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第九章:奪還作戦と、国の闇
437:アノ霊とコノ霊を勘違い
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扉が上にスライドし、完全に開ききる前にお湯が吹き出す。やがて完全に開く頃には、湯が洪水のように押し寄せ、二つの物体を押しながしてくる。
「「ぬうおおおおおおおお!?」」
「「「キャアアアアアア!?」」」
太い声と、羞恥の悲鳴がそれぞれ二人。そして歓声が一人。そんな美琴たちに迫る、ゴロゴロと芋が転がるように、ながされる二つの物体。それはいわずもがなアイツだ。
やがて中心部へとながれてくる二人は、予想以上に深い場所に転がるようにながれ着く。
暴れるようにもがきながら、やっとの事で立ち上がると……。
「ブッハーーーーッ!! 一体なんだ!?」
「な、流様どうしてここに!?」
「ちょっとナガレ!! どこから来るのよ!!」
「マイ・マスター! 大胆すぎてもれちゃいます!!」
「「ちょっとやめなさいよ」」
流は声のするほうを見上げる。湯けむりの薄いそこに、そびえ立つ巨山が六つ。そして控えめで、遠慮がすぎる山がそびえ立つ。
「うむ。見事な六つの山が実に美しい。型がよくハリも十分だ。さらに全身とのバランスがまさに黄金比! 無駄が無い芸術のような裸体が、見るものを虜にするだろう! ……さ、あがるか……」
「ナ~ガ~レェ? 随分と余裕ねぇ?」
「流様ぁ。ど~して私『だけ』一瞥して、とても残念そうな顔になるのかなぁ?」
「ヒッ!?」
くるりと背を向け風呂から上がろうとする流。その肩をガッシリと掴む、美琴とセリアは実にいい笑顔だ。ただ目がまったく笑っていないが。
それを気配察知で感知した流は、壊れたブリキのオモチャのように〝ギギギ〟と振り返る。
それは妖人となった流ですら、魂も凍りつきそうな瞳の奥に宿る怒りに震える。
「ちょ、待て! 話せば分かる!!」
「「なんの話かなぁ?」」
「ご、誤解なんだ!!」
「「ここ、一階だよぅ?」」
「だ……だから、ギャアアアアアッ!?」
流は美琴とセリアに、芸術的なほどの手際で振り向かせられた瞬間、みぞおちへ一撃入れられる。
あまりの迷いのない行動に、流もどうすることも出来ず痛恨の一撃!!
そのまま白目をむき、湯船に沈みゆく流を見て、美琴とセリアは声を揃え。
「「成敗!!」」
そう言うと、固く握手をする二人の顔は実にまぶしかった。
さて。この風呂場に、もう一人いたはずの男がいない。
セリアはその男を探す。風呂にはおらず、どこかと辺りを見回すと楽しそうに笑う男を見つける。
「はぁ~。ルーセント、これは一体どういうことかしら?」
「はっはっは。眼福眼福! いや~お嬢様、この老骨めもお若い娘ごらの入浴を見れて、寿命がのびましたわい」
「まったく、ほんと貴方は……」
見れば東屋でドリンクを飲みながら、この騒動を高みの見物をしている御老体がいた。
ルーセントは右手に持った、青い色の柑橘系でほんのり甘いジュースをかかげる。
そのまま楽しそうに一口飲むと、また陽気に笑い出すのだった。
Lは沈んだ流を回収後、浴槽の外にある長椅子へ横たわらせる。その表情は実に楽しげであり、ニヤニヤが止まらない。
深夜に道で遭遇したら、憲兵に通報まった無しの案件であるほどに、本当に不気味だ。
気絶した流に呆れながらも、この原因を作った本人へと美琴とセリアは視線を向ける。
「ふふふ。楽しんでいただけたようで、何よりですわ」
「「楽しんでいません!!」」
「まったく。まさかナガレとルーセントが、出てくるなんて思わないわよ」
「本当だよ~。しかも人の胸見てガッカリしてるし!」
「まぁまぁ。それ以上は減りようもありません事ですし、そう怒るものじゃなくてよ?」
「そりゃ減りませんけど、減りませんけどぉ!?」
「よく考えればそれもそうね……ミコト。そう怒るものじゃないわ。見られても別に減らないし!」
「セリアちゃんの、そういう男らしさが羨ましいよ……ハァ~」
「お嬢様は戦場で男どもに囲まれ、そう言うのを気にしていられない状況もありますからな」
「気にしようよ、セリアちゃん……」
「前向きに善処するわよ。それはそうと伯爵、突然コレはないですよ!」
「そうですよ! 驚きすぎて死んじゃうかと思いました、死んでるけど!」
お怒りの二人を見つめるメイド長は、ガクリと肩を落とし「だから申しましたのに」とポソリと呟く。
東屋で着替えを済ませ、ゆったりとエールを呑むルーセント。そんな御老体は、プロのメイドを口説いてる。
セリアは思う。あのメイドの顔はどこかで見たことがある。「そうだ、あれは実家の東門の守将と似ている気がする娘だ!」と。
その姿を見たセリアは、アイヅァルム東門の守将であり、ルーセントの奥さんである「鬼刃のバーバラ」へ報告しようと固く決意する。おじいちゃんの命も後わずかかもしれない。
その後、楽しげに(?)会話がはずみ、もう一度湯船に入いる四人。
イルミスはまた美琴を背後から抱く。美琴もあきらめたのか、自然にその行為を受け入れたようだ。素直でよろしい。
そんな素直になった美琴の髪を撫でながら、イルミスは疑問に思っていた事を口にする。
「ねぇミコト。貴女の体ってどうしてこんなに冷たいのかしらね? やっぱり精霊だからなのかしら?」
「え? 精霊? 私は違いますよ」
「嘘でしょう? だって貴女、日本刀から抜け出てきたじゃありませんこと?」
「それはそうですよ。だって私その刀に取り憑いている、オバケだもん」
「…………え? わたくしの聞き違いかしら、今オバケと聞こえましたが?」
「そうですよ、オバケです。その刀を作った時に死んじゃって、それからずーっと悲恋に住んでいるんだよ」
イルミスの顔は次第に青くなる。そして恐る恐る口を開き、もう一度確認する。
「……えっと。……ゴーストと言うことですの?」
「そうですよ、幽霊でオバケで、ゴーストです!」
「………………ッ」
イルミスはその言葉を聞くと、一瞬で血の気がひき気絶する。
「ちょ、伯爵大丈夫!? メイド長、早く来て! イルミス伯爵が気絶されたわ!!」
「やれやれです。イルスミ様はゴーストが苦手なのです。きっとミコトお嬢様を精霊と勘違いしていたのでしょうね。いい薬です。ハァ~」
メイド長は長く嘆息すると、イルミスを湯船から救出しつつ、体を拭くのだった。
「「ぬうおおおおおおおお!?」」
「「「キャアアアアアア!?」」」
太い声と、羞恥の悲鳴がそれぞれ二人。そして歓声が一人。そんな美琴たちに迫る、ゴロゴロと芋が転がるように、ながされる二つの物体。それはいわずもがなアイツだ。
やがて中心部へとながれてくる二人は、予想以上に深い場所に転がるようにながれ着く。
暴れるようにもがきながら、やっとの事で立ち上がると……。
「ブッハーーーーッ!! 一体なんだ!?」
「な、流様どうしてここに!?」
「ちょっとナガレ!! どこから来るのよ!!」
「マイ・マスター! 大胆すぎてもれちゃいます!!」
「「ちょっとやめなさいよ」」
流は声のするほうを見上げる。湯けむりの薄いそこに、そびえ立つ巨山が六つ。そして控えめで、遠慮がすぎる山がそびえ立つ。
「うむ。見事な六つの山が実に美しい。型がよくハリも十分だ。さらに全身とのバランスがまさに黄金比! 無駄が無い芸術のような裸体が、見るものを虜にするだろう! ……さ、あがるか……」
「ナ~ガ~レェ? 随分と余裕ねぇ?」
「流様ぁ。ど~して私『だけ』一瞥して、とても残念そうな顔になるのかなぁ?」
「ヒッ!?」
くるりと背を向け風呂から上がろうとする流。その肩をガッシリと掴む、美琴とセリアは実にいい笑顔だ。ただ目がまったく笑っていないが。
それを気配察知で感知した流は、壊れたブリキのオモチャのように〝ギギギ〟と振り返る。
それは妖人となった流ですら、魂も凍りつきそうな瞳の奥に宿る怒りに震える。
「ちょ、待て! 話せば分かる!!」
「「なんの話かなぁ?」」
「ご、誤解なんだ!!」
「「ここ、一階だよぅ?」」
「だ……だから、ギャアアアアアッ!?」
流は美琴とセリアに、芸術的なほどの手際で振り向かせられた瞬間、みぞおちへ一撃入れられる。
あまりの迷いのない行動に、流もどうすることも出来ず痛恨の一撃!!
そのまま白目をむき、湯船に沈みゆく流を見て、美琴とセリアは声を揃え。
「「成敗!!」」
そう言うと、固く握手をする二人の顔は実にまぶしかった。
さて。この風呂場に、もう一人いたはずの男がいない。
セリアはその男を探す。風呂にはおらず、どこかと辺りを見回すと楽しそうに笑う男を見つける。
「はぁ~。ルーセント、これは一体どういうことかしら?」
「はっはっは。眼福眼福! いや~お嬢様、この老骨めもお若い娘ごらの入浴を見れて、寿命がのびましたわい」
「まったく、ほんと貴方は……」
見れば東屋でドリンクを飲みながら、この騒動を高みの見物をしている御老体がいた。
ルーセントは右手に持った、青い色の柑橘系でほんのり甘いジュースをかかげる。
そのまま楽しそうに一口飲むと、また陽気に笑い出すのだった。
Lは沈んだ流を回収後、浴槽の外にある長椅子へ横たわらせる。その表情は実に楽しげであり、ニヤニヤが止まらない。
深夜に道で遭遇したら、憲兵に通報まった無しの案件であるほどに、本当に不気味だ。
気絶した流に呆れながらも、この原因を作った本人へと美琴とセリアは視線を向ける。
「ふふふ。楽しんでいただけたようで、何よりですわ」
「「楽しんでいません!!」」
「まったく。まさかナガレとルーセントが、出てくるなんて思わないわよ」
「本当だよ~。しかも人の胸見てガッカリしてるし!」
「まぁまぁ。それ以上は減りようもありません事ですし、そう怒るものじゃなくてよ?」
「そりゃ減りませんけど、減りませんけどぉ!?」
「よく考えればそれもそうね……ミコト。そう怒るものじゃないわ。見られても別に減らないし!」
「セリアちゃんの、そういう男らしさが羨ましいよ……ハァ~」
「お嬢様は戦場で男どもに囲まれ、そう言うのを気にしていられない状況もありますからな」
「気にしようよ、セリアちゃん……」
「前向きに善処するわよ。それはそうと伯爵、突然コレはないですよ!」
「そうですよ! 驚きすぎて死んじゃうかと思いました、死んでるけど!」
お怒りの二人を見つめるメイド長は、ガクリと肩を落とし「だから申しましたのに」とポソリと呟く。
東屋で着替えを済ませ、ゆったりとエールを呑むルーセント。そんな御老体は、プロのメイドを口説いてる。
セリアは思う。あのメイドの顔はどこかで見たことがある。「そうだ、あれは実家の東門の守将と似ている気がする娘だ!」と。
その姿を見たセリアは、アイヅァルム東門の守将であり、ルーセントの奥さんである「鬼刃のバーバラ」へ報告しようと固く決意する。おじいちゃんの命も後わずかかもしれない。
その後、楽しげに(?)会話がはずみ、もう一度湯船に入いる四人。
イルミスはまた美琴を背後から抱く。美琴もあきらめたのか、自然にその行為を受け入れたようだ。素直でよろしい。
そんな素直になった美琴の髪を撫でながら、イルミスは疑問に思っていた事を口にする。
「ねぇミコト。貴女の体ってどうしてこんなに冷たいのかしらね? やっぱり精霊だからなのかしら?」
「え? 精霊? 私は違いますよ」
「嘘でしょう? だって貴女、日本刀から抜け出てきたじゃありませんこと?」
「それはそうですよ。だって私その刀に取り憑いている、オバケだもん」
「…………え? わたくしの聞き違いかしら、今オバケと聞こえましたが?」
「そうですよ、オバケです。その刀を作った時に死んじゃって、それからずーっと悲恋に住んでいるんだよ」
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「……えっと。……ゴーストと言うことですの?」
「そうですよ、幽霊でオバケで、ゴーストです!」
「………………ッ」
イルミスはその言葉を聞くと、一瞬で血の気がひき気絶する。
「ちょ、伯爵大丈夫!? メイド長、早く来て! イルミス伯爵が気絶されたわ!!」
「やれやれです。イルスミ様はゴーストが苦手なのです。きっとミコトお嬢様を精霊と勘違いしていたのでしょうね。いい薬です。ハァ~」
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