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第五章:殺盗団を壊滅せよ
168:尻癖の悪い女
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静かに怒りを込める流に圧倒され、その場の誰も動けなかった。
しかしそれを打ち破る漢が一人、行動する。
流は美琴を手に、静かに手前の男の傍まで来ると、逆刃にした美琴でうち倒す。
さらにもう一人がうち倒された事で、殺盗団の残党達も現実に引きもどされる。
「おい! ボケっとしてんじゃあああネェ! 全員でかかれば何とかなる――」
「ワケねーだろ、馬鹿か?」
呆れた怒りを込めつつ振るった美琴で、また二人が|錐揉(きりも)み状に宙を舞う。
「クッソ!! お前ら時間を稼げ、バケモノを出す!!」
「アレハンドさん! でもあれはッ!?」
「今使わないで何時使うんだ!? いいからやれ!!」
「っく、はい」
「何だ、バケモノだと?」
そう流がつぶやきながらアレハンドを目で追う。
途中で椅子に躓きながらも、アレハンドは部屋の奥にある、大きな箱のような物にかけてあるシートを外す。
すると中は見ただけで分かる程に強固な檻となっており、その中には何か大きな生き物が蠢ていた。
「おら、出て来い! お前の今日の極上の餌は、あの黒髪の男だ! ほら行け!!」
アレハンドはそう言うと、檻の鍵を外し、自分は檻の影へと身を隠す。
すると檻の中から〝ヌルリ〟とした生き物が姿を現す。
それは全長は六メートル程あり、上半身が白い肌の若い娘で下半身が黒い蛇の魔物だった。
床から魔物が上半身を起こすように立ち上がると、体長が二メートル半程になり、顔が良く見えるようになる。
目は赤黒く濁り、口元には牙が見え、明らかに肉食的な顔つきの凶悪な魔物と一目で分かった。
「これはラミアって奴か? 異世界マジでファンタスティック! う~むぅ。鱗が美しい、そしてあの人と蛇の付け根がとても興味深い……あれはもしかして?」
『…………!』
「っと、悪い悪い美琴。思わず魅入ってしまった。ッ!? これは奴の魔の力か!!」
「壱:違うと思いまっせ。あ~来まっせ、ご注意を」
美琴と壱の非道なツッコミに心が寂しく感じる流であったが、蛇娘が襲って来た事でそれも霧散する。
そして意外な行動に蛇娘は出た事で、賊達は混乱する。
流へと真っ直ぐ向かって来ていた蛇娘は、突如方向を変えて曲刀のような剣を持った賊へと這いより襲いかかる。
「ば、馬鹿! 俺じゃねバババアアッ!?」
蛇娘は賊の一人を絞め殺す。そして賊が持っていた剣を拾うと、その手に剣を装備してニヤリと口角を上げながら話す。
「お前達、そこの男を、殺したら、次は、お前達、覚悟、しろ」
真っ青になる盗賊達は、背後に居るアレハンドに文句を言い始める。だがアレハンドは焦る様子もなく、逆に呆れたように手下たちへ言い放つ。
「アレハンドさん、どうするんですか!?」
「はん、どの道殺されるんだ。ならこの原因を作った、巨滅の英雄もろとも地獄へ落ちようじゃねーか」
「ック、馬鹿なぁ……」
「もうアンタには付いて行けねえ!」
そう言い捨てると、賊の一人は蛇娘の真横を通り過ぎて逃げる、が。
強烈な蛇の尻尾の一撃を受け、男は閂の付いた壁際の大きい搬入口を突き破り外へと放り出された。
「逃が、さない」
「ひぃぃ、こ、こっち見んなあああ」
「だから言ったろう、無駄だよ無駄。諦めろ」
恐怖に震える部下へ、アレハンドがまるで他人事のように、まるで馬鹿に諭すかの如く言い放つ。
そんな絶望が支配するこの空間において、流だけはこの後の展開を考える。
(この狭い空間であの尾は驚異だな。なら出口が開いたそこから出るか)
今ほど賊が飛ばされた大穴から、外へ出て勝負する事にする。だがそれにはいくつかの問題をクリアする必要があった。
「なぁ蛇娘ちゃん。俺を食べても美味しくないぞ?」
「……お前、強い。脅威、怖い」
「野生のカンってやつかい?」
「そうだ。お前、怖い、だから、死ね!」
「馬鹿だな。怖いからこそ、話し合いって言う方法があるって言うのになっと!」
襲いかかる蛇娘の斬撃を躱しつつ、自身は空いた大穴へと徐々に移動する。
「尻癖の悪い尻尾だなッ」
流が大穴まで後少しと言う処で、蛇娘は流へと尾を叩きつける。
それをあえて美琴で受けながら、大穴の外へと飛ばされる流。
「やったか!?」
満面の気色でその様子を見る賊達だったが、それが誤りとすぐに思い知る。
「ふぅ~やっと広い場所に出れた。感謝するぜ、蛇娘ちゃん」
「……やっぱり、危険、危険、コロス」
脱出口を塞ぐように陣取っていた蛇娘と入れ替えるように、徐々に右斜からのみ攻撃し、それを悟られないように、残党にも殺気を放ち怯えさせ、それを蛇娘が気にしているところへ攻撃する。
結果、蛇娘は流を鬱陶しくなり、思わず尻尾で殴打した結果だった。
すぐに蛇娘も大穴から抜け出ると、蛇特有の蛇行した動きで流へと襲い掛かる。
襲い来る斬撃は人の技と違い、鞭のような体から繰り出される剣戟は異常な程読みにくかった。
「ちぃ、弱いのかと思えば強いし、強いのかと思えばヌカル。そんな斬撃か!? それに――!!」
時折斬撃の最中に襲い掛かる尻尾が驚異的で、斬り飛ばそうとするが、その隙に剣での攻撃が襲って来るので、その対応で手いっぱいになる。
「マジで尻癖の悪い尻尾だな!!」
(くっそ、まずはあの尻尾から何とかしねーとマズイ! 何か手は無いか? 氷盾は強制残り二回だが受けたら最後、あの連撃と尻尾でそれ以上の追撃が来る……)
冷静になり弱点を見極めようと、流は観察眼を発動させる。
(は? 弱点が一つだけだと? いや待て、そう言う事かよッ!! ならあそこへ行くしかねえか!?)
しなる鞭の如き攻撃を往なしつつ、流は入口の方へ徐々に後退する。
徐々に蛇娘の猛攻に慣れて来た流は、隙と見るや斬りかかる――が。
しかしそれを打ち破る漢が一人、行動する。
流は美琴を手に、静かに手前の男の傍まで来ると、逆刃にした美琴でうち倒す。
さらにもう一人がうち倒された事で、殺盗団の残党達も現実に引きもどされる。
「おい! ボケっとしてんじゃあああネェ! 全員でかかれば何とかなる――」
「ワケねーだろ、馬鹿か?」
呆れた怒りを込めつつ振るった美琴で、また二人が|錐揉(きりも)み状に宙を舞う。
「クッソ!! お前ら時間を稼げ、バケモノを出す!!」
「アレハンドさん! でもあれはッ!?」
「今使わないで何時使うんだ!? いいからやれ!!」
「っく、はい」
「何だ、バケモノだと?」
そう流がつぶやきながらアレハンドを目で追う。
途中で椅子に躓きながらも、アレハンドは部屋の奥にある、大きな箱のような物にかけてあるシートを外す。
すると中は見ただけで分かる程に強固な檻となっており、その中には何か大きな生き物が蠢ていた。
「おら、出て来い! お前の今日の極上の餌は、あの黒髪の男だ! ほら行け!!」
アレハンドはそう言うと、檻の鍵を外し、自分は檻の影へと身を隠す。
すると檻の中から〝ヌルリ〟とした生き物が姿を現す。
それは全長は六メートル程あり、上半身が白い肌の若い娘で下半身が黒い蛇の魔物だった。
床から魔物が上半身を起こすように立ち上がると、体長が二メートル半程になり、顔が良く見えるようになる。
目は赤黒く濁り、口元には牙が見え、明らかに肉食的な顔つきの凶悪な魔物と一目で分かった。
「これはラミアって奴か? 異世界マジでファンタスティック! う~むぅ。鱗が美しい、そしてあの人と蛇の付け根がとても興味深い……あれはもしかして?」
『…………!』
「っと、悪い悪い美琴。思わず魅入ってしまった。ッ!? これは奴の魔の力か!!」
「壱:違うと思いまっせ。あ~来まっせ、ご注意を」
美琴と壱の非道なツッコミに心が寂しく感じる流であったが、蛇娘が襲って来た事でそれも霧散する。
そして意外な行動に蛇娘は出た事で、賊達は混乱する。
流へと真っ直ぐ向かって来ていた蛇娘は、突如方向を変えて曲刀のような剣を持った賊へと這いより襲いかかる。
「ば、馬鹿! 俺じゃねバババアアッ!?」
蛇娘は賊の一人を絞め殺す。そして賊が持っていた剣を拾うと、その手に剣を装備してニヤリと口角を上げながら話す。
「お前達、そこの男を、殺したら、次は、お前達、覚悟、しろ」
真っ青になる盗賊達は、背後に居るアレハンドに文句を言い始める。だがアレハンドは焦る様子もなく、逆に呆れたように手下たちへ言い放つ。
「アレハンドさん、どうするんですか!?」
「はん、どの道殺されるんだ。ならこの原因を作った、巨滅の英雄もろとも地獄へ落ちようじゃねーか」
「ック、馬鹿なぁ……」
「もうアンタには付いて行けねえ!」
そう言い捨てると、賊の一人は蛇娘の真横を通り過ぎて逃げる、が。
強烈な蛇の尻尾の一撃を受け、男は閂の付いた壁際の大きい搬入口を突き破り外へと放り出された。
「逃が、さない」
「ひぃぃ、こ、こっち見んなあああ」
「だから言ったろう、無駄だよ無駄。諦めろ」
恐怖に震える部下へ、アレハンドがまるで他人事のように、まるで馬鹿に諭すかの如く言い放つ。
そんな絶望が支配するこの空間において、流だけはこの後の展開を考える。
(この狭い空間であの尾は驚異だな。なら出口が開いたそこから出るか)
今ほど賊が飛ばされた大穴から、外へ出て勝負する事にする。だがそれにはいくつかの問題をクリアする必要があった。
「なぁ蛇娘ちゃん。俺を食べても美味しくないぞ?」
「……お前、強い。脅威、怖い」
「野生のカンってやつかい?」
「そうだ。お前、怖い、だから、死ね!」
「馬鹿だな。怖いからこそ、話し合いって言う方法があるって言うのになっと!」
襲いかかる蛇娘の斬撃を躱しつつ、自身は空いた大穴へと徐々に移動する。
「尻癖の悪い尻尾だなッ」
流が大穴まで後少しと言う処で、蛇娘は流へと尾を叩きつける。
それをあえて美琴で受けながら、大穴の外へと飛ばされる流。
「やったか!?」
満面の気色でその様子を見る賊達だったが、それが誤りとすぐに思い知る。
「ふぅ~やっと広い場所に出れた。感謝するぜ、蛇娘ちゃん」
「……やっぱり、危険、危険、コロス」
脱出口を塞ぐように陣取っていた蛇娘と入れ替えるように、徐々に右斜からのみ攻撃し、それを悟られないように、残党にも殺気を放ち怯えさせ、それを蛇娘が気にしているところへ攻撃する。
結果、蛇娘は流を鬱陶しくなり、思わず尻尾で殴打した結果だった。
すぐに蛇娘も大穴から抜け出ると、蛇特有の蛇行した動きで流へと襲い掛かる。
襲い来る斬撃は人の技と違い、鞭のような体から繰り出される剣戟は異常な程読みにくかった。
「ちぃ、弱いのかと思えば強いし、強いのかと思えばヌカル。そんな斬撃か!? それに――!!」
時折斬撃の最中に襲い掛かる尻尾が驚異的で、斬り飛ばそうとするが、その隙に剣での攻撃が襲って来るので、その対応で手いっぱいになる。
「マジで尻癖の悪い尻尾だな!!」
(くっそ、まずはあの尻尾から何とかしねーとマズイ! 何か手は無いか? 氷盾は強制残り二回だが受けたら最後、あの連撃と尻尾でそれ以上の追撃が来る……)
冷静になり弱点を見極めようと、流は観察眼を発動させる。
(は? 弱点が一つだけだと? いや待て、そう言う事かよッ!! ならあそこへ行くしかねえか!?)
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