日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第九章:奪還作戦と、国の闇

476:VIPな器

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「それでリッジよ。お前がココへ来た理由は、酒を呑みに来たわけではあるまい?」
「うむ。酒は今夜にでも馳走になるとしようか」
「まさかの爺さんたちは実は仲良しだった!?」

 流はその様子に驚くも、次の言葉で驚きも収まる。

「それでその、日本刀はどこで手に入れたんじゃ?」
「その前にアンタは一体誰だい? 俺は古廻 流と言う。この日本刀・悲恋美琴の主で商人だよ」
「おぉ~これは失礼したわい。俺はこの町の鍛冶師の頂点、ガランだ。よろしくな小僧」

 そう言うとガランは、ゴツゴツとした手で握手を求める。流もそれに快く応じると、ガランも実に男臭い笑みで流に応えるのだった。

「うむ、いいヤツそうじゃないか」
「じゃろう? こやつがマイセンの秘密を話してくれると言うからな。山荘に行く時間も惜しくて、ここに来たわけじゃよ」
「なんと! あのマイセンの秘密を知っているのか? 俺も詳しく教えてくれ!!」
「ちょぉぉぉ!? まあぁぁぁぁ!! 二人でゆらぁぁぁすぅぅなぁぁあっぁあ」

 流は二人に両手を交互に引かれ、陸なのに二日酔いしそうな程揺れる。
 見かねたエルヴィスが、二人の間にはいるとなだめ始める。

「お二人共。それではナガレも話せませんよ?」
「「んぉ? あぁすまない……ごめんね?」」
「だから! 最後だけ! かわいく言っても需要がないわッ!!」
「エルヴィスのお爺様は、かなり変わった方なのね」
「ハハハ……まぁ、それで苦労していますよ」

 爺さん二人が舌を出し右手を頭部に当てて謝っている。なんだこの芸人は!? と流は思いつつも、このまま放置すればまた暴走しかねないと本題に入る。

「あ~それでだ。まずどっちから聞きたい?」
「うむ、そうじゃなぁ。ではワシはマイセンから頼む!!」
「異論は無いの。俺は鍛冶師じゃが、マイセンも興味深い!!」
「あいよ。えっとだな……」

 流はすべてを知っているエルヴィスへと視線を向ける。すると一つ頷くのが見え、それは全てを話しても良いと受け取る。

「まず、そのマイセンのカップだが、二度と手に入らない理由は……異世界の品だからだ」
「「なにッ!?」」

 リッジは急いで自分のマイセンのカップセットを取り出すと、そっと目の前のテーブルの上に置く。

「そ、それは本当か? 確かにワシの商会で扱っている品や、噂ですら聞いたことのない美術品ではあるが」
「いや落ち着けリッジよ。この一度見たら心に焼き付く、吸い付くような色合い。そして絵柄の見事さ。異世界産と言われても信じられる」
「うむ……してナガレよ。この器が異世界産としてだ、どうしてお主がそれを知っている?」
「なに簡単な事さ。それをこの世界に持ち込んだのは俺だからな?」

 その言葉で二人は声にならないような、喉の奥から絞り出すように「ぉぉ……」と漏れ出す。

「異世界からの住人……おとぎ話じゃなく、本当に存在しておったか……」
「ガランよ。実は言っていなかったが、それは真実だ。そして、今でもその子孫はこの世界にいる」
「なんと……」
「うむ、驚くのも無理はない。ただこの情報を知れば、お主の身に危険があるやもしれぬ。これはそう言う類のものになる。ナガレが日本刀を持っている時点で気がつくべきであったが、マイセンに気を取られすぎて考えが至らなかった。許してほしい」
「うむぅ……じゃがなぁ……」

 ガランはアゴの三編みにされたヒゲを触り、先端の剣をつまむ。そして一つ頷くと、それを弾き口を開く。

「ふん、みくびるでないわ。今更追われるのは慣れておるわい」
「はっはっは、確かにな。まぁワシの目の黒いうちは、かならず守ってやるわい」
「追われる? まさか犯罪者かなにかか?」
「バッカモン!! 俺はそんな事をせんわッ!! むしろ犯罪者に追われて困っているのだ」
「まぁ見た目は犯罪者のようじゃがな。コイツはな、剣を作る腕がなまじ良いから悪者に狙われると言うだけじゃわ」
「まぁそう言うことじゃわ。それでナガレよ、そのマイセンのカップはまだあるのか? あったら俺もほしいんだがなぁ」
「あぁそういえば……」

 流はアイテムバッグから、趣味で持ち歩いている二振りの剣が描かれているのが特徴の、ホワイトマイセンのVIPを取り出す。

「これもマイセンだよ。樽爺にふさわしいデザインだろう? カップとソーサー自体が盾とも花とも思わせるデザインも秀逸なのだが、それを引き立てるように、この二振りの剣が全体を引き締めている。ハンドルも特徴的で、高台の曲線も素晴らしい出来だ。さらにソーサーの部分もこの角度……」

 流はカップとソーサーを目の前のテーブルに置くと、デザインが一番美しく見えるように角度を調整する。

「と、こんな感じで見るだけで心がおどるだろ? カップとソーサーの青いラインもまた美しい……これは本当に良いものだ。そうは思わないか? って、オイオイ」

 反応が無いので思わず振り返る。そこには彫像と化した四人がいた。
 エルヴィスは口を大きく開き、リッジは右手を前に突き出し、ガランは目を見開く。
 そしてイルミスは、頬を朱色に染めて胸の前に両手を祈るように合わせている。

 ちなみにセリアは、ワン太郎を頭に乗せて、不思議そうな顔で固まっている四人を見ていた。
 そんなセリアを、ルーセントは苦笑いしながら見つめているのだった。
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