日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第三章:滅ぼす者と、領域者との出会い

084:破格の報酬

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 メリサと流は三階のバーツの部屋の前まで来ると、メリサはドアをノックする。
 すると中から何かをしていたのか、ついでに返事をした感じの声が聞こえた。

「はいよ~入ってくれ~」

 バーツはそう言うと来客を迎えるために、書類整理を止めて顔を上げる。

「ナガレ様をお連れしました。昨日の件ですが……」
「やっぱりダメだったか? まあ、仕方ないわな~。そこは異常だって話だし」
「いえ、そうじゃなく実はクエストを完了したとの事です」
「だろう? まあ気にするな……って、え!? ほ、本当なのか?」

 バーツが焦るので二人は部屋に入って説明をする。

「本当に討伐したのか……信じられん……ゴーストが何百体もいるって聞いたぞ?」
「ああ、それ以上にいた気がしますが、数を数える事は不可能な程いましてね。途中からただ殲滅だけに、意識を集中していましたので」
「それは凄いな! それで地下の精神攻撃をしてくると言う奴も倒したのか?」
「ええ、それも何とか倒しましたね。色々ギリギリでしたが、無事にクリアできましたよ」
「ふむぅ。もうそこまで……」

 思わずバーツは独り言つ

「え? 何です?」
「ああ、いやいや。それじゃ報酬を払わにゃいかんな」

 そう言うとバーツは仕事机に向かって行くと、棚から一枚の羊皮紙を持って来る。

「ナガレ、これが今回の報酬だ。受け取ってくれ」
「…………は?」

 見るとそこには「お屋敷街の幽霊屋敷を、コマワリナガレ氏に報酬として譲渡する事を確約する」と、簡単に書かれた書類に、バーツの名前とギルドの証が刻まれていた。

「ええっと……これは?」
「ん? 見たままだが?」
「えええええー ただでくれるの!?」
「まぁそう言う事になるかな。ワハハハハ」

 そう言うとバーツは、実に楽しそうに笑うのだった。

「いやいや、あの規模の屋敷をただってあんた……」
「いや実はな。どうせあのまま幽霊屋敷があっても、ウチとしても困ってたんだ。管理費用やら、解決したとは言え短時間ならまだしも長時間になると、もしもの時の事を考えると、中に入るには冒険者の護衛費用とかかかるしな。しかも誰も買い手がつかないのは確定だったから、持ってるだけで大損の物件だったんだ。それに『いわく付き』だろ? 解決したからと言って住むほどに、豪胆な奴はお前くらいしかいないだろう。それらを解決した訳だから、お前にやるって話だよ」

 などと、いきなりとんでもない事を言いだすバーツに、流は開口したまま固まるのだった。
 その後簡単な譲渡の手続きが行われた後で、流がメリサと共に退室してからバーツは独り言つ。

「これでこの町にいる理由にはなってくれたか……少々強引だったが、結果的に良かったのかもな。それにこの後の依頼もあるしな」

 そうつぶやくと、バーツはまた書類の山へと埋もれるのだった。

◇◇◇

「いや流石に俺も驚いたよ、まさか報酬があの屋敷自体とはな……」
「ええ、私も驚きました。破格すぎますよね、本当に……」

 そう会話しながら冒険者ギルドへと向かう流は、メリサと共に予約しておいたラーマンの背中に揺られながら乗っていた。

「ラーマンいいよな~。見た目はカピバラみたいだけど、毛がゴワゴワしてないし、このしなやかさが猫っぽい。なにより言葉を理解してくれるのが良い」
「ですよね~ 私もよく使いますよ。丁度うちのギルドの近くがラーマンが良くいる公園なんですよね。いつも助かってます」

 ふと思う、カピバラって言葉は何て訳されているのだろうと。

「なあ、カピバラってどんなのか知っているのか?」
「え? 知っていますよ、今乗っているラーマンこの子の事ですよね?」
「ああそうなんだ……」

 改めて思う。コンニャクじゃないくせに、異界言語理解の万能さに驚く流であった。

 軽快な速度で町を歩くラーマンから見る町は、いつもより忙しそうに感じる。
 そんな事をメリサと話しながら冒険者ギルドへ到着すると、今日もバニーが誘っているのが見えた。

「あの人形は何でこう、誘ってる感じなんだろうな」
「何か、こう……アレですよね」
「品が無くて『アレ』でも良いんです! あれはウチの看板娘なんですから!!」

 突如声をかけられた二人は、声のする方に振り向く。
 するとそこには憤慨ふんがいしているエルシアの姿があった。

「エルシア!? いや、悪気がある訳じゃなかったんだが、スマン」
「え、いえ!? ナガレさんが悪い訳では無いんですよ。そこの商業ギルドの方が失礼なものでつい……」
「え!? 私ですか? いや、すみません。つい……」

 そう言うとメリサは流の腕の影に少し入って謝る。
 それが癪に障ったのか、エルシアはさらにヒートアップする。

「もう、何でナガレさんに隠れるんですか!? 二人でラーマンに乗ってるし」
「「え、怒るところそこ!?」」
「……ち、違います! ちょっと不純だなって思っただけですもん」

 するとメリサも一つ二つと言い返し、エルシアも負けじと応戦する。
 気が付くとギャラリーが出来ていた。そこへ眼帯のオヤジが、どっちが勝つかを胴元になって賭けを始めたようだ。

 この世界の住人は、賭け事が好きなんだなと思いながらも、自称「女性の機微にくわしい」流さんは、エルシアの心の動きを見事に看破かんぱするのだった。
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