日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第八章:塔の管理者達と、新たな敵

323:まあるいモノ

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『うぅ、またこんなのですか……帰りたいょぅ』
「俺も帰りたいわ。で?」
『あれも邪法の一つです。しかも普通は命と引き換えにし、それでやっと発動出来るんだったかな。たしか……そう、転邪下誕てんじゃげたんって言って私も倒した事あるよ……でも、この人は違う』

 エスポワールは面白げに聞いていたが、その美琴の知識に驚きを隠せないようだった。

「ふ~む、本当に知識がとんでもない妖刀ですなぁ!? どうですお嬢さん。本来、妖刀と言うのは我らと共にあるべき、忌み嫌われる存在です。そんな主など見限って、一緒に世――」
『嫌ですうううううう!! 私には流様しかいないの! だれがアナタみたいな〝キモチワルイ死体〟となんか行くものですか!!』

 美琴のその言葉に流は驚くと共に、得心もした。いかに耐えたとは言え〝水昇双牙〟でダメージを負い、さらに左腕を斬り飛ばしても平気な生物などいるものか? と思っていたのだから。
 そんな驚く流を見据えながらも、その濁った視線で美琴を見る男はこう呟く。

「ふ~む……そこまでお分かりなりますかな。少々厄介な存在ですなぁ」
『フンだ。アナタみたいな死人しびととは、何度も戦った事があるんだから分かるもん』
「ふ~む、なるほど……。無駄話もここまでのようですな、小物と離れてしまう」

 見ればゴンドラが螺旋状に下るコースになる。

「では頼みましたよ、我が愛しい左腕よ」
「……キッシャアアアアッ!!」

 そうエスポワールは言うと、ゴンドラがコースを変える前に近くのパイプに飛び乗ると軽快に去っていく。
 それを苦々しく尻目に見ながら、目の前の左手の成れの果てから目が離せない。

「チッ、今はコイツか。話せないのか……」
『普通は意識すら無く、ただの殺戮するだけのバケモノなって、目に入る生物を殺すロクでもないものになるんだよ。だから誰の言うことも聞かないんだけど……』
「明らかにそうじゃない……か。知恵もあると思って対処しないとマズイな」

 そう言いながら美琴を頭部の横に腕を交差させ、霞に構える。

『蜘蛛ポワール来ます!』
「ッ!? 意外と早いッ!!」

 すでにサイズは流より大きくなった体で、八本の足をバネのように力をため、一気に頭上から襲いかかる蜘蛛ポワール。
 ネーミングがどうかと思うが、そんな事を考えている暇がない二人は、頭上から襲いかかる足をギリギリ避けて斜めしたのゴンドラへと移る。
 するとエスポワールの部分、両手の平から糸を出して上部のゴンドラの支柱に絡めて、トリッキーな動きで斜めより文字通り飛びかかってくる。

「チャーンス! ジジイ流・肆式よんしき! 三連斬!!」

 伸び切った糸に一撃集中型の肆式を放ち、その糸を切断し――。

「ヨシッ!! 落ちやがった!」
『ッ!? 流様、真下より弧を描いて戻ってくるよ!!』
「なッ!?」

 蜘蛛ポワールは糸が切断された刹那、別の糸を蜘蛛の尻から吐き出し流の乗るゴンドラの下部に糸を付着させ、そのまま反動で背後から飛ぶように襲いかかってくる。
 その鋭利な足先で突き刺しに来る蜘蛛ポワールは、咄嗟に手の平から糸を出すと、そのまま上部へと飛び上がる。

「チィッ、読まれたか!!」

 流は飛びかかってくる刹那、真っ二つにする業である〝間欠穿かんけつせん〟を放つ体制だった。
 しかし野生の勘か、それともその知能ゆえかは分からないが躱されてしまう。
 その攻撃の危険さを察知した蜘蛛ポワールは、自在に吐き出すことが出来る糸で方向を思いのままに変えて、サーカスの空中ショーのように襲いかかって来た。

 それはまるで空間を走り抜けるが如く、流を翻弄する。気を抜けば鋭利な足で襲いかかり、さらに糸まで飛ばして流を絡めようとしてくる。
 今も目の前に迫る足を斬り飛ばそうとした刹那、尻から吐き出した糸で美琴を絡め取ろうとしてくるのを斬り払うので手一杯になる。

 すでに遠くなってしまったメリサと、それを追うエスポワールの姿が離れるにつれ焦りが募る。

「クッソ!? どうしたら!!」
『…………流様、覚悟をお決めになる時です』

 美琴の冷静な声に一瞬頭が持っていかれた、そう「ソレ」に集中してしまったのだ。
 結果――。

「グゥゥ!? しまったッ!!」

 左斜め下方から舞い上がって来た蜘蛛ポワールは、流の左足に糸を絡めると、そのまま引き寄せる。
 思わず体制を崩し前のめりに倒れると、その中央の補強材の足場から強引に引き寄せられてゴンドラの中へと落下してしまう。

 それをチャンスと見た蜘蛛ポワールは、弧を描きゴンドラを糸で絡め取る事わずか数秒。
 両手と尻から恐ろしい速さで糸を吐き出し、気味の悪い黄土色の繭を作り出す。

「キシャアアアアッ!!」

 蜘蛛ポワールは勝ち誇ったように両手を掲げ吠える。
 その最後の仕上げとばかりに、思いっきり飛び上がったと思えば、そのまま繭の真下へとダイブする。
 直後、ゴンドラが得も言われぬ不快な音と共に、圧縮する。

 ギシリ……ゴギリ……ヴァギッ……。

 圧縮してゴンドラが破壊されているはずだが、まったく水がもれないほどに完璧な薄汚い繭だった。
 その黄土色の楕円形の繭は、次第に円形に形が変わりはじめ、やがて大きさも次第に小さくなってくる。

 ゴンドラの残骸、そして中の水圧とあわせて、内部はすでに人の生存を許さない状態なのは誰の目にも明らかだった。
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