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第九章:奪還作戦と、国の闇
453:古廻流の美術鑑賞会
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そんなイルミスの姿に、流は呆れるように頭部を両手で掴む。
「きゃ!? なんですの?」
「きゃ!? じゃねーよ、〝きゃ〟じゃ。そろそろ本当の顔を見せてくれないか? ただの友達としてな?」
「もぅ、いいじゃないですの。今更貴方への愛は変わりませんわ」
「友達としてな? んで?」
イルミスは「もぅ」と頬を膨らませながら、指を鳴らす。
すると、見た目は若いが、三十代ほどの特徴が徐々になくなり、二十代前半くらいの容姿になる。
しかも髪は黒髪になり、瞳はルビーのように赤いが、実に魅力的だ。肌の色も元々白かったが、さらに白くなり、美しい陶器のようだ。
まるで作り物のような美しさ。さらに肌の吸い込まれるようなきめ細かさに、大きな胸がその存在力で圧倒する。
しかも怪しげな魔力が霧のように足元から落ち、見る者の現実感を喪失させた。
「おお……実に美しいな……実にイイ!! 白磁のようでありながら、青磁のようなうっすらとした青が実に美しい肌!! 撫でるとこの質感が実にいい!! きめ細やかな素肌に、みずみずしい質感! それにその二つの凶器から迸る、攻撃的なプレッシャーは何だ!? 実際に触ったこの……弾ける弾力ッ――」
「流様! ハウスです、ハウス。ここは人様のお家ですよ?」
「ぬ? っと、しまった。いつもの癖で、な」
「もぅ、しっかりしてよね? 〆さんだったら喜ぶけど、他の人なら、ほら……」
流はイルミスを見る。頬を染め嬉しそうだから問題ないだろう。ウン、問題ない。
美琴に何も問題はないじゃないか? と、問おうとしたが。
「そっちじゃないよ。後ろですよ?」
「へ? お、おぅ…………」
後ろをそっと見る。まるで日曜の夕方に放送されている、国民的主人公の少女が、ドン引きしているような顔の三人がいた。
さらに見渡すと、執事もメイドもだ。解せぬ!
「ナガレ。あ、あなたって人は……」
「お嬢様……やはりコヤツはいけませんぞ!! お嬢様もきっと夜あんな風に……許せん!!」
「ナガレ。俺にはお前の気持ちが分かる、が。ちょっと、いかがなものか?」
一人は涙目。一人はお怒り。一人は呆れているようだ。
そんな三人に流は持論を展開する。
「ち、違うんだ! 例えば美しい花があったとする。人はソレを愛でる! それだ……それと同じように、美しいものを見たら自然と称賛したくなるぢゃないか!! ついでに触ったり、味を見たりとしちゃうだろ! するよな? うん、するはずだ。するといいな……。それに見ろ! この完成された美を! しかも怪しげな魔力が霧のようになり、幻想的じゃないか? うん、俺は正しい!!」
「言いたいことは良く分かった。が、その前に小僧! お嬢様をなぜ愛でない!! 解せん!!」
「ルーセント、言ってる事がおかしくなっているわよ!? うぅ。思わず勢いに負けて、頷きそうになった私が憎い」
「はぁ、愛でるのはせめて骨董品だけにしとけよ。まぁ、骨董品のような存在だが……ひぅッ!?」
エルヴィスを射殺すような視線を向ける女。なぜかもうひとり加わり、二人から〝じっとり〟と見つめられる。
「あぁそれだ。エルヴィスが言うようにイルミス、よく三世紀も正体がバレなかったな?」
「まぁ! 唐突に話を変えましたわね。バレないカラクリは、先程お見せしたとおりですのよ?」
「つまり見た目を変えて、国に領主の変更を届けていたと言うわけか」
「ええ、さすがに不死者が国の重責を担う貴族というのも、ありえませんでしょう? そして領民からも、気味悪がられてしまいますわ」
その後の話で、孤児や身寄りのない老人など、食うに困っていた者を家族として、屋敷に住まわせているそうだ。
主に先代の母・父・旦那・娘が家族構成らしい。イルミス家は娘しか生まれないと言うのは、この界隈では有名な話だとか。
イルミスは拾った娘の見た目にあった容姿となり、代を重ねる。そしてその娘が大きくなれば……。
「ま、まさか食ったのか?」
「ええ、それはもう美味しく……ふふふ」
不死者とはそう言うものかと全員顔を青くする、が。
「はぁ~。イルミス様、お戯れはおやめくださいませ」
「あら、何を言っているのやら分かりませんわ?」
「まったく……みな様ご安心くださいませ。私がイルミス様に拾われた娘であり、現在はここのメイド長をしております、ミミと申します。主のいたずら、何卒ご容赦を」
ミミと名乗るメイド長は、胸にある宝石のような飾りに手を添える。
すると、先程までイルミスだった女がそこにいた。一同はなるほどと納得し、イルミスへと流は話す。
「ったく、驚かせるなよ。それと、お前の悲恋と美琴への、執着とも言える原因はやはり?」
「ええ。千石様が愛した娘。その娘……美琴が打ったと言う日本刀を味わいたく、流の実力を測るつもりで挑んだはずが、本気を出してしまいましたわ」
「え!? だから私に、あんなに恥ずかしい事を色々と。うぅ酷い」
「酷いのは貴女でしてよ美琴? わたくしは見たことも無い、異世界の貴女に幾度も敗れ、千石様の女にはなれませんでしたのよ?」
「え!? あ、えっと。その……ごめんなさい」
「ふふふ。謝らなくてよろしくてよ? それにもう、その必要もなくなりましたわ」
イルミスは美琴の頬にキスをする。ビクリと震える美琴であったが、イルミスの視線が流を〝じっとり〟と見つめ、その奥にある真意を測りかねるのだった。
「きゃ!? なんですの?」
「きゃ!? じゃねーよ、〝きゃ〟じゃ。そろそろ本当の顔を見せてくれないか? ただの友達としてな?」
「もぅ、いいじゃないですの。今更貴方への愛は変わりませんわ」
「友達としてな? んで?」
イルミスは「もぅ」と頬を膨らませながら、指を鳴らす。
すると、見た目は若いが、三十代ほどの特徴が徐々になくなり、二十代前半くらいの容姿になる。
しかも髪は黒髪になり、瞳はルビーのように赤いが、実に魅力的だ。肌の色も元々白かったが、さらに白くなり、美しい陶器のようだ。
まるで作り物のような美しさ。さらに肌の吸い込まれるようなきめ細かさに、大きな胸がその存在力で圧倒する。
しかも怪しげな魔力が霧のように足元から落ち、見る者の現実感を喪失させた。
「おお……実に美しいな……実にイイ!! 白磁のようでありながら、青磁のようなうっすらとした青が実に美しい肌!! 撫でるとこの質感が実にいい!! きめ細やかな素肌に、みずみずしい質感! それにその二つの凶器から迸る、攻撃的なプレッシャーは何だ!? 実際に触ったこの……弾ける弾力ッ――」
「流様! ハウスです、ハウス。ここは人様のお家ですよ?」
「ぬ? っと、しまった。いつもの癖で、な」
「もぅ、しっかりしてよね? 〆さんだったら喜ぶけど、他の人なら、ほら……」
流はイルミスを見る。頬を染め嬉しそうだから問題ないだろう。ウン、問題ない。
美琴に何も問題はないじゃないか? と、問おうとしたが。
「そっちじゃないよ。後ろですよ?」
「へ? お、おぅ…………」
後ろをそっと見る。まるで日曜の夕方に放送されている、国民的主人公の少女が、ドン引きしているような顔の三人がいた。
さらに見渡すと、執事もメイドもだ。解せぬ!
「ナガレ。あ、あなたって人は……」
「お嬢様……やはりコヤツはいけませんぞ!! お嬢様もきっと夜あんな風に……許せん!!」
「ナガレ。俺にはお前の気持ちが分かる、が。ちょっと、いかがなものか?」
一人は涙目。一人はお怒り。一人は呆れているようだ。
そんな三人に流は持論を展開する。
「ち、違うんだ! 例えば美しい花があったとする。人はソレを愛でる! それだ……それと同じように、美しいものを見たら自然と称賛したくなるぢゃないか!! ついでに触ったり、味を見たりとしちゃうだろ! するよな? うん、するはずだ。するといいな……。それに見ろ! この完成された美を! しかも怪しげな魔力が霧のようになり、幻想的じゃないか? うん、俺は正しい!!」
「言いたいことは良く分かった。が、その前に小僧! お嬢様をなぜ愛でない!! 解せん!!」
「ルーセント、言ってる事がおかしくなっているわよ!? うぅ。思わず勢いに負けて、頷きそうになった私が憎い」
「はぁ、愛でるのはせめて骨董品だけにしとけよ。まぁ、骨董品のような存在だが……ひぅッ!?」
エルヴィスを射殺すような視線を向ける女。なぜかもうひとり加わり、二人から〝じっとり〟と見つめられる。
「あぁそれだ。エルヴィスが言うようにイルミス、よく三世紀も正体がバレなかったな?」
「まぁ! 唐突に話を変えましたわね。バレないカラクリは、先程お見せしたとおりですのよ?」
「つまり見た目を変えて、国に領主の変更を届けていたと言うわけか」
「ええ、さすがに不死者が国の重責を担う貴族というのも、ありえませんでしょう? そして領民からも、気味悪がられてしまいますわ」
その後の話で、孤児や身寄りのない老人など、食うに困っていた者を家族として、屋敷に住まわせているそうだ。
主に先代の母・父・旦那・娘が家族構成らしい。イルミス家は娘しか生まれないと言うのは、この界隈では有名な話だとか。
イルミスは拾った娘の見た目にあった容姿となり、代を重ねる。そしてその娘が大きくなれば……。
「ま、まさか食ったのか?」
「ええ、それはもう美味しく……ふふふ」
不死者とはそう言うものかと全員顔を青くする、が。
「はぁ~。イルミス様、お戯れはおやめくださいませ」
「あら、何を言っているのやら分かりませんわ?」
「まったく……みな様ご安心くださいませ。私がイルミス様に拾われた娘であり、現在はここのメイド長をしております、ミミと申します。主のいたずら、何卒ご容赦を」
ミミと名乗るメイド長は、胸にある宝石のような飾りに手を添える。
すると、先程までイルミスだった女がそこにいた。一同はなるほどと納得し、イルミスへと流は話す。
「ったく、驚かせるなよ。それと、お前の悲恋と美琴への、執着とも言える原因はやはり?」
「ええ。千石様が愛した娘。その娘……美琴が打ったと言う日本刀を味わいたく、流の実力を測るつもりで挑んだはずが、本気を出してしまいましたわ」
「え!? だから私に、あんなに恥ずかしい事を色々と。うぅ酷い」
「酷いのは貴女でしてよ美琴? わたくしは見たことも無い、異世界の貴女に幾度も敗れ、千石様の女にはなれませんでしたのよ?」
「え!? あ、えっと。その……ごめんなさい」
「ふふふ。謝らなくてよろしくてよ? それにもう、その必要もなくなりましたわ」
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