日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第七章:新たな力を求めるもの

294:ワレはエライんだワン

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 紅白の注連縄しめなわが突如光ったかと思えば、氷狐王を電撃のようなもので打ちえる。
 たまらず氷狐王は転げ回りながら、短い足を〝ぱたぱた〟させて苦しむのだった。

「お、おい〆。これは一体……?」
「うふふ。これは『霊命の注連縄』と申しまして、主に逆らえば苦痛が魂へと、ダイレクトに刻まれる物です」
「って、さっきの契約ってやつか?」
「ええそうです。さっき氷狐王が光りましたよね? その時この子の中で、古廻様への『完全敗北』が刻まれたと同時に、タイミングよく名付けの儀式を行ったので、それで『主権限の魂への接続』されたのです」
「つまり、俺のしもべペットになったと言うことか?」
「はい。今後は氷狐王……もとい、ワン太郎は、古廻様の忠実なしもべとしてお役にたてるでしょう」
「よく分からんが、まぁ無事にペットになれて良かったなワン太郎!」
「そ……そんなぁ~。ワレがペットだなんてぇ……あんまりだあああああああああ!!!!」

 ワン太郎は泣いた。そのアイスブルーの瞳から、とめどなく氷の粒を流して……。
 凶悪な邪神に呼び出され、断ればあとが怖いと仕方ないので来てみれば、もっとヒドイことになってしまった氷狐王。
 主人に頭を撫でられ、えぐえぐと涙を流しながら〝お手〟をするその姿は、実に哀れである。

「フム。さて妹よ、この異常な寒さを解き、使用人たちの魂を開放するのだ」
「あ! せやった。愚昧めが凍らせたやつらを助けてやらんとなぁ。ったく、とんだ手間かけさせよってからに」
「〆……お前、なにやってんだよ?」

 三人にジト目で見らる〆は、「うぅ」と一言呑み込むように呟くと、亡者の手が出ている扇子を拾うと、その手を押し込むみながら冷や汗をながす。

「わ、わかりました。今すぐに! あの兄上……その……手伝ってもらえませんか?」
「フム。やはり治す事には向かぬか。仕方ない、貸しだからな?」
「ったく、壊したり凍らすことしか出来ない愚昧め! ほら、ちゃっちゃとやったるわい」

 そう言いながら三人は外へと出ていく。その様子を美琴と呆れながら見ていると、やっと帰ってきたんだなと言う実感がわいてくる。

「帰って来れたんですね……」
「ああ、俺達のいるべき場所だ……」
「ワレはお家へ帰りたいワン……」

 その後ワン太郎を頭に載せた流は、十階層へと向かい歩いていくのだった。


 ◇◇◇


 昇降機に向かうと、まずはミレが生還を涙を流して喜んでくれた。それに素直な気持ちで礼を言いながら、近くにもっと奇妙な幽霊娘がいることを忘れたように、「幽霊なのに泣くのか?」と思う。
 やがて昇降機は十階層に到着し、ドアが開放されたと同時に青いカゲが突撃してきた。

「マ゛!!!!!!」
「うぉっふ!? ら、嵐影か!! 心配かけちまったな……ごめんな」
「マママァ!!」

 嵐影はつぶらな瞳から大粒の涙をながして、流れへと顔を押し付ける。それを見た流は、申し訳ない気持ちと、その体の変化に驚きながら包容する。

「もう死なないから泣くなよ。大丈夫、もう大丈夫だから……。はは、それにしても嵐影。おまえ少し見ない間にたくましくなったな?」
「……マァ」
「そ、そうか。荒行のおかげ……か?」

 そう言えばと流は思い出す。砂浜にカニと戯れながら埋もれたり、頭にスイカを載せて食べていたり、海で楽しげに泳いでいたりと、今思えば恐ろしい荒行だったんだと……。
 特に一番驚いたのが、滝打たれの修行だ。頭上から恐ろしい勢いで落ちてくる、大木から折れた割り箸ほどの小枝が〝こつん〟と当たった時は、見ているこっちも「危ない!!」と叫び、ドキリとしたものだ。

「そっか~、よくあの荒行(?)から生還したものだ……」
「……ママ~マ」
「ばかだなぁ……泣くやつがあるかよ」

 嵐影が泣くもので、思わず流もジンとくる。そっとしばらく抱きしめると、嵐影はすっと腰を下ろす。

「……マ」
「え、近いからいいよ」
「……マ!」
「わ、分かったよ」

 ほぼ目の前だが、嵐影が乗れと言うので素直に乗る。どうやらとてもご機嫌らしく、鼻歌のようなものまで歌っている。
 そんな二人を頭上から眺めるワン太郎は、なぜかモゾモゾとするのだった。

「が、ガキんちょ!! 本当に復活しおったがや!?」
「ぼうや!! よかった、本当によかったねぇ……」

 浜辺のコテージへつくと、中から鬼の夫婦が飛び出してきた。その表情はとても鬼とは思えず、実に嬉しげに流へと向けられて少し恥ずかしく思う。

「あぁ、二人とも。本当に心配かけちまったな……すまなかった」
「何を言うとるがよ、あの状態からほぼ自力で復活したと聞いたがよ」
「ああそうさ、何でも時空神と『ことわり』の馬鹿が関係してたって聞いたさね」
「まぁそんなところだな。俺もいきなり『ことわり』ってのに改造? されて困惑してるよ」

 そう言うと流は、いまだ思案中のポーズをへて妖人になる。それを見た二人はしばし呆然と見ていたが、やがてポツリと話し出す。

「……まさかの妖人とは……驚いたがね」
「ああ、旦那の言う通りさね。よくまぁここまで……」
「だろ? 俺も驚いた」
「その力はどの程度なんだい?」

 流は「そうだなぁ」と呟くと、頭の上に〝へにょ〟っとしているワン太郎をつまむと、ぷらりと二人の眼前にぶら下げる。

「これ、何だか分かるかい?」
「んんん? 小狐だぜよ」
「だねぇ……。それでこの子がどうしたんだい?」
「この子じゃない! ワレは氷狐王だ! 今はワン太郎だけど……」

 そうワン太郎は言うと、さめざめと氷の涙を流す。それを見た鬼の夫婦は驚きの声をあげるのだった。

「はぁ!? 氷狐王ってリデアル平原の凶暴なアレかい?」
「ガキんちょ……いくらなんでもそりゃぁないぜよ」
「お前たち!! 昔、ワレの居城へ酔っ払って攻めて来た馬鹿夫婦だろう!!」
「「えええ!? それを知ってるって……本物?」」
「だからそうだと言っておる! ワレはこの男に敗北して今は囚われの身だが、本物の氷狐王なのだ! エライんだワン!」

 そう氷狐王、もといワン太郎は〝ぷらり〟と吊り下げられたまま胸を張る。

「と、言うわけだよ。最低コイツクラスなら余裕で勝てるようになった」
「本当かい……。坊や、一体何が……」
「ありえんがよ……。ガキんちょ、死んでる間になにがあったがよ?」

 鬼の夫婦はありえない物を見たとばかりに、困惑するのであった。
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