けそうもないからここに居る」
「私は多分隣の小屋に武器もあるし、ここから少し離れた場所に馬も居るから町まで行って応援を呼んで来るわ。そう言えばゴブリンは全部で何匹倒したの?」
「えっと、初めに二匹とゴブドッグが一匹。それにここに来て、プを含めて十一匹だから合計十四匹かな」
「本当に凄いわね……あらためて聞いても冗談にしか思えないわ」

 流はそんなものかと首をひねる、確かに中ボスとプは別格だったが、ゴブリンは雑魚だったのだから。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

無能認定され王宮から追放された俺、実は竜の言葉が話せたのでSSS級最凶竜種に懐かれ、気がついたら【竜人王】になってました。

霞杏檎
ファンタジー
田舎の村から上京して王宮兵士となって1年半…… まだまだ新人だったレイクは自身がスキルもろくに発動できない『無能力者』だと周りから虐げられる日々を送っていた。 そんなある日、『スキルが発動しない無能はこの王宮から出て行け』と自身が働いていたイブニクル王国の王宮から解雇・追放されてしまった。 そして挙げ句の果てには、道中の森でゴブリンに襲われる程の不遇様。 だが、レイクの不運はまだ続く……なんと世界を破壊する力を持つ最強の竜種"破滅古竜"と出会ってしまったのである!! しかし、絶体絶命の状況下で不意に出た言葉がレイクの運命を大きく変えた。 ーーそれは《竜族語》 レイクが竜族語を話せると知った破滅古竜はレイクと友達になりたいと諭され、友達の印としてレイクに自身の持つ魔力とスキルを与える代わりにレイクの心臓を奪ってしまう。 こうしてレイクは"ヴィルヘリア"と名乗り美少女の姿へと変えた破滅古竜の眷属となったが、与えられた膨大なスキルの量に力を使いこなせずにいた。 それを見たヴィルヘリアは格好がつかないと自身が師匠代わりとなり、旅をしながらレイクを鍛え上げること決める。 一方で、破滅古竜の悪知恵に引っかかったイブニクル王国では国存続の危機が迫り始めていた…… これは"無能"と虐げられた主人公レイクと最強竜種ヴィルヘリアの師弟コンビによる竜種を統べ、レイクが『竜人王』になるまでを描いた物語である。 ※30話程で完結します。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...