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第九章:奪還作戦と、国の闇
375:龍人の力
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「お、お待ち下さい殿下!! 気をしっかりと持たれよ!! 一時の気の迷いですぞ!!」
「馬鹿め、お前とて我が主にいいように遊ばれているではないか? 主が本気を出せばお前など真っ二つよ」
「さぁ父上、お覚悟を……」
エルギスは悟る、これは本気だと。だからこそ全軍に向けて叫ぶ、のどが張り裂けんばかりに。
「ぜ、全軍全速撤退!! この場より一刻も早く離脱せよおおおおおお!!」
空に待機していた龍人兵はその意味を知る。それはすでに手遅れだと言うことを。だがそれでも命令に従い羽に魔力を込めてバラバラに逃げ出す――が。
「遅いわ……我が主を愚弄した罪。罰となりてその身に降り注げ。アイ・ス・ダガー開放……時よ、その歩みを止め我の言霊を乗せ氷結の時を降り注げ! コールド・タイム!!」
空より降り注ぐ氷の結晶。それが雨のようになり触れた者を容赦なく凍らせる。その後、地上へと動かなくなった龍人兵が落ちてくる。
だがその攻撃を読んでいた龍人兵も当然おり、ギリギリ躱しながら逃げ出すのが見える。
「往生際の悪い……白よ、あたしの思いに答えてちょうだい? あぁ~天上の御方のために、白き咆哮を聞かせてぇぇぇぇ!! 白竜の咆哮開放……白く白く、ただ白くあれ。視界を死海と変えてその道を閉ざせ!! 白き毒龍の咆哮!!」
全力逃亡中の龍人兵の視界が急速に奪われる。平衡感覚がなくなり、上に向かっているのか下に向かっているのかまったく分からなくなった。
やがて溺れているかのように呼吸困難となり、地上へとバラバラと落ちてくる。
さらに呆然と見ていたリザードマンへ向けて、二人は口をガバリと開いて赤と青の雷撃を放つ。
雷撃が直撃し、真っ赤に融解する地面が膨らんだ瞬間、盛大な爆発がおこり吹き飛ぶリザードマン達。
レッドとレティシャは器用に人間がいない場所を狙い撃ち、その数をドンドン減らしていく。
やがてほぼ壊滅状態となったのを見た二人は、グルリと流へと向き直り大興奮で活躍を報告する。
「おおお、天上の御方!! 我の活躍を見ていただけましたか!? 完・全・勝・利です!!」
「主様ぁぁ!! このレティシャの活躍はいかがでしたかぁん!? 超・絶・勝・利です!!」
「…………俺、もうお家へ帰りたい」
「「その魂が抜けたお顔もステキです!! 主様ぁぁぁぁぁぁ!!」」
そんなもう色々とありえない状況を、ただ呆然と眺める騎士と冒険者たち。さすがのセリアですら、この怒涛のながれについていけず、口をあんぐりと開いているしまつだ。
「え~と……レッドとレティシャだったか? その、助かった? よ」
「恐れ多いお言葉!! どうぞ我を名前ではなく犬とお呼びくだされ!!」
「そうですわ主さまぁん!! あたしは泥棒猫とでもお呼びください!!」
「「屈辱的で侮蔑した表情でゼヒ!!」」
恍惚とした表情で、アホのような事を真顔で懇願する二人。
ふと見れば、エルギスが実の娘に踏まれながら涙をながしていた。
「犬はワレですでに埋まってるから、他にするんだワン。あるじぃ、おっさんが泣いているワン……」
「言うなワン太郎。俺が泣きたい、切実に」
「ここまで来ると、流様っておかしな人を引き寄せる何かがあるんだろうね。あ、向日葵ちゃんそんな所で寝ないでよ、パンツ見えてるよ!?」
「お前も含めてなんだこれ、だわ……それでお前たち、ちゃんと『加減』したんだろうな?」
流のピリリとした言葉に、レッドとレティシャはニヤリと笑うと、自信たっぷりに頷く。
「ええ、リザードマン共は駆逐しましたが、父を初め全員帰還出来る程度には生かしてあります」
「我も同じですな。まったく、天上の偉大なる御方を空から見下ろすとは言語道断!! きっちり罰は受けさせましたゆえ、なにとぞご勘弁くださいませ」
「ならいい。別に龍人と敵対する気もないしな」
「ここまでしておいて、それはどうかと思うよ流様?」
「おお、我を許していただけましたか!!」
「主様サイコーです!! ほっとしました」
「「では、ご褒美に雑草とお呼びください!!」」
「どーしてそうなる!? ったく、そんなに呼び名にこだわるんだよ?」
ワン太郎は流の肩によじ登ると、コッソリと話し出す。
「あまり大きな声ではいえないんだけどね、名付けの儀式はこの世界でも有効だワンよ。ワレも主に名付けられた事で、この姿でも十分戦えるようになったワン」
「そういうものか……まぁ、このままコイツラ放置したら厄介な存在と言うのは、今の戦闘を見て切実に思った。なら手元に置いておくほうが安心か? しかたない、主になってみるか!!」
その言葉で歓喜する二人。思わず倒れてしまうのではと思うほど興奮しているのが分かる。正直ドン引きだ。
「はぁ、そうだなぁ……レッドは右の角があるから……『R』だ。レティシャは左の角があるから『L』な。この二つをお前たちの真名とする。これをもって俺に仕えろ、いいな?」
「「ヒイイイイイイイ!?」」
瞬間二人が悲鳴を上げるように倒れる。すると魔法陣のようなモノが上下に現れて、二人を包み込む。
やがて光のまゆが一瞬光り輝くと、無数にひび割れ粉々に砕け散ったのだった。
「馬鹿め、お前とて我が主にいいように遊ばれているではないか? 主が本気を出せばお前など真っ二つよ」
「さぁ父上、お覚悟を……」
エルギスは悟る、これは本気だと。だからこそ全軍に向けて叫ぶ、のどが張り裂けんばかりに。
「ぜ、全軍全速撤退!! この場より一刻も早く離脱せよおおおおおお!!」
空に待機していた龍人兵はその意味を知る。それはすでに手遅れだと言うことを。だがそれでも命令に従い羽に魔力を込めてバラバラに逃げ出す――が。
「遅いわ……我が主を愚弄した罪。罰となりてその身に降り注げ。アイ・ス・ダガー開放……時よ、その歩みを止め我の言霊を乗せ氷結の時を降り注げ! コールド・タイム!!」
空より降り注ぐ氷の結晶。それが雨のようになり触れた者を容赦なく凍らせる。その後、地上へと動かなくなった龍人兵が落ちてくる。
だがその攻撃を読んでいた龍人兵も当然おり、ギリギリ躱しながら逃げ出すのが見える。
「往生際の悪い……白よ、あたしの思いに答えてちょうだい? あぁ~天上の御方のために、白き咆哮を聞かせてぇぇぇぇ!! 白竜の咆哮開放……白く白く、ただ白くあれ。視界を死海と変えてその道を閉ざせ!! 白き毒龍の咆哮!!」
全力逃亡中の龍人兵の視界が急速に奪われる。平衡感覚がなくなり、上に向かっているのか下に向かっているのかまったく分からなくなった。
やがて溺れているかのように呼吸困難となり、地上へとバラバラと落ちてくる。
さらに呆然と見ていたリザードマンへ向けて、二人は口をガバリと開いて赤と青の雷撃を放つ。
雷撃が直撃し、真っ赤に融解する地面が膨らんだ瞬間、盛大な爆発がおこり吹き飛ぶリザードマン達。
レッドとレティシャは器用に人間がいない場所を狙い撃ち、その数をドンドン減らしていく。
やがてほぼ壊滅状態となったのを見た二人は、グルリと流へと向き直り大興奮で活躍を報告する。
「おおお、天上の御方!! 我の活躍を見ていただけましたか!? 完・全・勝・利です!!」
「主様ぁぁ!! このレティシャの活躍はいかがでしたかぁん!? 超・絶・勝・利です!!」
「…………俺、もうお家へ帰りたい」
「「その魂が抜けたお顔もステキです!! 主様ぁぁぁぁぁぁ!!」」
そんなもう色々とありえない状況を、ただ呆然と眺める騎士と冒険者たち。さすがのセリアですら、この怒涛のながれについていけず、口をあんぐりと開いているしまつだ。
「え~と……レッドとレティシャだったか? その、助かった? よ」
「恐れ多いお言葉!! どうぞ我を名前ではなく犬とお呼びくだされ!!」
「そうですわ主さまぁん!! あたしは泥棒猫とでもお呼びください!!」
「「屈辱的で侮蔑した表情でゼヒ!!」」
恍惚とした表情で、アホのような事を真顔で懇願する二人。
ふと見れば、エルギスが実の娘に踏まれながら涙をながしていた。
「犬はワレですでに埋まってるから、他にするんだワン。あるじぃ、おっさんが泣いているワン……」
「言うなワン太郎。俺が泣きたい、切実に」
「ここまで来ると、流様っておかしな人を引き寄せる何かがあるんだろうね。あ、向日葵ちゃんそんな所で寝ないでよ、パンツ見えてるよ!?」
「お前も含めてなんだこれ、だわ……それでお前たち、ちゃんと『加減』したんだろうな?」
流のピリリとした言葉に、レッドとレティシャはニヤリと笑うと、自信たっぷりに頷く。
「ええ、リザードマン共は駆逐しましたが、父を初め全員帰還出来る程度には生かしてあります」
「我も同じですな。まったく、天上の偉大なる御方を空から見下ろすとは言語道断!! きっちり罰は受けさせましたゆえ、なにとぞご勘弁くださいませ」
「ならいい。別に龍人と敵対する気もないしな」
「ここまでしておいて、それはどうかと思うよ流様?」
「おお、我を許していただけましたか!!」
「主様サイコーです!! ほっとしました」
「「では、ご褒美に雑草とお呼びください!!」」
「どーしてそうなる!? ったく、そんなに呼び名にこだわるんだよ?」
ワン太郎は流の肩によじ登ると、コッソリと話し出す。
「あまり大きな声ではいえないんだけどね、名付けの儀式はこの世界でも有効だワンよ。ワレも主に名付けられた事で、この姿でも十分戦えるようになったワン」
「そういうものか……まぁ、このままコイツラ放置したら厄介な存在と言うのは、今の戦闘を見て切実に思った。なら手元に置いておくほうが安心か? しかたない、主になってみるか!!」
その言葉で歓喜する二人。思わず倒れてしまうのではと思うほど興奮しているのが分かる。正直ドン引きだ。
「はぁ、そうだなぁ……レッドは右の角があるから……『R』だ。レティシャは左の角があるから『L』な。この二つをお前たちの真名とする。これをもって俺に仕えろ、いいな?」
「「ヒイイイイイイイ!?」」
瞬間二人が悲鳴を上げるように倒れる。すると魔法陣のようなモノが上下に現れて、二人を包み込む。
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