日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第二章:偉大なる称号

059:精神の極限状態~SAN

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「そろそろ俺達も落ち着こうじゃないか?」
「そうねん、じゃあミーのお店へ行きましょうか」
「ジェニファーちゃんのお店? 何かやってるのか?」
「フフフ、このギルドの大酒場の一つを経営してるのよん。ほら、あっちに大きくて素敵な像が見えるでしょ?」

 今まで気が付かなかったが、入口より右側にある大きなバーカウンターがある店の中央上部に、キレッキレのサイド・チェストをキメたジェニファー像があり、それは見る者のSAN値をゴッソリと削る禍々まがまがしさを放っていた。

「……あれは邪神像か何かなのか? 俺の精神力が見ただけで消耗してるんだが」
「……奇遇だな、ナガレと同じ事を考えてたところだ。そして俺は正気を保っていられるかが心配だ」
「もぅ! 二人とも冗談ばっかりなんだからん♪ さあさ、行くわよん」

 移動中に何度も観客達に陽気に絡まれたり、揉みくちゃにされながら、三人はジェニファーの店へ辿り着く。そこには「BAR★ハッティン」と書かれた看板があった。

「……異界言語理解がまたぶっ壊れたのか? いや、ある意味正しいのか? オーナーがアレだけに……しかしこっちの言葉で本当は何て書いてあるんだこれ」

 ジェニファーの店は、邪神像とおかしな看板以外は結構まともだった。
 いや、趣味がとても良い店だった。

 天井から伸びる照明の魔具は淡い紫色の光を放ち、間接照明は暖色系の色で統一されている。
 カウンターはピンクアイボリー材のような光沢処理をされた、見る者を魅了する妖艶ようえんつややかな色合いだった。
 その木材は滑らかな象牙のような質感と、染め上げたものでは無い素材自体が淡いピンク色を放つ上品な仕上がりが一般冒険者には相応しくない、品のある雰囲気を醸し出す。

 さらに椅子は何かの動物の皮を柔らかく鞣した、高級感のある仕上がりとなっており、調度品も上品な物で統一されていて嫌みなく置かれていた。
 そしてバーの真骨頂とも言える棚には、色取り取りの銘酒が花を添える。
 流石の流も、この趣味の良さには呆然と眺めながらも、この場所を気に入る。

「アハン♪ どうかしらん? ミーのお店、洒落込むには自信があってよん?」
「精神トラップで巨滅兵より命の危機を感じたが、これは趣味の良い店だな!」
「ああ、全くだな。俺もジェニファーの店に来たのは初めてだが、とても趣味が良い」
「確かに素晴らしい。このカウンターの素材は特にいいな! 職人の強いこだわりを感じる鏡面仕上げだ。そして調度品の趣味も良い!」
「ああ、これなら俺も常連になれそうだ。酒の種類も豊富だな、王都でも中々お目にかかれない品ぞろえだ」
「んまあ! ありがとう♪ 今日は楽しんでいってねん。このカウンターを使ってくれる冒険者が少ないのよ。みんなお酒やおつまみを注文したら、あっちの席へ行く子が多くてねん」

((そりゃあそうだろう。何せ高級感ありすぎだし、何より頭上の化け物が精神攻撃してくるしな))

 そう二人の漢が心の中でシンクロするが、ジェニファーが寂しそうな表情をしているのでフォローする。

「ま、まあ俺達が常連になるから気を落とすな。そうだろう、ナガレ?」
「え!? そうだな。うん、ここならいい感じだな」

 店員もギルドの酒場には相応しくない、品のある対応をしていてとても好感が持てる。
 ギャップが激しいが、本当に良い店のようだった。

 ただ…………。

((店主がジェニファーじゃなかったら、最高なんだがな!!))

「何か失礼な気配を感じるけれど、まあいいわん。奥の特別席へ行きましょう」

 そう言うとジェニファーは店員にツマミと飲み物の指示を出し、自分もソファーのひとつに腰を落とす。
 程なくして店員がテーブルに注文した品を置いていく。

「じゃあ、あらためてボーイの巨滅級討伐を祝してかんぱ~い♪」
「よく生き残った、おめでとう!」
「二人ともありがとな!!」

 白色の陶器製の器には葡萄酒が注がれており、それで乾杯する。

「ぬぉ!? これは……また濃厚でビロードのような味わい深い葡萄酒だな」
「うぬぅッ!! ジェニファー、お前とんでもない代物を開けたな?」
「アハン♪ ミーの秘蔵の一本よん。今日開けるには相応しいでしょう?」
「良かったのか? こんな凄い物を俺のために……」
「当たり前じゃな~い。ボーイはそれだけの事をしたんだからねん」

 ジェニファーに感謝しつつ杯を重ねる三人だったが、話の流から当然今日の戦いの内容になる。

「そう言えばボーイ、一番気になったのはやっぱりアレね。最後に巨滅兵に貫かれたわよねん? あれはどうして助かったのかしら?」
「ああ~それはな、これだよ」

 流は腰にある黒皮のアイテムバッグから一本の試験管を出す。

「それは何だ?」
「まぁ……そうだな。ウサギさんの加護かな?」
「まあ! ボーイは存外ロマンチストなのねん」
「違うって、本当にそうなんだ。俺の故郷に居る神様の一柱なんだよ。で、そのウサギさんが作ってくれた秘薬なんだよ」

 そう言うと流は小刻みに試験管を振って見せる、すると炭酸飲料水で見られる微細な泡が激しく動き出し、見ていた二人は食い入るように見つめた。

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