【完結🍺釣り無双】異世界最強の島を釣り上げると、もふもふ+虐げられた聖女×お侍=SSSランクまでHITした結果が激ヤバだった件

竹本蘭乃

文字の大きさ
53 / 109

052:聖女は優しさに涙する

しおりを挟む

「どうした? そんな死んで蘇ったみてぇな顔してさ。ほらほら、ノド乾いてるんだろう? いっぱいあるから飲めよ」

 そう言いながら私に見たこともない実・・・・・・・・を手渡してきた。
 ずしりと重く、コレをどう飲んだらいいのかが分からず困っていると、「上のストローから飲むんだよ」と教えてくれた。

 言われたままに、そのくだ――彼はストローと言っていたけど、ストローに口をつけて吸ってみた。
 ふんわりと甘い香りがし、次の瞬間には爽やかでとても体の芯までしみわたる美味しさ。
 
 そして驚いたのがその実の中身が冷たく、この実の旨味をさらに押し上げていた。

「お……いしぃ……」
「だろう? 若いのに、そんなにカサカサになっちまって可哀想に……ほらほら、もっとグィ~っと飲みねぇ。いっぱいあるから、ゆっくりと飲むんだぞ?」

 木の実ドリンクが体の隅々までしみわたる。それがよく分かり、干からびた体に活力が戻るのがわかった。

 でもソレ以上に、彼の言葉のあたたかさが身にしみて、本当に嬉しくて、うれしくて、乾いているはずの瞳から涙があふれでてきちゃう。

「んぐ……ふぇ……ふわぃ……」
「ぬぉ!? 泣くほどそんなに美味かったか? それは良かったな。腹も減ってるだろう? 今メシも用意してるから待ってろよな」

 お礼を言いたいのに、次々と優しい言葉をかけてもらえた嬉しさで、のどが詰まって声にならない。
 みっともなく「う゛ん゛」と何度もなんども頷きなら、木の実ドリンクを必死にのむ。

「いい飲みっぷりだねぇ~。やっぱ水じゃなくて、ヤシの実にして大正解だったな」

 とてもニコニコと私の顔を見ている彼。年下みたいだけど、言葉に余裕を感じるから不思議。
 一気に全部呑み干したと同時に、部屋の入口から可笑いらしい声が聞こえた。

「んぁ? ゾンビ娘復活したんだワン?」

 その姿に驚きと感動。本当にそれしか言い表せない。
 だって小さな青白いモフモフが、手に何かをもって歩いて来たのだから。

「わん太郎ちょうど良かった。いまゾンビ娘が起きたばかりなんだよ、だから焼き魚ソレをくれ」
「ええ~? せっかく焼き立てを食べようと思ったのにぃ。しかたないんだワンねぇ、ほれぇ人を貪るまえに、さかなを貪るがいいんだワン」

 そう言うと、ふしぎな小さなモフモフは、少年へと魚を渡す。
 たしか焼き魚と聞こえたけれど、どんな味がするのかな?

 そんな事を思っていると、彼が右手に持ったそれを目の前に差し出す。

「ほら、コイツも食ってみろよ。コイツも自慢の一品でさ、最高に美味い焼き魚だぜ?」

 ニカっと白い歯を見せて、とても楽しそうに微笑む彼から、おそるおそる魚の丸焼きを受け取る。

 話には聞いた事があったけど、一匹まるまるの魚を初めてみた驚きで、また感謝の言葉がいえなかった。もう本当にはずかしい。

「あ、あの」
「話は後だ、温かいうちにかぶりついてみろよ? 冷めると味が落ちるからな」
「えと、はい。え?」

 これしか言葉が出なかった。くちびるにふれた瞬間、魚料理の熱さ。これにまず驚いちゃった。
 
「香りが……香りがおいしい? え……え?」

 口いっぱいに広がった鮮烈な旨味のある香り。
 初めての経験で、またしても言葉がおばかな子みたいになっちゃったよ。うぅはずかしい。

「だろ! そいつは島野管理釣り場で飼ってる香魚だ。すげぇ美味いだろ?」

 そう彼がいうけど、もう美味しくておいしくて、何度もなんども、みっともなく「う゛ん゛」と頷きながら、ほろほろ口の中でほどける極上の味にはまりこむ。

『いつから養殖所になったんですか。おっと、次そろそろいい具合ですよ?』
「そらいいね。じゃあ俺たちもメシにしようか」
「わーい、やっと食べれるんだワン!」

 そういうと彼は、話す不思議な棒を軽くふると、焼き魚が宙を飛び引き寄せらてきた。
 そんな不思議な魔法に見入っていると、あっという間に大きな葉っぱの上に焼き魚が並べられていく。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!

花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】 《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》  天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。  キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。  一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。  キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。  辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。  辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。  国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。  リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。 ※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作    

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...