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第八章:塔の管理者達と、新たな敵
310:護衛に呼ばれたよ
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床をガリガリと削り、鋭利な多足で流を細切れにしようと襲いかかる。あせる流――と言うわけでもなく、ニヤリとした勝ち誇った顔をムカデ型ゴーレムへ向ける。
右手の愛しい美琴は「ヒィィィィッ!?」と悲鳴を上げながら、ムカデ型ゴーレムが襲来するのを待つ。カワイソウなほど美琴は怯えている……幽霊なのに。
「ったく、手間かけさせやがって。つまりはコウだろ!?」
流は迫るムカデ型ゴーレムの〝頭の突起〟めがけて四連斬を放つ。
すると、あれほど狂ったように蠢いていた多足がビタリと停止し、直後に向かって右のムカデ型ゴーレムが倒れて動かなくなる。
「やっぱりな、あの突起は攻撃のためじゃなくアンテナのような役割らしい」
『そそそそそんな事より、早く残りもやっつけてくださいよ!!』
「分かってるって。まぁ……もう動けないだろうが」
残りの方も、突起が切り払われたと同時に、縦に真っ二つに頭が斬られており〝真紅の魔核〟が斬れているのが見える。
流はおもむろに近づくと、その体を蹴りつける。すると抵抗なく、パタリと倒れたのだった。
「ほら、怖がりの美琴さん。もうムカデはいませんよ?」
『ぅ……ありがとうございます。昔からあのウネウネが嫌いなの……』
「お前がいう昔は含蓄があるな。さて……え゛!?」
ワン太郎の方を見ると、そこは異世界だった。すでにここが異世界だが、それでも異世界という言葉しか見つからない。決して語彙力がないわけじゃない。
「……どうしてロボが氷で合体して、巨大ロボになってる!? しかも手に氷の剣まで装備してるぞ!!」
そんな流の絶叫に気がついたワン太郎は、短い足で〝ぽむぽむ〟歩きながらやってくる。
「あるじ~、ワレの趣味と創作力の結晶は、べらぼうにカッコイイワンよ!!」
「そ……そうだね、よくやったぞワン太郎……って、こんな事してる場合じゃない! 早く上に行くぞ!!」
「あ~!! もっと褒めてほしいのだワン! 待って~」
アホな事をしている暇はないと、流は気を取り直し上階へと階段を駆け上がるのだった。
◇◇◇
「何だ!! 何が起こっている!?」
突然のアラートで、水塔の制御室にはどよめきが走る。
ここは水塔の最上階の一室で、この莫大な水のながれを制御する魔具と、水を生み出す魔具の制御室であった。
「管理官大変です、侵入者です!! 現在二階へと侵入したと警報が出ています!!」
「な、なんだと!? 一体誰だ? ここは街の最重要施設だぞ、それに簡単に侵入出来るわけがない! 外も中も完璧な守りだったろう!!」
「げ、原因は分かりません。しかし、侵入されたのは間違いありません!」
管理官と呼ばれた男、年齢三十路前ほどの細身で目つきが嫌らしく、大抵の人が嫌悪感を感じる表情の黒髪の人物、アルレアン子爵はその報告を受けて椅子から転げ落ちるほど焦る。
その様子を滑稽なものを見つめるように、一人の漢が壁にもたれながら気だるそうに話す。
「あ~ら、やっぱり来たかねぇ」
「キサマ! 大丈夫だって言ったじゃないか!?」
「え? オレそんな事言ったっけ?」
「言いましたよアニキ、俺も姉貴も聞いていますよ」
「そうですよアニキ。で、どうせこう言うんだよ――」
「「「漢は過去に拘るもんじゃないさ」」」
「あ~ら!? ラーゼもイリスも失礼な事を言うじゃない? アニキ、びっくり!!」
「ビックリなのは私の方だ!! どうするんだ!? 誰が来たんだ!! 冒険者か? 憲兵隊か!?」
アニキと呼ばれる漢、「シュバルツ」はその背中を壁からゆっくりと離すと、アルレアン子爵の元へと歩きながら確信を告げる。
「誰って……決まっているじゃないか、『巨滅の英雄章++』を持つ漢さ」
「ナッ……!?」
その言葉でアルレアン子爵は固まる。秘匿性の高いこの場所と、塔を守る魔物と機兵たちと、そられを内包する強固な結界魔法。
さらには裏に堕ちた本職の追跡者は、危険な事は一切させず嫌がらせを徹底させた。
それにあの大商家たるアルマーク家が大丈夫だと保証したのだ。これ以上安心な事はない……と、普通の人間なら思う。
それでもアルレアン子爵は小物臭く、不安だからと懇願するとこの男たち三名が護衛としてやって来た。だから安心した、絶対に誰にもバレるはずがない、と。
「ど、どうしてだ……あの、あの、アイツ! トエトリー子爵にバレたと言うのか!? クソ、クソ、クソ!! どうして同じ子爵なのに、あいつばかり優遇されるのだ!! 私はこんな薄暗い水塔の中を管理するだけだと言うのにッ!!」
シュバルツはこのみっともない男を、馬鹿を見る目で呆れながら話す。
「あ~らまぁ。なにを今更言っているんだ? オタクはあの、巨滅の英雄の身内を攫ったんだぜ? 当然と言えば当然だな」
「そ、それはアルマーク商会が――」
「チッチッチ、ダセェ事はこれ以上言うのは無しだ。オタクは大金をもらい、娘を攫った。この事実だけで全てオシマイだ。言い訳も弁明も弁解も誰も聞いちゃくれない……あるのは今起こっている――」
シュバルツがアルレアン子爵と話している間、子爵の配下が用意した魔具に映し出されている映像を見つめながら続ける。
「――現実、だけだ」
「そ、そんな……バカ、な……」
映像には見えない何かと、凶暴な子犬が警備ゴーレムをなぎ倒しているところが映し出されているのだった。
右手の愛しい美琴は「ヒィィィィッ!?」と悲鳴を上げながら、ムカデ型ゴーレムが襲来するのを待つ。カワイソウなほど美琴は怯えている……幽霊なのに。
「ったく、手間かけさせやがって。つまりはコウだろ!?」
流は迫るムカデ型ゴーレムの〝頭の突起〟めがけて四連斬を放つ。
すると、あれほど狂ったように蠢いていた多足がビタリと停止し、直後に向かって右のムカデ型ゴーレムが倒れて動かなくなる。
「やっぱりな、あの突起は攻撃のためじゃなくアンテナのような役割らしい」
『そそそそそんな事より、早く残りもやっつけてくださいよ!!』
「分かってるって。まぁ……もう動けないだろうが」
残りの方も、突起が切り払われたと同時に、縦に真っ二つに頭が斬られており〝真紅の魔核〟が斬れているのが見える。
流はおもむろに近づくと、その体を蹴りつける。すると抵抗なく、パタリと倒れたのだった。
「ほら、怖がりの美琴さん。もうムカデはいませんよ?」
『ぅ……ありがとうございます。昔からあのウネウネが嫌いなの……』
「お前がいう昔は含蓄があるな。さて……え゛!?」
ワン太郎の方を見ると、そこは異世界だった。すでにここが異世界だが、それでも異世界という言葉しか見つからない。決して語彙力がないわけじゃない。
「……どうしてロボが氷で合体して、巨大ロボになってる!? しかも手に氷の剣まで装備してるぞ!!」
そんな流の絶叫に気がついたワン太郎は、短い足で〝ぽむぽむ〟歩きながらやってくる。
「あるじ~、ワレの趣味と創作力の結晶は、べらぼうにカッコイイワンよ!!」
「そ……そうだね、よくやったぞワン太郎……って、こんな事してる場合じゃない! 早く上に行くぞ!!」
「あ~!! もっと褒めてほしいのだワン! 待って~」
アホな事をしている暇はないと、流は気を取り直し上階へと階段を駆け上がるのだった。
◇◇◇
「何だ!! 何が起こっている!?」
突然のアラートで、水塔の制御室にはどよめきが走る。
ここは水塔の最上階の一室で、この莫大な水のながれを制御する魔具と、水を生み出す魔具の制御室であった。
「管理官大変です、侵入者です!! 現在二階へと侵入したと警報が出ています!!」
「な、なんだと!? 一体誰だ? ここは街の最重要施設だぞ、それに簡単に侵入出来るわけがない! 外も中も完璧な守りだったろう!!」
「げ、原因は分かりません。しかし、侵入されたのは間違いありません!」
管理官と呼ばれた男、年齢三十路前ほどの細身で目つきが嫌らしく、大抵の人が嫌悪感を感じる表情の黒髪の人物、アルレアン子爵はその報告を受けて椅子から転げ落ちるほど焦る。
その様子を滑稽なものを見つめるように、一人の漢が壁にもたれながら気だるそうに話す。
「あ~ら、やっぱり来たかねぇ」
「キサマ! 大丈夫だって言ったじゃないか!?」
「え? オレそんな事言ったっけ?」
「言いましたよアニキ、俺も姉貴も聞いていますよ」
「そうですよアニキ。で、どうせこう言うんだよ――」
「「「漢は過去に拘るもんじゃないさ」」」
「あ~ら!? ラーゼもイリスも失礼な事を言うじゃない? アニキ、びっくり!!」
「ビックリなのは私の方だ!! どうするんだ!? 誰が来たんだ!! 冒険者か? 憲兵隊か!?」
アニキと呼ばれる漢、「シュバルツ」はその背中を壁からゆっくりと離すと、アルレアン子爵の元へと歩きながら確信を告げる。
「誰って……決まっているじゃないか、『巨滅の英雄章++』を持つ漢さ」
「ナッ……!?」
その言葉でアルレアン子爵は固まる。秘匿性の高いこの場所と、塔を守る魔物と機兵たちと、そられを内包する強固な結界魔法。
さらには裏に堕ちた本職の追跡者は、危険な事は一切させず嫌がらせを徹底させた。
それにあの大商家たるアルマーク家が大丈夫だと保証したのだ。これ以上安心な事はない……と、普通の人間なら思う。
それでもアルレアン子爵は小物臭く、不安だからと懇願するとこの男たち三名が護衛としてやって来た。だから安心した、絶対に誰にもバレるはずがない、と。
「ど、どうしてだ……あの、あの、アイツ! トエトリー子爵にバレたと言うのか!? クソ、クソ、クソ!! どうして同じ子爵なのに、あいつばかり優遇されるのだ!! 私はこんな薄暗い水塔の中を管理するだけだと言うのにッ!!」
シュバルツはこのみっともない男を、馬鹿を見る目で呆れながら話す。
「あ~らまぁ。なにを今更言っているんだ? オタクはあの、巨滅の英雄の身内を攫ったんだぜ? 当然と言えば当然だな」
「そ、それはアルマーク商会が――」
「チッチッチ、ダセェ事はこれ以上言うのは無しだ。オタクは大金をもらい、娘を攫った。この事実だけで全てオシマイだ。言い訳も弁明も弁解も誰も聞いちゃくれない……あるのは今起こっている――」
シュバルツがアルレアン子爵と話している間、子爵の配下が用意した魔具に映し出されている映像を見つめながら続ける。
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