日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第九章:奪還作戦と、国の闇

451:もう一人の大切な存在

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「千石、このぎょくをイルミスの口へと入れるがよい。そして真名をイルミスへあたえ、お前の眷属として扱うと同時に、未来の者へ魂の欠片思いを託す念を込めるのじゃ。真名は自分が好きな名にするとよい。じゃが、強く思う名にせねばならぬぞえ?」
「……わかった。強く思う名、か」

 千石は考える。一番は当然美琴だ。だが、実はそれと同じくらい気になる娘がいた。
 正確に言うと、その娘の将来が心配であり、その娘の子供も同様に心配であった。
 
(あいつ、無事に子は生めたのだろうか……いや、無事だからこその未来かい……。古廻の家系を絶やさぬためとは言え、あの娘には本当に悪いことをしたもんだ……)

 異世界へと来るため、千石は古廻の長としての役目をはたす。
 それは長の家系を存続させるため、一族のある娘と子をなすと言うものだ。
 千石はそれを良しとせず、色々あらがったが、長老たちに泣きつかれ仕方なく娘と関係を持つ。

 年齢はあの当時十八歳で千石より二つ若く、黒髪がとても見事な愛嬌のある笑い方が特徴の、名に相応しく、奥ゆかしく美しい面立ちの娘だった。
 その娘は千石を好いていたらしいのだが、その千石は美琴他の娘の事しか考えられないと噂を聞いていたらしい。
 だからその娘は、物陰からコッソリと千石を見つめていただけの片思いだったと、後に千石はその娘より聞かされた。

 そんな娘と一夜の時を過ごし、めでたく妊娠したと報告があり、異世界へと旅立つ事が決定する。
 旅立つ前夜、その娘が千石の元へとやって来て、本当に楽しそうに語らいをし、その中での笑顔を鮮明に思い出す。

 最後にその娘は自分の腹を撫で、涙をながしつつも明るく微笑む。

 ――千石様、異世界へ行ってもご壮健で。お早いお戻りを。
 ――ありがとうよ。ちょっくら行って来ぁ。じゃあまたな、お前も元気でな……

「……綾。そう、もう一人の俺の心から大事なやつの名前だ。イルミス、お前の真名は『綾』とする。これよりその真名は、俺の子孫が来るまで誰にも明かすことを禁じる」
「うむ。その思いを玉へと封じよ。イルミスが覚醒後、全て玉からおまえの思いが伝わるはずじゃ」
「そうかい。それとイルミス……いや、綾。お前にこの戦いが始まる前に、神との話しをしたな。だからお前は俺の子孫に仕えろ。そのための権限も、お前が真名を明かしたと同時にヤツ……古廻流へと移譲する」

 アリスは千石の言っている意味に困惑するも、死に際に嘘をつくとも思えず、それが真実なのだと理解する。
 そして左右に頭をふると、千石へと問いかける。

「その話が本当じゃとして、いや本当なのじゃろう。それでどうやって見つけるのじゃ? イルミスも見つけるのは困難じゃぞ?」
「あぁ、それも心配ないらしいぜ。今からきっかり三百年後に現れ、イルミスの領地にくるんだとさ。はぁ……神ってのは万能なんだか違うのか、本当に分からないねぇ」

 千石は時空神より聞いたことを思い出す。なぜ子孫が異世界へくる事になったのかを。
 だからこそ、絶対に失敗は出来ないと奮闘したが、結果は神の言葉どおりになる。
 ただその子孫、古廻流が持つと言う刀が、愛する美琴が打ったと聞いたが、その後美琴がどうなったかは教えてくれなかった。

「そろそろ時間か……もう体の感覚がねぇぜ」
「千石……世話になったのう……あの世でも馬鹿をして過ごすがよいのじゃ」
「アリスも達者で死ぬまで生きろよ。まぁ死なないんだろうがな」
「もぅ、馬鹿! 最後くらい真面目にしなさいよね!」
「くくく。素が出てるぞエセ真祖様」
「う、うるさいのじゃ! とっとと逝ってしまえ!」
「はいはい、今逝きますよ~」

 千石は備前長船をイルミスの胸の上に置くと、神気を込める。それは残りの命すべてと、イルミスへの思いをありったけ込めた、守り刀として。

「……はぁ。これで思い残すことはねぇぜ。さらばだイルミス、そして綾。馬鹿な子孫を頼んだぜ? 世話になった。お前達もな」

 千石を静かに見守っていた家臣たちは静かに泣く。そして――。

(千石わかったわ。貴方の思い必ず叶えてみせると誓うわ。でも……悲しいな、最後に話がしたかった……愛しているわ千石、これからも永遠に……)

 千石は赤い玉に思いを込める。そしてイルミスの口へとそっと含ませると、しずかに息を引き取るのだった。



 ◇◇◇



 そうイルミスは話し終えると、流の瞳を静かにみつめ、跪いた姿勢で話を続ける。

「――ここまでが、わたくしが経験した全てですわ」
「千石……お前は一体何を知っていたんだ。それにこの感覚、妙に馴染む」
『まさかここにも、時空神が関与していたなんて……それに千石様……?』

 流はイルミスが話している最中、「千石の血」と言う魂の欠片が、体に徐々に馴染む感覚に驚いていた。
 まるで砂が水を吸うように、体がそれを自然に受け入れ、力がみなぎってくるのを感じていたのだった。
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