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第九章:奪還作戦と、国の闇
483:森は静けさを取り戻す
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「どうやら誘い込まれてしまったか?」
「そうですわね……氷狐王のお鼻は何か感じませんの?」
「ウム。何も感じぬが……なんと言うか、我は居心地が悪いな」
そう氷狐王が言うので、流は何となく周囲を見回す。するとイルミスもこの森に入ってから、ヴァンパイヤの姿に戻っているからか赤い瞳が何となく不穏だ。
「俺はあまり感じないが、二人は何かを感じているようだな?」
「ええ……そうですわ。例えるならば、蜂蜜で体をコーティングされているかのような、ネットリしている感覚ですわ」
「ウム。言い得て妙と言うやつだな。我もイルミスと同様、まとわりつくと言った感じが近いかと」
「おいおい。そいつはかなりキモチワルイと思うんだが? まぁ感覚的には理解はした。が……」
このまま進んでも埒がない。そう感じた流は、打開策が無いかと思案する。しかし見渡す限り不気味という感覚だけがある森なだけで、驚異は感じられない。
流は焦る。ここまでは順調だったが、このまま時間を取られれば最悪の事態になりかねないと。
(だがどうする? 戻れば出してくれそうな気もするが……ん、いや。試してみるか)
「よし、俺は諦めた! もう帰ろうぜ?」
「ちょ、ちょっと流。何を言っているんですの? このままならエルヴィスの妹は死んでしまいますわ!」
「……我は主の命のままに」
「ちょっと、貴方まで! そりゃ面倒でしょうけど、ここで帰っ――」
イルミスは流へ考え直すように力説するが、そこを遮るように美琴が話す。
『ねぇイルミスさん。だって、馬鹿らしいじゃない? だからすぐ『ひっくるけって』帰ろう?』
「……美琴貴女!? もぅいいですわ! ここからは別行動としましょう。貴方達がそんなに冷たいとは思いませんでしたわ!!」
イルミスはそう言うと、大きく飛び上がる。そしてそのまま森の奥へと消えてしまった。
「なんだあいつ。あんなに怒ることないだろうになぁ?」
『そういうお年頃なんですよ。さ、こんな場所に用はないから帰ろうよ』
「そうだな。しっかし美琴。お前は本当にいい女だな」
『えへへ。ちょっと嬉しい』
「お二人共よろしいので?」
「あぁ、かまわん。さ、行ってくれ。こんな鬱陶しい森なんて二度と来るかよ」
「……承知」
氷狐王はそのまま無言で、元の道があるであろう方向へと向かう。
すると先程まで不自然に草木が生えて、道を塞ぐようだったものが、一本道になり森の外が見える。
そのまま氷狐王は疾走し、森の出口へと向かうのだった。
◇◇◇
「さ! いい加減いっぱい休憩したゾ? ほら、行くんだゾ! 出発するんだゾ!」
「あぁ~だから叫ぶなって言ってるだろ? ホント、あんたの頭はどうなっている!?」
「おにぃさんも叫んでいるぞ? まったく、これだから良識のない大人はダメなんだゾ?」
「「「お前が言うなッ!!」」」
「ぅ……すまないんだゾ。そ、それより静かに行くんだゾ。そ~っとだゾ?」
シーラは緊迫した顔でそういうと、冒険者たちを見回す。
それを見た冒険者たちは怒りを通り越し、呆れで脱力しつつも森の中心である「蜜熊の宴会場」を油断なく見つめる。
そして、三星急の中でも実績のある男。三十代前半ほどのスキンヘッドがシーラへと指示を出す。
「いいか嬢ちゃん。これより先はコレまでとは違う。マジで命がけだ。分かるな?」
「う、うん。わかったゾ」
「だからコレまでのお遊びはもうしまいだ。ここからは俺の指示に従ってもらう。いいな?」
「分かったゾ。全ておにぃさんの指示通りにするんだゾ」
「ならいい。よし野郎ども。まずは斥候を三名だす。やってくれる者は?」
「なら俺と、ルッガとボルガ兄弟が行こう」
「ジェスと、ルッガ兄弟か。なら安心だな。お前達が戻ればこのまま進む。半時待って戻らない時は、すまんが撤退する。いいか?」
「あぁそれで構わん。そのかわり」
「分かっている。報酬は五割増しだ」
ジェスとルッガ兄弟はそれを聞くと、ニヤリと口元を歪め一つ頷く。
そのまま二人は静かに、だが足早に蜜熊の宴会場へと足を踏み入れる。そう、招かれざる客として……。
◇◇◇
その頃、流を乗せた氷狐王は森の出口へたどり着く。森を抜けた瞬間、森はその入口を閉ざすように、今来た道を密林へと豹変させる。
「おぉ……ここまであからさまに嫌われていると、俺スゲーショック」
『本当だよねぇ……私もでしょ? この森きら~い』
「しかし良かったので? イルミスだけ置いてきてしまって?」
「いいんだよ。どうせアイツにしか出来ないんだからな」
「主、それはいったいどういう事で?」
『まぁまぁ。ワンちゃんも今は帰ろう。ね?』
「女幽霊もそういうなら……まぁ……」
氷狐王は納得はしていないようだが、そのまま森に背を向けて歩き出す。ちらりと背後を一瞥すると、森は警戒心をとき、普通の森のように静まりかえっていたのだった。
「そうですわね……氷狐王のお鼻は何か感じませんの?」
「ウム。何も感じぬが……なんと言うか、我は居心地が悪いな」
そう氷狐王が言うので、流は何となく周囲を見回す。するとイルミスもこの森に入ってから、ヴァンパイヤの姿に戻っているからか赤い瞳が何となく不穏だ。
「俺はあまり感じないが、二人は何かを感じているようだな?」
「ええ……そうですわ。例えるならば、蜂蜜で体をコーティングされているかのような、ネットリしている感覚ですわ」
「ウム。言い得て妙と言うやつだな。我もイルミスと同様、まとわりつくと言った感じが近いかと」
「おいおい。そいつはかなりキモチワルイと思うんだが? まぁ感覚的には理解はした。が……」
このまま進んでも埒がない。そう感じた流は、打開策が無いかと思案する。しかし見渡す限り不気味という感覚だけがある森なだけで、驚異は感じられない。
流は焦る。ここまでは順調だったが、このまま時間を取られれば最悪の事態になりかねないと。
(だがどうする? 戻れば出してくれそうな気もするが……ん、いや。試してみるか)
「よし、俺は諦めた! もう帰ろうぜ?」
「ちょ、ちょっと流。何を言っているんですの? このままならエルヴィスの妹は死んでしまいますわ!」
「……我は主の命のままに」
「ちょっと、貴方まで! そりゃ面倒でしょうけど、ここで帰っ――」
イルミスは流へ考え直すように力説するが、そこを遮るように美琴が話す。
『ねぇイルミスさん。だって、馬鹿らしいじゃない? だからすぐ『ひっくるけって』帰ろう?』
「……美琴貴女!? もぅいいですわ! ここからは別行動としましょう。貴方達がそんなに冷たいとは思いませんでしたわ!!」
イルミスはそう言うと、大きく飛び上がる。そしてそのまま森の奥へと消えてしまった。
「なんだあいつ。あんなに怒ることないだろうになぁ?」
『そういうお年頃なんですよ。さ、こんな場所に用はないから帰ろうよ』
「そうだな。しっかし美琴。お前は本当にいい女だな」
『えへへ。ちょっと嬉しい』
「お二人共よろしいので?」
「あぁ、かまわん。さ、行ってくれ。こんな鬱陶しい森なんて二度と来るかよ」
「……承知」
氷狐王はそのまま無言で、元の道があるであろう方向へと向かう。
すると先程まで不自然に草木が生えて、道を塞ぐようだったものが、一本道になり森の外が見える。
そのまま氷狐王は疾走し、森の出口へと向かうのだった。
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「あぁ~だから叫ぶなって言ってるだろ? ホント、あんたの頭はどうなっている!?」
「おにぃさんも叫んでいるぞ? まったく、これだから良識のない大人はダメなんだゾ?」
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「ぅ……すまないんだゾ。そ、それより静かに行くんだゾ。そ~っとだゾ?」
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それを見た冒険者たちは怒りを通り越し、呆れで脱力しつつも森の中心である「蜜熊の宴会場」を油断なく見つめる。
そして、三星急の中でも実績のある男。三十代前半ほどのスキンヘッドがシーラへと指示を出す。
「いいか嬢ちゃん。これより先はコレまでとは違う。マジで命がけだ。分かるな?」
「う、うん。わかったゾ」
「だからコレまでのお遊びはもうしまいだ。ここからは俺の指示に従ってもらう。いいな?」
「分かったゾ。全ておにぃさんの指示通りにするんだゾ」
「ならいい。よし野郎ども。まずは斥候を三名だす。やってくれる者は?」
「なら俺と、ルッガとボルガ兄弟が行こう」
「ジェスと、ルッガ兄弟か。なら安心だな。お前達が戻ればこのまま進む。半時待って戻らない時は、すまんが撤退する。いいか?」
「あぁそれで構わん。そのかわり」
「分かっている。報酬は五割増しだ」
ジェスとルッガ兄弟はそれを聞くと、ニヤリと口元を歪め一つ頷く。
そのまま二人は静かに、だが足早に蜜熊の宴会場へと足を踏み入れる。そう、招かれざる客として……。
◇◇◇
その頃、流を乗せた氷狐王は森の出口へたどり着く。森を抜けた瞬間、森はその入口を閉ざすように、今来た道を密林へと豹変させる。
「おぉ……ここまであからさまに嫌われていると、俺スゲーショック」
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「しかし良かったので? イルミスだけ置いてきてしまって?」
「いいんだよ。どうせアイツにしか出来ないんだからな」
「主、それはいったいどういう事で?」
『まぁまぁ。ワンちゃんも今は帰ろう。ね?』
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