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第二章:偉大なる称号
029:もぅ、怒ったゾ~
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「小さなバッグですね。それでこれは?」
「ふふふ。見た目はこんなんだがな……見てろ」
バーツはそう言うと、近くの棚から彫像と、本、それと長さ五十センチ程のスクロールを持ってくる。
それを目の前の小さなバッグへと入れる。
「へ!? 手品か何かですか? 凄いですね!」
「はっはっは。違う違う。これはアイテムバッグと言ってな、商人なら垂涎物の一品だ。容量はこのサイズで大体三十キロ入る。入る大きさは縦横二メートル四方が限界だ」
「そ、それは凄いですね!? (出たよ! アイテムバッグ!!)」
「今の時価で大体竜貨一枚くらいだな」
「……えっと、竜貨は確か一千ま……ん? えええ!? そんなに高価な物なんですかそれ!?」
「そうだ、そしてなかなか売りに出されない物だ。だから俺のグラスへの返礼も込めて、保証の一部にそれも付ける。ちなみにそれ以上になるとアイテムボックスと言って、王貨クラスの取引になるな」
突然のアイテムバッグの登場に小躍りしたい流だったが、今は商人モードのロール中なので冷静に返答する。
「そう言う物ですか、ではそれでお願いします。しかし凄い品ですね、感謝しますギルドマスター」
「喜んでくれてなによりだ。時に、ナガレはギルドの登録はしたのか?」
「まだでしたね、そう言えば」
ふむ、と一言頷くとバーツはデスクに行き一筆書いて来た。
「これをメリサに見せて登録してくれ。仕事は出来すぎるんだが、接客態度が評判悪くてな。少々懲らしめてやってくれ。あの澄まし顔がどのように変わるか楽しみだわ」
そう言うとバーツは快活に笑い、流にメリサの情報をそっと耳打ちしてきた。
「さて、これらの品を早速オークショニア達と相談せねばなるまい! ムハハ、楽しくなって来たわ! そういう訳で二人ともまた来てくれ」
そう言うとバーツは流が出した荷物を大事に木箱へ入れだしたので、二人は退出し一階の受付へと向かう。
一階ではメリサが客の接待をしていたが、流達を確認すると同僚にその仕事を任せ、奥のカウンターへと二人を招いた。
「随分とお話が弾んだのですね。流さん、では早速ギルドへ登録しますか?」
何故か嫌みな感じで言われたので、流は少しムっとする。
「ああ頼むよ。あ、その前にギルドへ登録すると、どうなるか教えてくれないか?」
「それは無論です。まず、ギルドランクからご説明しましょう。ランクは全部で五種類あります。まず流さんは一番下の露天級から初めていただきます」
「露天級?」
「はい、売上の十五パーセントをギルドに納めていただきます」
「十五パーセント!? なかなか酷くないか?」
「えぇ……大抵の方はそう言われますね。しかし手厚い保護が同時にギルドから約束されます、例えば――」
機械のような返答をするメリサの話は、ギルドに加入した場合はマフィアやチンピラからの保護は無論、領主や国への税の申告も行ってくれるし、商売をする場所の確保も世話してくれるそうだ。
逆に加入しないと、それらのリスクを全て背負はめになり、更に税の申告面ではネットも交通手段もまともに無いこの世界では、それだけで商売どころじゃなくなるらしい。
因みにギルドは通信の魔具があるので、税の申告も楽なんだとか……ずるい。
「そんな訳で上位のランクになるほど納める額は少なくなりますが、国が経済的にマイナスに傾く、例えば物価が安いのに物が売れなくなった時に、上位ランク者達はその財貨を放出し、市場を活性化させる義務が発生します。さらに『ナガレさんのような』下位のランクの方々への支援も積極的に行っています」
(この娘はいちいち煽るスタイルか? それはさておき……むぅ、加入した方が今の所はいいかもしれないな)
「それとランクは上から順に『商売神』『大店級』『領都級』『地域級』『露天級』の五つです。まず現実的な所から露天級の所だけ説明しますと、名前の通り町や村での小規模な商業地区での商売が主ですね」
「なるほど、ランクはどうやったら上がるんだ?」
「聞いてもまだ早いと思いますが……そうですね、一定のギルドへの貢献度が上がれば上がります」
それを聞いていたファンはメリサの後ろで面白そうに笑っている。ファンの目線を追うと、何故かバーツが柱の陰から楽し気に覗いていた。
「つまり上納金を上げろと?」
「身も蓋もない言い方をすればそうなりますね。因みに『ギルド支援金』と言いますので覚えておいてください。ランクが上がればギルドから様々な便宜が優先的に受けられます」
「俺はそんな高い上納金は困るんだが?」
「支援金です! そうは仰られても規則ですから」
そう冷たく言うと、メリサは魔鏡眼を右手の中指でクイっと上げた。
「どうしてもダメ?」
「ダメです」
「冷たいね、そんな凍てつく対応じゃお客に嫌われるぞ?」
「ッ……。余計なお世話ですし、嫌われていません。よね……」
「そんなにツンケンしてると彼氏に逃げられるぞ? ほら、小じわも出来ちゃうかもよ? 遠い異国から来た可哀そうな商売人を助けてよママン」
「子じわ!? って、誰が貴方のママなんですか!! 私はまだ二十年間一度も彼氏居ないんですよ!!」
煽る流の「彼氏」と言うワードが琴線に触れたのか、メリサは声を荒げた事でギルド中の視線がメリサに集まる。
「ウソ! メリサちゃん彼氏居ないの!?」
「マジかよ、って事はしょ……」
「流石俺の冷血アイドル! あの冷血な眼差しで射殺されたい!」
「あんなに仕事出来るのに、残念すぎる……」
一部変な事を言っているサポーター(?)を気にもせず、メリサは慌てて手をブンブン振って否定する。
「い、い、今のは言い間違いですから! 気にしないでください! ほら貴女達も仕事へ戻って!」
同僚達にもメリサへ哀れみの視線を向けけられ、混乱しながら威厳を保とうと必死に言い訳をする。
「もう! ナガレさん、貴方が変な事を言うから!!」
メリサ、涙目で激オコである。
「とにかく、もう、話は以上です! では!」
「っと、待ちな姉ちゃん。帰る前にこれを見てくんな」
流はバーツからもらった用紙を机の上をツイッと滑らせてメリサに渡すのだった。
「ふふふ。見た目はこんなんだがな……見てろ」
バーツはそう言うと、近くの棚から彫像と、本、それと長さ五十センチ程のスクロールを持ってくる。
それを目の前の小さなバッグへと入れる。
「へ!? 手品か何かですか? 凄いですね!」
「はっはっは。違う違う。これはアイテムバッグと言ってな、商人なら垂涎物の一品だ。容量はこのサイズで大体三十キロ入る。入る大きさは縦横二メートル四方が限界だ」
「そ、それは凄いですね!? (出たよ! アイテムバッグ!!)」
「今の時価で大体竜貨一枚くらいだな」
「……えっと、竜貨は確か一千ま……ん? えええ!? そんなに高価な物なんですかそれ!?」
「そうだ、そしてなかなか売りに出されない物だ。だから俺のグラスへの返礼も込めて、保証の一部にそれも付ける。ちなみにそれ以上になるとアイテムボックスと言って、王貨クラスの取引になるな」
突然のアイテムバッグの登場に小躍りしたい流だったが、今は商人モードのロール中なので冷静に返答する。
「そう言う物ですか、ではそれでお願いします。しかし凄い品ですね、感謝しますギルドマスター」
「喜んでくれてなによりだ。時に、ナガレはギルドの登録はしたのか?」
「まだでしたね、そう言えば」
ふむ、と一言頷くとバーツはデスクに行き一筆書いて来た。
「これをメリサに見せて登録してくれ。仕事は出来すぎるんだが、接客態度が評判悪くてな。少々懲らしめてやってくれ。あの澄まし顔がどのように変わるか楽しみだわ」
そう言うとバーツは快活に笑い、流にメリサの情報をそっと耳打ちしてきた。
「さて、これらの品を早速オークショニア達と相談せねばなるまい! ムハハ、楽しくなって来たわ! そういう訳で二人ともまた来てくれ」
そう言うとバーツは流が出した荷物を大事に木箱へ入れだしたので、二人は退出し一階の受付へと向かう。
一階ではメリサが客の接待をしていたが、流達を確認すると同僚にその仕事を任せ、奥のカウンターへと二人を招いた。
「随分とお話が弾んだのですね。流さん、では早速ギルドへ登録しますか?」
何故か嫌みな感じで言われたので、流は少しムっとする。
「ああ頼むよ。あ、その前にギルドへ登録すると、どうなるか教えてくれないか?」
「それは無論です。まず、ギルドランクからご説明しましょう。ランクは全部で五種類あります。まず流さんは一番下の露天級から初めていただきます」
「露天級?」
「はい、売上の十五パーセントをギルドに納めていただきます」
「十五パーセント!? なかなか酷くないか?」
「えぇ……大抵の方はそう言われますね。しかし手厚い保護が同時にギルドから約束されます、例えば――」
機械のような返答をするメリサの話は、ギルドに加入した場合はマフィアやチンピラからの保護は無論、領主や国への税の申告も行ってくれるし、商売をする場所の確保も世話してくれるそうだ。
逆に加入しないと、それらのリスクを全て背負はめになり、更に税の申告面ではネットも交通手段もまともに無いこの世界では、それだけで商売どころじゃなくなるらしい。
因みにギルドは通信の魔具があるので、税の申告も楽なんだとか……ずるい。
「そんな訳で上位のランクになるほど納める額は少なくなりますが、国が経済的にマイナスに傾く、例えば物価が安いのに物が売れなくなった時に、上位ランク者達はその財貨を放出し、市場を活性化させる義務が発生します。さらに『ナガレさんのような』下位のランクの方々への支援も積極的に行っています」
(この娘はいちいち煽るスタイルか? それはさておき……むぅ、加入した方が今の所はいいかもしれないな)
「それとランクは上から順に『商売神』『大店級』『領都級』『地域級』『露天級』の五つです。まず現実的な所から露天級の所だけ説明しますと、名前の通り町や村での小規模な商業地区での商売が主ですね」
「なるほど、ランクはどうやったら上がるんだ?」
「聞いてもまだ早いと思いますが……そうですね、一定のギルドへの貢献度が上がれば上がります」
それを聞いていたファンはメリサの後ろで面白そうに笑っている。ファンの目線を追うと、何故かバーツが柱の陰から楽し気に覗いていた。
「つまり上納金を上げろと?」
「身も蓋もない言い方をすればそうなりますね。因みに『ギルド支援金』と言いますので覚えておいてください。ランクが上がればギルドから様々な便宜が優先的に受けられます」
「俺はそんな高い上納金は困るんだが?」
「支援金です! そうは仰られても規則ですから」
そう冷たく言うと、メリサは魔鏡眼を右手の中指でクイっと上げた。
「どうしてもダメ?」
「ダメです」
「冷たいね、そんな凍てつく対応じゃお客に嫌われるぞ?」
「ッ……。余計なお世話ですし、嫌われていません。よね……」
「そんなにツンケンしてると彼氏に逃げられるぞ? ほら、小じわも出来ちゃうかもよ? 遠い異国から来た可哀そうな商売人を助けてよママン」
「子じわ!? って、誰が貴方のママなんですか!! 私はまだ二十年間一度も彼氏居ないんですよ!!」
煽る流の「彼氏」と言うワードが琴線に触れたのか、メリサは声を荒げた事でギルド中の視線がメリサに集まる。
「ウソ! メリサちゃん彼氏居ないの!?」
「マジかよ、って事はしょ……」
「流石俺の冷血アイドル! あの冷血な眼差しで射殺されたい!」
「あんなに仕事出来るのに、残念すぎる……」
一部変な事を言っているサポーター(?)を気にもせず、メリサは慌てて手をブンブン振って否定する。
「い、い、今のは言い間違いですから! 気にしないでください! ほら貴女達も仕事へ戻って!」
同僚達にもメリサへ哀れみの視線を向けけられ、混乱しながら威厳を保とうと必死に言い訳をする。
「もう! ナガレさん、貴方が変な事を言うから!!」
メリサ、涙目で激オコである。
「とにかく、もう、話は以上です! では!」
「っと、待ちな姉ちゃん。帰る前にこれを見てくんな」
流はバーツからもらった用紙を机の上をツイッと滑らせてメリサに渡すのだった。
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