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第二章:偉大なる称号

057:祭りは終わらない

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「……一体、何が始まるんです? まあ聞かなくても分かるけどな……」

 ギルドの正面ホール兼、大酒場は変貌を遂げていた。

 武骨な木のテーブルは白いクロスに覆われており、色取り取りの酒や飲料水。そしてとても大きな漫画肉と呼ばれる肉の塊や、テーブル程もある魚の姿焼き、見たことも無いフルーツの盛り合わせ等々、食材が次々に外の屋台からも、ギルドの厨房からも運ばれ続けていた。

 更に中央には何故か豪華なステージが作られていた。
 
 そのステージの中央にはいつも入口に居る「誘ってるバニーの人形」が安置され、その手にはやっ付けた感じが漂う「巨滅兵討伐おめでとう」と書いてあるプラカードを持っていたのを見て、流は心が温かくなった。

「くそ、不覚にも目がしらに汗が……お前らはなんて良い奴らな……ん?」

 ふと、バニーの足元を見ると、「よっしゃ!! 巨滅兵には敵わない! 俺達大勝利!」と言うプラカードが転がっていたのを見つけ、流はハイライトが消えた遠い目をするのだった。

「さ、ボーイ。ステージの上へ行くわよん!」
「え~やっぱりそのためのかよ~」
「祭りの主役としての義務だぞ、行って来いナガレ!」

 黒鎧の男、ヴァルファルドは流の背中を景気よく押し出す。

「ヴァルファルドさんまでかよ、はぁ~。行ってきますよ~」

 そう言うと流は嫌々ながらもステージに上る。
 するとミャレリナも上って来て、拡声の魔具でギルド内に声を響かせる。

「只今より、巨滅の英雄の巨滅級討伐成功の報償と、称号の授与式を行いますニャ。参加希望の方は先着順でギルドホールへおいで下さいニャ!」

 そうミャレリナが告知すると、あっと言う間に会場は埋まってしまう。
 流も所定の位置で待つように言われ、現実感も無いままに、ボ~っと立ち尽くす。

「おい、ボーズ! ぼーっとしてんなよ? 巨滅の英雄なんだからよ」
「そうだぞ~巨滅の英雄とかカッコよすぎだろ」

 自然に言われていたので受け入れていたが、今更ながらその「巨滅の英雄」って何だ? と流は思う。

「おい、あんたら。その巨滅の英雄って何だ?」
「なんだよ、そんな事も知らないのか? そりゃお前の称号だよ。巨滅級の単独討伐が出来る、スゲー奴が名乗る事が出来る勲章って訳だな」
「そ、そうなのか。で、もし失敗してたら?」

 男達はニヤリと笑いながら「そりゃおめぇ~」と続ける。

「当然英雄にはなれねーわな。だが『勇者』にはなれるぜ? サブマスが言ってたろう? 蛮勇・・者ってな!!」

 そう言うと男たちは大笑いする。

「あんのクソサブマスめ~。俺が初めからそうなる事を期待してたのが良く分かったわ!」 

 サブマスが残念な奴だと改めて実感出来た頃、ミャレリナが準備が整ったと流に報告する。
 そしてステージに設置された魔具のマイクで、会場に報奨会の始まりを告知する。

「じゃあ皆さ~ん。パパッと終えて大宴会を始めるニャ! ではナガレ様、まずはこちらをどうぞ。まずは討伐報酬の金貨二百枚ですニャ!」
「俺はついで扱いかよ! って……え!? ニヒャ、二百枚?? そんなに貰えるのか!?」

 職員が運んで来るサイドワゴンの上には、金貨が大量に乗ってた。
 それが室内の照明に照らされ、黄金に光輝いているのを見ると、ギルド内が驚嘆の声で覆われる。

「はいニャ。今回の討伐クエストはジェニファーちゃんからの依頼ですが、それをギルドが正式な依頼として発行しましたニャ」
「そうだったのか、ただの実力テストって話だったのに」
「あはは……そこは申し訳なく思っていますニャ。そして今回のクエストは公開討伐としたので、その収益からの報酬でもありますニャ」
「オイ、俺で商売するな! まあいいか、楽しかったし」

 それを聞いていたギャラリーが呆れる。

「おい、聞いたか? 楽しかったらしいぞ」
「見ているこっちは楽しかったのは分かるけどな、俺はあそこに立っただけで失神しそうだわ」
「同感ね、私ならあの歓声だけで足がすくむわ、きっとね」
「正気の沙汰じゃねーよ、狂人か?」

 等々、口々に呆れている。

「そこのお前、狂人って言うな! ったく失礼な奴らだな! まったく。じゃあ、ありがたく貰っとく!」
「それとこれをどーぞ」

 ミャレリナは箱からギルドカードと、金属で出来ているようだが、肌触りが良く柔らかな腕章を流に渡す。

「これは『巨滅級++』のエンブレムが刻まれている腕章ですニャ。防御力と攻撃力があがる魔具でもあるので、常に身に着けておく事をオススメしますニャ」
「それは凄いな!! 綺麗だし軽いのが気に入った」
「喜んでいただけで良かったですニャ~。ではこれで授与式は終了となります! それじゃ~……みんなお待ちかねの大宴会がはっじまるニャ~♪ 今宵は久しぶりの公開討伐成功記念!! ぶっ倒れるまで楽しんでニャ!!」

 そう言うが早いか、会場は乾杯の声とナガレへの恨み言で埋め尽くされるのであった。

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