日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第九章:奪還作戦と、国の闇

364:覚悟のペーパーナイフ

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 氷の台座が崩壊したのを確認したドラゴンヘッドのメンバーは、龍人が倒されたと思い一気に沸き上がる。
 だが次の瞬間だった。氷の粒でオーロラのようになっている場所から、オーラのような赤いモノを撒き散らして、ありえない存在がゆっくりとコチラへと来る。

「……ようお前ら。どんだけいける?」
「私達魔法師はもうすっからかん。だけど、杖で殴れるわよ」
「俺たちも似たようなものだが、まぁ剣があるから多少はマシって感じか」
「わ、私はまだ回復いけます!! 大きいのは無理だけど……」
「だよなぁ。援軍が来てやっとまともにデカイのを使う余裕が出来て、がんばってみたが……ここまでか」


 すでにドラゴン化が解け、元のエドに戻ってしまい先程の業のダメージがしんどい。
 さらに魔力も底をつき、即効性魔力回復薬を吐き出しそうになりながら全員飲み干し、少しでも回復しようとする。
 背後にはセリアと四名の騎士がおり、最早ここまでかと思われる状態だった。

「すまねぇじゃじゃ馬姫さん。せっかく俺らを信頼して、騎士たちだけで時間稼ぎしてくれたってのに」
「あなた達の事はよく知っているわ。ドラゴンヘッドと言えば〝竜滅級〟ですものね。それにあの業でも倒せなかったんですもの、お手上げよね」
「はは、俺らも有名になったもんだ。さて覚悟を決めてハデにやりますかねぇ~」

 セリアはルーセントの傷に〝即効性体力回復薬〟をかけながら、この嘘のような状況を呆れるように言う。
 やがてその原因である龍人の姿がはっきりと見えると、セリアは立ち上がり全員に静かに話す。

「みんな、私は最後にもうひと頑張りしてみようと思う」
「っう……お嬢様いったい何を?」
「気がついたのルーセント? よかった……これから私はあの龍人と交渉してみる」
「ってまさか!? 姫さん、アンタ一人で死ぬ気か?」
「エド、私はただで死ぬほど安い女じゃなくてよ? まぁ見ていなさいな」

 セリアはそう言うと、一人で龍人の元へと歩き出す。それを確認した龍人は両手を広げてセリアを嬉しそうに迎える。

「やぁ~やぁ~俺の花嫁ちゃん。や~っとその気になってくれたかい?」
「もちろんよ、ダーリン。あなたのためにやってきたわ」
「ハッハー!! もの分かりがいい女は大好きだ!! さぁ、あとはアイツラを皆殺しにして帰ろうか」
「私がアナタに嫁ぐんだから、せめてあの人達は見逃してもらえないかしら?」
「ンンンンン……却下だ! だって考えてもごら~ん。ほれココ、ココが見えるかぁい? 実に罪深い!! これより裁判を行う、存在するだけで有罪! 有罪! 死刑確定!! ぉぉ可愛そうな俺の服よ……ぐすん」

 龍人が指した場所。そこは三人の女神により傷ついた服に穴が空いていた。そこを指差し、実に悲しげに言う龍人を見てセリアは思う。

(コイツ、何を言っても皆殺しにするつもりだ。なら――)

「そう……なら仕方ないわ」
「おお!! わぁ~かってくれたかぁい?」
「ええ、そりゃぁもう――嫌と言うほどねッ!!」

 懐から取り出した一本のナイフ。だがそれはペーパーナイフと呼ばれる類のものであった。
 一瞬驚く龍人の男「アルギッド」だったが、それがオモチャだと認識すると笑いながらそれをつまむ。

「なぁ~んの冗談かなぁ?」
「冗談? それこそ冗談でしょう? ホンキよ! 死になさいバケモノ!!」

 セリアはオモチャのようなペーパーナイフに魔力を込める。すると真っ赤に発光し、自爆魔法〝みそぎの証明〟と呼ばれるアイテムが光だし、魔法陣が空間に出現し二人を包む。
 本来は淑女が身の潔白を証明するために使うアイテムであり、主な使いかたとしては、万一不貞を働いていれば、その身が爆炎と共に消え失せるというものだ。
 だが今回のように対象を他者にし、その心に一定上の濁りがあれば発動する。まさにこのアイテムは、死をもいとわない覚悟ある貴族の女が持つモノ。
 さらにそのごうの深さにより、威力が跳ね上がると言う恐ろしいものだった。

「やっぱりアナタ、とんでもなく心が汚いわね。見なさいこのナイフを。これは一度発動すれば対象の心が濁れば濁るほどに威力があがるのよ。私の命と引換えにね」
「ナッ!? クソ、こんなナイフ如きッ!! っ、なんだこの魔方陣は? 壊れないぞ!?」
「無駄よ、ナイフも拘束魔法陣もアナタの心の愚かさに比例して強固になるわ。もう……逃げられない!!」

 奪ったナイフを捨て去ろうとしたが、自身を包み込むように展開している魔法陣により、それが簡単に防がれてしまばかりか、出ることすらできない。
 アルギッドは焦る。確かにこの娘の言うことは本当らしく、この小さなナイフから強烈に自分の内心を探られているような感覚に襲われ、その後すぐにナイフが力を増していくのが分かった。

(マズイマズイマズイ! 絶対マズイ!! ナイフこいつは俺の心を糧として、その威力が激増する!? さっきの魔法なんか比べ物にもならん威力! しかも発動後は止められないタイプと見た――)

 このままいけば強固な体を持ち魔法障壁があったとて、自身の心が威力を大増幅していると思うとゾっとする。
 このままなら大ダメージを受けるのは間違いなく、最悪本当に死んでしまうかもしれないと恐怖に支配される。だが――。

「舐めるなよ小娘がああああああああああああああ!!」

 アルギッドは渾身の魔力を両手に込めると、思いっきり魔法陣へと打ち付ける。
 すると壊れないはずの魔法陣にヒビが入り、それが徐々に広がりを見せたかと思うと魔法陣が粉々に砕け散る。
 それを見たアルギッドは口角をあげ、手に持ったまるで臨界寸前のように、真っ赤に発光しているナイフを、思いっきり上空へとぶん投げた。

「うらああああああああああ!!」
「そんな、嘘でしょ!?」

 赤い光を引きながら、上空百メートルほどまでに上昇すると、空気を振動させて爆炎が巻き起こる。
 予想通り、それはアルギッドですら確実に大ダメージを負ったであろうものだった。
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