日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第七章:新たな力を求めるもの

285:三兄妹の挽歌~無限の永楽銭

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 その男は自分の背丈ほどもある大剣を〝ブォン〟と斬撃を真横に一閃すると、〆へ向かって駆けだす。
 謎の男もとい、壱が放った斬撃は、〆の九尾の一つが女神ア・ラヴィ・オールへと当たる刹那に『斬り落とす』事に成功する。

『ギャォウウウウ!!』
「すまんな、どうせすぐ生える」
「フムッ。兄上……ラドゥースをその身に。しかしそれは諸刃の術! 限定されたこの空間では『供物』が十分ではありますまい!?」
「だからこその俺だ!」

 限定空間――参が拠点化しているここは、『コトワリ』を無視して力と能力を行使できる場所だが、それも「一定の」と言う条件が付く。つまりは全力では戦えないと言う事だった。
 そしてこの空間で壱が使った憑依術は、正に規格外の代物である。

 聖域に封印される程の戦闘力を持った聖人は、現世で活動するためには莫大な聖霊力を必要とする。
 理から封鎖された限定空間では、外部から取り込める聖霊力はたかが知れており、違う「供物」が必要となる。
 それは生命力を供物とする事で、聖人をこの世に留める事が出来た。
 通常の人間なら一瞬で骨と皮だけになり、砂になるだろう。
 それほどの生命力を吸い尽くすが、壱の場合は曲がりなりにも神の一柱であるから、その生命力は莫大だった――が。

「ええい、この大飯喰らいめが! ガンガン生命力を食われるッ!!」

 そうは言いつつも、〆にダメージを与えて動きを鈍くする。
 〆も負けじと即回復しながら祝福の女神と壱へと襲い掛かるが、二柱の猛攻に床に叩き伏せられる。

「フム! よし、このままイケル!!」
「馬鹿者! どうしてお前はそう言う事――ッ!?」
『ヴァアアアアアアアアアア!!!!』

 次の瞬間〆の妖力が爆発的に膨らみ、拘束していたタコの足を爆散させて、ア・ラヴィ・オールを排除すると同時に、巨大な九つの空気の刃でア・ラヴィ・オールが真っ二にされ、その神々しい存在は光となりて消えていく。

「クゥ、祝福の女神が……。参、残り何秒だ!?」
「残り三十二秒、そこに永楽銭手観音の儀式が入るので……七十五秒持ちこたえてください!」
「持ってくれよ俺の体ッ!!」

 拘束を解かれた〆はゆっくりと立ち上がると、壱を射殺すように睨みつける。
 
「目付きの悪い妹だ、この兄が修正してやろう」
『グルルルルル……』

 一瞬、睨み合う。そして同時に動き出し攻撃態勢に入る。
 〆は口を〝ガパリ〟と開けると、その中から紫の収束された極光を壱に放つ、が。壱はそれを大剣で切り裂き、そのまま突っ込みながら最後は逆にそれを跳ね返す。

 極光を跳ね返された事で一瞬〆は怯む。その隙を突いて壱は高く飛び上がると、〆の頭上から大剣を振り落とし、〆の鼻先を切り裂く。

『ギャウウンッ』
「フン、傾国の毒美顔が台無しだな。ザマア見ろ」

 怒りに震えた〆は再生した九尾を荒ぶらせ、一撃殲滅の術を放つ。
 壱の足元から氷の刃が噴き出し、紙一重でそれを飛び上がりかわす、が。その先には雷がとぐろを巻いて襲って来るのを大剣で払いのけながら、左右から挟み込む業火を蹴りつけて爆散させ、前方より迫る、死神の鎌より尚禍々しい空気の刃を左手で殴りつけて破壊する。

「フム! なんと出鱈目な……流石は聖人ラドゥース! 兄上、残り十秒で封印が解けます!」

 壱は返事をしたかったが、それどころではなく目線で流の遺体を一瞥するだけだった。
 そしてついに封印が解ける。

≪『つげる』対象:古廻流ノ時間凍結ガ解除、サレマス。 解除、マデ。 五・四・三・二・一・時間凍結解除ガ完了、シマシタ。 同時ニ反魂祭壇ノ、稼働率ガ上昇中。 愚カナル兄妹ヨ、主ノ、帰還ヲ、寿グガヨイ  

「誰が愚かですか!? 愚かなのは妹だけです! 一々腹立だしいゴミ共め!!」

 参が悪態をつきながら反魂祭壇が稼働完了するのを確認すると、即座に永楽銭手観音えいらくせんじゅかんのんに命令する。

「フムッ! 永楽銭手観音よ、流様の魂を現世に呼び戻せ!!」

 四体の永楽銭手観音は〝ざりざり〟と床を引きずるように音を立てながら、流の遺体へと擦り寄ると、背中の木彫りの手が無数にうごめきだす。
 その手には「永楽銭」が握られており、それを流へ向けてジャラジャラと落とし流を永楽銭で埋め尽くす。

『『『『地獄の沙汰も金次第、獄門主すら袖の下、三途の川をも銭で埋め、老いも若きも男も女も、皆平等に訪れる死を銭の力で舞い戻れ、ア~レヴァン・トゥ~マ・ソワカ』』』』

 不気味、あまりにも不気味な底冷えのする声で四体の永楽銭手観音が、永楽銭を派手にばら撒きながら言霊を告げる。
 すると流の頭側に巨大な机と、青と赤を基調とした、平安貴族のような衣装を身に着け、赤顔でヒゲ面の不機嫌そうな大男が現れる。
 大男が流を見下しながら〝チッ〟と舌打ちをしつつ、手に持ったしゃくを机に打ち付ける。

「これだけ積まれちゃ見逃さん訳にはいくまいよ。それに元々コッチには来てないしな。被告人、古廻流の『生存を許可』する。精々死ぬまで長生きするんだな」

 そう言うと大男は笏で肩を叩きながら「やれやれだ」と言い残すと、永楽銭手観音共々消え失せる。
「兄上!! 流様の蘇生が完了しましたぞ!!」
「よくやっ――」

 〆相手に互角に渡り合っていた壱は、ほんの一瞬とも言えない刹那を油断してしまう。
 そこを〆は見逃さず、壱を中心に展開した多結界式の妖術で、壱を囲い込み圧し潰すように大量の術を発動させた。

「なあっ!? 兄上えええええええ!!」
「グッ、ガアアアアアアアッハッ」

 壱は血濡れのボロ雑巾のようになりながら床へと落下する。それを見て〆の口角はニヤケ上がり、邪魔な存在の一人が滅ぶを確信するのだった。
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