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第九章:奪還作戦と、国の闇
442:六角の間
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「あら、わたしくとした事がはしたない。思わず笑みがこぼれてしまいましたわ」
「笑みねぇ、実に〝にちゃり〟としたいい笑顔だったよイルミス。それで準備が整うまでもう一つ聞いても?」
「ええ、答えれる範囲ならなんなりと」
「では俺が真の侍と思ったのは? そしてその悲恋に向ける、異常なほどの眼差しの理由が知りたいものだよ」
流は先程よりイルミスが悲恋を、度々凝視しているのが気になっていた。さらに会ったばかりだと言うのに、真っ先に悲恋へ関心を示したこともだ。
「ふふふ、それは簡単な事ですわよ? その刀が貴方の体の一部にしか見えませんもの。真の侍は刀を手の延長のように使うとか」
「手の延長か。まぁそうだな」
「ねぇナガレ。貴方のその刀……そちらの言葉で悲レン……いや、悲恋ね。まぁ、なんと悲しい名前の刀かしら。だから、ね。その刀を開放してあ・げ・る」
「開放ねぇ……余計なお世話と言うものだが?」
流は妖気をイルミスへと叩きつけるが、素人であるはずの彼女は微動だにしない。
それどころか、怪しい笑みをますます深くし、その視線は悲恋から離れず。
「流様。私分かっちゃったかも」
「ハァ~、おまえもか? 俺もだ」
美琴と流の言葉の理由、それを確認しようとセリアは口を開く。
「ナガレ、ミコト。それは一体どういう理由なの? 私には、異常な行動にしか見えないんだけど?」
「まぁ~!? セリアも酷いことを言いますのわね。異常とは心外ですわ」
「……なるほど、そう言うことですか。ヤレヤレ、それではセリア様は分かるはずもない」
「ちょと、みんな何をそんなに分かったと言うのよ?」
セリアとルーセントが不思議そうな顔で四人を見る。ちょうどその時、奥の部屋からメイドが現れ一礼。
「みなさま。大変お待たせいたしました。準備が整いましたので、奥の間へおいでくださいませ」
「さぁ、演舞の間へと行きましょう。そこでナガレの問にお答えいたしますわ」
「だ、そうだぞセリア。まったく、この世界は変態ばかりで困る」
「鏡が必要ですか? まぁ、とりあえず悲恋へ戻るので、それを見てくださいね」
「失礼なやつ……ともいい切れないのがなんとも、な」
美琴が苦笑い気味に悲恋へ吸い込まれる。それを腰に佩剣する流は、奥へと続く扉へと進む。
それに不満げな表情を浮かべたセリアとルーセントが続き、エルヴィスは流と目線で呆れるように語る。
演舞の間と呼ばれた入り口へと全員が揃うと、右の家令長、左のメイド長が左手を胸に当てながら、右手で扉を押し開く。
そこには予想外の光景が広がる。まず驚くほど広い。六角形の室内は、向こうの壁まで、入り口から二十メートルはありそうだ。
さらに天井は十五メートルほどの吹き抜けになっており、二階から観戦できるようになっている。
そして贅沢極まる魔具の光。贅をつくした魔具は、悪魔と天使の彫像が、緑色の光で部屋全体に明りを灯す。
緑色の光で浮かび上がる、壁に飾られた武器と防具の数々。実に美しく、実に違和感の塊が見るものを圧倒する。
異様ながらも気品ある空間に、一同は立ち止まる。エルヴィスですら初めてなのか、驚きの表情を隠しきれない。
そんな様子を獲物を待つように、ジットリと見つめる伯爵は、ゆっくりと舌を出し上唇を舐める。
「さぁ……ナガレ。中央へおいでなさいな」
「あ~今日は最後までコレか? 俺疲れてるんだけどね」
『仕方ないですよ。分かりあうためなんですから』
「歪んだ愛はご遠慮願いたいねぇ」
すでに中央へと進み、潤む瞳で流を見つめる伯爵様。そんなイルミスの腰には「備前長船」が佩剣されている。
それを焦らさないで! まだなの? と言うように、指で刀の持ちて部分の柄を、撫でるように叩く。
「さぁナガレ。存分に語り合いましょう? わたくしの備前長船と、貴方の悲恋美琴で心ゆくまで!!」
「いいのか? 死ぬぞ?」
「あああん♪ いい、すっごくイイですわ! その目、その声、その威圧力。どれもこれも、わたくしを殺せるほどの実力……だからこそッ!!」
イルミスは備前長船を納刀したまま、腰を落とす。そう、それは――。
「――オイ。本気で死にたいようだな? どこでそれを知った? どこでそれを盗んだ? どこで『ジジイ流』を継承した?」
「ジジイ流? ふふ……。あは…………アッハッハッハ!! そう、そうなのね。これを知っているのに、ジジイ流とはね。ならば貴方は中伝の使い手。やはり古廻千石様は正しかった。さぁ問答無用、ここからは殺し合いですわ」
イルミスは隠しきれない殺気を、もはや晒す事をためらわない。突如にして膨れ上がる膨大な殺気。
直接ソレを当てられていないエルヴィスですら、脂汗が額からこぼれ落ちるほど、濃密で濃厚なソレは容赦なく周囲を刺激する。
「まったく、我慢も出来ねぇか? 先程の品性はどこへ消えた、下品な女だよ」
「あら。そういう貴方も、怒気で周囲を威圧していますわよ。ねぇ、エルヴィス」
さらに流からは怒気が叩きつけられ、気を抜けば意識を失いそうなほどのプレッシャーがエルヴィスを襲う。
セリアとルーセントは視線を鋭くし、二人を睨みつけるように見守る。
やがて流も、イルミスの攻撃範囲に入るギリギリで立ち止まると、同じ姿勢で構えるのだった。
「笑みねぇ、実に〝にちゃり〟としたいい笑顔だったよイルミス。それで準備が整うまでもう一つ聞いても?」
「ええ、答えれる範囲ならなんなりと」
「では俺が真の侍と思ったのは? そしてその悲恋に向ける、異常なほどの眼差しの理由が知りたいものだよ」
流は先程よりイルミスが悲恋を、度々凝視しているのが気になっていた。さらに会ったばかりだと言うのに、真っ先に悲恋へ関心を示したこともだ。
「ふふふ、それは簡単な事ですわよ? その刀が貴方の体の一部にしか見えませんもの。真の侍は刀を手の延長のように使うとか」
「手の延長か。まぁそうだな」
「ねぇナガレ。貴方のその刀……そちらの言葉で悲レン……いや、悲恋ね。まぁ、なんと悲しい名前の刀かしら。だから、ね。その刀を開放してあ・げ・る」
「開放ねぇ……余計なお世話と言うものだが?」
流は妖気をイルミスへと叩きつけるが、素人であるはずの彼女は微動だにしない。
それどころか、怪しい笑みをますます深くし、その視線は悲恋から離れず。
「流様。私分かっちゃったかも」
「ハァ~、おまえもか? 俺もだ」
美琴と流の言葉の理由、それを確認しようとセリアは口を開く。
「ナガレ、ミコト。それは一体どういう理由なの? 私には、異常な行動にしか見えないんだけど?」
「まぁ~!? セリアも酷いことを言いますのわね。異常とは心外ですわ」
「……なるほど、そう言うことですか。ヤレヤレ、それではセリア様は分かるはずもない」
「ちょと、みんな何をそんなに分かったと言うのよ?」
セリアとルーセントが不思議そうな顔で四人を見る。ちょうどその時、奥の部屋からメイドが現れ一礼。
「みなさま。大変お待たせいたしました。準備が整いましたので、奥の間へおいでくださいませ」
「さぁ、演舞の間へと行きましょう。そこでナガレの問にお答えいたしますわ」
「だ、そうだぞセリア。まったく、この世界は変態ばかりで困る」
「鏡が必要ですか? まぁ、とりあえず悲恋へ戻るので、それを見てくださいね」
「失礼なやつ……ともいい切れないのがなんとも、な」
美琴が苦笑い気味に悲恋へ吸い込まれる。それを腰に佩剣する流は、奥へと続く扉へと進む。
それに不満げな表情を浮かべたセリアとルーセントが続き、エルヴィスは流と目線で呆れるように語る。
演舞の間と呼ばれた入り口へと全員が揃うと、右の家令長、左のメイド長が左手を胸に当てながら、右手で扉を押し開く。
そこには予想外の光景が広がる。まず驚くほど広い。六角形の室内は、向こうの壁まで、入り口から二十メートルはありそうだ。
さらに天井は十五メートルほどの吹き抜けになっており、二階から観戦できるようになっている。
そして贅沢極まる魔具の光。贅をつくした魔具は、悪魔と天使の彫像が、緑色の光で部屋全体に明りを灯す。
緑色の光で浮かび上がる、壁に飾られた武器と防具の数々。実に美しく、実に違和感の塊が見るものを圧倒する。
異様ながらも気品ある空間に、一同は立ち止まる。エルヴィスですら初めてなのか、驚きの表情を隠しきれない。
そんな様子を獲物を待つように、ジットリと見つめる伯爵は、ゆっくりと舌を出し上唇を舐める。
「さぁ……ナガレ。中央へおいでなさいな」
「あ~今日は最後までコレか? 俺疲れてるんだけどね」
『仕方ないですよ。分かりあうためなんですから』
「歪んだ愛はご遠慮願いたいねぇ」
すでに中央へと進み、潤む瞳で流を見つめる伯爵様。そんなイルミスの腰には「備前長船」が佩剣されている。
それを焦らさないで! まだなの? と言うように、指で刀の持ちて部分の柄を、撫でるように叩く。
「さぁナガレ。存分に語り合いましょう? わたくしの備前長船と、貴方の悲恋美琴で心ゆくまで!!」
「いいのか? 死ぬぞ?」
「あああん♪ いい、すっごくイイですわ! その目、その声、その威圧力。どれもこれも、わたくしを殺せるほどの実力……だからこそッ!!」
イルミスは備前長船を納刀したまま、腰を落とす。そう、それは――。
「――オイ。本気で死にたいようだな? どこでそれを知った? どこでそれを盗んだ? どこで『ジジイ流』を継承した?」
「ジジイ流? ふふ……。あは…………アッハッハッハ!! そう、そうなのね。これを知っているのに、ジジイ流とはね。ならば貴方は中伝の使い手。やはり古廻千石様は正しかった。さぁ問答無用、ここからは殺し合いですわ」
イルミスは隠しきれない殺気を、もはや晒す事をためらわない。突如にして膨れ上がる膨大な殺気。
直接ソレを当てられていないエルヴィスですら、脂汗が額からこぼれ落ちるほど、濃密で濃厚なソレは容赦なく周囲を刺激する。
「まったく、我慢も出来ねぇか? 先程の品性はどこへ消えた、下品な女だよ」
「あら。そういう貴方も、怒気で周囲を威圧していますわよ。ねぇ、エルヴィス」
さらに流からは怒気が叩きつけられ、気を抜けば意識を失いそうなほどのプレッシャーがエルヴィスを襲う。
セリアとルーセントは視線を鋭くし、二人を睨みつけるように見守る。
やがて流も、イルミスの攻撃範囲に入るギリギリで立ち止まると、同じ姿勢で構えるのだった。
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