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103:夜明けのごみ掃除
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◇
――同時刻。旗艦から脱出したヤマトたちは、まだかろうじて船の役割を果たす一隻に飛び移っていた。
冗談みたいに白銀帝に飲み込まれた堕天使群はすでになく、アリシアがゲスダーと離れ神の力が消失した事で、ヘヴンズ・ゲートも消え去った。
消えた堕天使と門があった場所を、呆然と見上げる帝国兵たち。
それにアリシアは大声で呼びかける。
「みなさん聞いてください! 兄はここにいる青髪の彼――神釣島の主に敗北しました!」
その宣言で、海上をただよう兵士達は自然と口からおとぎ話を語る。
「や……やっぱりおとぎ話は本当だったんだ……」
「あぁ。俺らはなんてものに手を出そうとしていたんだ……」
アリシアは少し間を開けて、演説を再開する。
「そうです! この島は私達がおいそれと、手を出してよい場所ではありません! だからこそ、皇帝と自称する兄は敗れ去ったのです!!」
どよめきが一斉に広がり、その中でまた続ける。
「もう一度言います! 悪逆な兄は敗れ去った。だからもうこの戦は無意味です! この事実を今すぐ帝都へ持ち帰り、ニ度とこの島へ侵攻する事は許しません!! この大聖女・アリシア・フォン・アスガルドの名の下に、神釣島は慈愛の女神の休息場へと認定します!!」
その瞬間だった。
天高く鐘の音がひびきき渡り、無数の色とりどりの花びらが降り注ぐ。
さらに優しい虹色の雨がふりそそぎ、負傷兵たちを癒やす。
その奇跡に兵士たちは湧き上がり、これまでの事を思い出す。
「傷が治った?! こ、これもアリシア様のお力……俺たちはなんて事を……」
「あぁ。それに今生きていられるのも、あのガキ。いや、奇跡の島の主が俺らを守ってくれたからだ」
兵士たちは口々にそう言うと、ふよふよと飛ぶヒヨコと、その上に乗っている子狐を見上げる。
なぜか得意げに、ふんぞり返る子狐は「われを崇めるんだわん!」と言っているようだ。
それに湧き上がる子狐崇拝者と、ヒヨコ崇拝者。
さらにこの奇跡をまのあたりにした事で、アリシアへ泣き詫びる者が多数現れ、アリシアコールが起こる。
色々とスゴイ光景に、さすがの俺もびびりアリシアと話す。
「すげぇ……なんだよこれ? 傷が治る雨とか、やっぱり女神様てやつかアリシア?」
「はい。私も驚きましたが、慈愛の女神様が本当に神釣島を聖域に認定されたようです……自分でお願いしておきながら、信じられないです……」
それに相棒が苦々しく話す。
『何が聖域ですか。ここはもとより主の島。それをしゃしゃり出て生意気な』
「あぅ!? そ、そのごめんなさいロッドマンさん」
『あぁ、ゾンビ娘を責めているわけじゃないですよ。ねぇ主?』
「そうだぞアリシア。勝手に俺の島にツバつけた女神が悪い」
そう言っていると、空からわん太郎たちが降りてきて、何やら焦っている。なんだ?
「大和ぉ! 大変だわん、ゲス天使が居た船が向かってくるんだワン!!」
「あん? うわぁ……キモすぎるだろあれ」
見れば触手になった色々なモノを振り回しながら、こっちへと向かって来ていた。
どうやら向こうので喰い付くし、今度はこっちへ目をつけたらしい。
『やれやれ。あれで神とは恐れ入りますな』
「ちがいない。さてと……サクっと片付けて帰ろうぜ?」
全員がうなずくのを確認し、腹いっぱいになったのか洋上にぷかりと浮かぶ白銀のクジラへと命ずる。
「おい白銀帝! デザートは好きか? あぁ返事はいい。ほら、珍味クラスのデザートを食わせてやるから――――行ってこおおおおおおおい!!」
大きい丸い瞳をさらに大きくして驚く白銀帝。
抗議するように「ブモオオオオ!?」と叫びながら、釣り竿・星座のリール・黄金のルアーのゴッズ・三兄弟で強化された俺にぶん投げられる。
恨みがましい声とは裏腹に、でかい口を開き巨大戦艦を一口で呑み込み、そのままゴクリと消化する。
あまりの豪快さに兵士たちを始め、やった俺ですら驚くが、白銀帝はなんの事もないように一つゲフリと息を吐き、静かに着水した。どうなってんだ色々と?
「なにはともあれヨシ! あとは……っと」
ゴッド・ルアーを手元へと戻し、建築用の虎色のルアーへと変える。
それを勢いよく海面へと投げ込み、周囲に浮く木材を集めて、ボロボロの船を補修。
ついでに色々としばり、簡単なイカダも作りこの船へと縛り付けた。
「これでコイツらも国へ帰れるだろう。オイ! おまえら!! 今回は助けてやるけど、二度目はないからな? 分かったらもう来るんじゃないぞ!?」
見たことがない魔法に、驚き、畏怖し、すべての兵士達が高速で頷く。
その様子を見て、アリシアがこちらへと向くと、深々と頭をさげて「私ばかりか皆さんを助けてくれて、本当にありがとう」という。
「あぁ~なんだ。おまえを助けるついでだよ。それに子供が悲しむ顔は見たくないからな」
そういいながらどうにも照れくさい。
だから背中を向けて海の向こうを見ていると、「私がお姉さんなんですからね?」とアリシアは嬉しそうに話すのだった。
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