日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第七章:新たな力を求めるもの

233:丑三つ時に妖刀は蠢く

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「…………メリサ。確かに俺はトエトリーに、ずっといられないかもしれない。だが、こんな状況を知らぬ顔は出来ないよ。メリサ達を見捨てて逃げ出すなんて、そんな卑劣な奴じゃないと約束するよ」
「はい……はい、信じています!」
「ああ、だからそんな顔をしないでくれ。すぐに戻って来るさ」

 今にも泣きそうな顔のメリサを見ているうちに、ふと流は思いつく。本当に何となくの思いつきだったが、それを確認するために壱へ声をかける。

「壱、いるか?」
「壱:はいな、何でっしゃろか」
「俺が装備している氷盾の指輪だが、これを一時的に貸し出す事は可能か?」
「壱:う~ん、そうでんなぁ……。出来なくは無いんやけど、指輪の中の人次第ですなぁ」
「あ~、なる程。聞いた通りだ、お前の力をこの娘に少し貸してくれるか?」

 そう流が指輪に向けて話すと、指輪が複数の女の声で答える。

『主がそう言うなら良いだろう。正し限定的にだ。主が戻られるまでこの娘を守護しよう』
「そうか、それは助かるよ」
「ナ、ナガレ様それは一体……?」
「ああこの指輪にはな、神様が宿っているんだよ。その神様がお前を守ってくれる、俺が戻るまで大事に指にしていてくれよ」

 そう言うと流は氷盾の指輪を外し、メリサへと渡す。

「はい、これで寂しくないだろう?」
「で、でででも!? こ、こんなのまるで……(恋人みたいじゃないですかあああ)」
「ん? 嫌か?」
「ち、違います!! 嬉しいです、本当に!!」
「なら持っておいてくれ」

 そっとメリサの手に氷盾の指輪を乗せると、そのまま両手で指を優しく丸める。

「じゃあな、無くすなよ? まぁ落としても勝手に戻って来ると思うけど」
「はい……。ナガレ様もご無事の帰還、お待ちしています」
「ああ、それじゃあまたな!」

 使い方を説明した後、流は去って行く。
 後に残されたメリサは指を〝ぎゅっ〟と握り、頬を染めたまま、バーツが来るまで呆けるだった。


◇◇◇

 帰館途中で嵐影へ挨拶する人がポツポツといるようになり、中には嵐影のアニキ! とか言うおかしなのも出始まる。
 そんな様子に嵐影は「……マ」と答えると、みんな喜ぶのだった。

「嵐影、おまえの人気は俺より凄くないか?」
「……マ」
「解せぬ……」

 そんなやり取りの後で、壱がひょっこりと流の肩に乗りながら話す。

「壱:それはそうと、古廻はんも罪な漢でんなぁ~」
「む? 何がだよ」
「壱:そらあの娘ですがな。あれは本気でっせ? もう顔真っ赤にしてまぁ、おいちゃん見てられへん」
「何を言っているんだお前は。メリサは寂しがり屋なんだよ、その裏返しで何時も冷たかったんじゃないのか?」
「壱:はぁ~。本当に鈍感系主人公を体現するお方でんなぁ」
「む、失礼な! 俺は女子の機微には自信があるんだぞ! ……あるんだよな?」

 昔からモテると周りからよく言われていたが、それがよく分かっていない流は思う。
 もしかして皆何か勘違いをしているのでは? ……と。

「壱:まぁ~そんな鈍感系ど真ん中ですから、あの女狐の誘いも効かないやろなぁ」
「俺ってそんなに鈍感か?」
「壱:そらもう、驚く程で」

 流は思う。こっちに来る前、彼女に紅葉を二つ作られた時の事を。
 
「あれは……綺麗な紅葉だったなぁ~」
「壱:なんかダメな事を考えている気がしまっせ」
「それはそうと壱よ。お前は普通に話す事は出来ないのか?」
「いやいや出来ますよ、ほら」
「うっわ、違和感半端ない!」
「失礼なお方でんなぁ~。僕も普通に話せまっけど、アレで慣れてたんで、そのままでしてん」
「妖怪って、みんなそうなんだな……」
「ちょ、違いますがな! 僕はそんな下等な存在じゃありまへんよ。立派な神の一柱ですよって」

 その言葉を聞いて驚く。

「は? お前がぁ?」
「ますます失礼ですなぁ、僕も愚弟も愚妹もみんなそうですがな」
「そ……そう言えば異超門を超える説明の時に、〆が言っていたような気もする……」
「まぁ今更何でもいいですがな。古廻はんがこっちがいいなら、このまま話しまっけど?」
「う~ん。じゃあしばらくこのままで?」
「了解でっせ!」
「エセ関西弁は治らんのでっか?」
「それはデフォルトやから無理でっせ!」
「デフォなのかよ……」

 他愛のない話をしながら幽霊屋敷の正門まで来ると、全員が出迎えていてくれた。

「「「お帰りなさいませご主人様」」」
「お、おぅ。ホントに慣れないわコレ……」
「お帰りなさいませ古廻様。先程はその……失礼しました」

 特注であろう、黒を基調とした大島紬に銀糸をふんだんに使った着物に着替えた〆は、頬を染めて恥ずかしそうにしている。
 それをまた激しく愛でたい気持ちになるが、グッと我慢をして話をする。

「何を言う、最高の愛でタイムだったぞ!」
「そ、そうですか……」
「フム。毒婦はその辺りにして、本日はごゆっくりとお休みください」
「せやで~、明日からは地下で特訓やさかい」
「おや? 兄上は普通に話す事にしたのですか?」
「古廻はんがこっちが良いちゅうからな」
「違和感が半端ないですな」
「だろ? 俺もそう思う」
「失礼やなぁ。まあ慣れて~な」

 そんな感じで本日もなんとか無事に終わる。
 しかし美琴は今日の事を思うと、心配で心が落ち着かなかった。

 後にこの時の自分を思い出すと、ゾッとする……。
 どうしてこの人に、こんな酷い事をしてしまったのかと……。



 ――深夜二時の丑三つ時。

 流がスヤスヤと寝ているのを、美琴は……ずっと見ている。
 だがその鞘からは、妖気ではなく〝冷気〟と言ってもいい物があふれ出す。
 まるで実体化したほどの存在感であり、きっと流が起きていたらゾっとしただろう。

 それはやがて――。
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