日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第九章:奪還作戦と、国の闇

419:別れは餞別を贈ろう

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「副長もいるから安心はしているけど、無事にたどり着いてほしいわね」
「ジャバへの土産もあるし、湖をショートカットして進むからきっと大丈夫さ」
「ナガレ、この村を開放してくれて感謝する。私の商隊もここへ来るたびに胸を締め付けられる思いだったんだ」
「まぁなり行きだしな。それにこんな馬鹿げた事を許せるほど、俺は心が広くない。ただそれだけの事さ」

 流たちは住民の後ろ姿を見送る。村長のマックントッシュは、何度も振り返り頭を下げながら去っていく。
 村人たちは、途中あの死体置き場に立ち寄ると言う。それはあの死者たちを、埋葬してから向かうとの事だったが。

「……ナガレ。どうしたのよ?」
「いや、あのムナクソ悪いオブジェを思い出して、な。エルヴィス、お前が見せたかったものはこれだったのか」

 流は腕組みをしていたが、左手で右腕をギュっと握りしめる。
 食い込むほど強く握るのを見たエルヴィスは、流へ向けて一つうなずいてから話す。

「そうだ。この村は特に酷い場所の一つだ」
「一つ? うそだろ? まだあるのかこんな場所が」
「残念ながらある。そしてそこは全てトエトリーはおろか、アイヅァルムからも遠い」
「そうか……開放してやりてぇな。しかしこれがこの国の闇か」
「そうだね。楽しむだけに殺し、それを何とも思わないどころか、当たり前の権利だと思っているの」
「セリア様の言う通りだ。それが自分の生産基盤を壊す、愚かな行為とも気が付かずにな」

 流はもう見えなくなった、村人たちが去っていった場所を見つめる。
 そして何かを決意するように数度うなずくと、背後にいる全員に向き直る。

「俺はセリアを救出後、この国の困ってる奴らをなんとかしてやりたいと思う。多分それは俺の敵を倒すことと、同じ意味合いがあると思う」
「昨日言っていた人形……ね?」
「私も驚いたが、そんな存在がいる事に恐怖を感じる。いや、だからこそ父は狂ったのか?」
「そうだ。多分人形が、この国の闇たる元凶じゃないかと思う。そしてエルヴィスの親父が狂ったのも、そのせいかもしれない」

 流のその言葉を聞き、セリアとエルヴィスはうなずく。そしてエルヴィスは次の目的地を告げる。

「ナガレの気持ちはよく分かった。俺も今のアルマーク商会とは縁を切ろう。だがそれは祖父と会ってからだ。まずは祖父のいる山荘へと向かい、そこから王都へ行こう」
「わかった。お前の言うことだから、近道なんだろう。それに俺もお前の爺さんと話したいと思っていたところだ」
「ああ、祖父のいる山荘は王家の天領でな。一般人は立ち入ることは不可能だが、私がいれば問題ない。そして王都へと伸びる整備された道があるから、より早く着けるだろう」
「よし、じゃあ案内頼む!」

 流は嵐影へと騎乗する。それを見た全員も軍馬へと騎乗し、早々に村を出発した。
 村を出てしばらくすると、まるでアフリカの草原のような、木々がまばらに生えている草原を進む。
 やがて一行の目前に、ポツリ、ポツリと人間の死体が見える。

「あいつこんな事してたのか。まぁ、因果応報ってやつかね」
「そうだね……それにしても、こんな殺され方をしているとはね」
「うっぷッ。二人ともよく平気ですね。エッジ・エッジドラゴンが、まさかこんな事をするとは……」

 村人がハンティングされ、そのトロフィーを見て参考にでもしたのか、残虐にいたぶられた死体がところどころ見つかる。
 さらに進むと頭は無いが、見たことある少し立派な鎧を装備した死体が目に入る。

「前方の死体、あれはキースじゃない?」
「そうですなお嬢様。ワシもあの鎧には見覚えがあります」
「間違いない、あの腰の袋は俺の路銀入れだ」
「ふん、小僧の言った通りじゃな」

 流は路銀いれに、妖力を込めた金貨を忍ばせる。それを知らず、キースは持ち去った結果、エッジ・エッジドラゴンを引き寄せる結果になり、全滅したのだった。
 だがまさかこんな酷たらしい事になっているとは、考案した流も予想外だったが。

「キースさんよ、そいつはくれてやる。三途の川の渡し賃だ。大事にあの世へ持って行ってくれ」
「もったいない。拾わないのか?」
「いいさ。まぁ商人としてはどうかと思う行動だがな」
「違いない」

 流はエルヴィスと呆れたように苦笑いを浮かべると、そのまま走り去る。
 やがて木々がまばらな草原が終わり、遠くに山が見え始めた頃には原色系の美しい花が咲き乱れる、花畑の中を突き進む。
 
 それは先程見た凄惨な現場を忘れるには十分な、とても美しい光景と香りで満ちていた。
 やがて小川がながれている場所へさしかかると、そこで小休止をかねた昼食をとる。

「ナガレ、あの山が見えるだろう? あの不自然に山頂が真っ平らな山だ」
「恐ろしいほど真っ平らだな。人の手が入っているのか?」
「そうだ。王宮直轄の魔法師が、金に糸目をつけず作った場所だ。まったく愚かな事だよ」
「愚か? どうしてだよ」
「何千人と言う、奴隷を使役して使い潰し、あれを作ったからさ」

 遠くから見ても分かる、その異様な大地。
 それは人柱のうえに成り立つ、恐ろしい現実だからだった。
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