109 / 109
105:最終話~あたらしい冒険と出会い
しおりを挟む◇◇◇
◇
――大和とアリシアが五度目の歓迎会を開いている頃、とある泉のほとりに佇む一軒の屋敷へと、黒猫が走り寄る。
全て石でできたその屋敷は、古いが一目で高貴な人物が住んでいるのだろうと思える庭と、警備の兵士に囲まれていた。
が、どうにも兵士の様子が普通とは違う。
そんな兵士の隣を、漆黒の猫が通り過ぎざまに「魂の定着があまいニャ」とつぶやく。
どうやらこの猫、普通の黒猫じゃないらしく、足早に窓から侵入し、この屋敷の主を探す。
途中メイドに出会うが、そのメイドも少しおかしい。
なぜなら全て人形だったのだから……。
「泉の魔女様はどこにいるのかニャ?」
「ハイ。主様は書斎にいらっしゃるかと」
「ありがとニャ~」
メイドに挨拶をしつつ、黒猫は足早に進む。
ほどなくして、真っ赤な扉の前にくると、彼専用の小さな出入り口から中へと入る。
「泉の魔女様もどったニャ~」
そう声をかけるが、泉の魔女と呼ばれる三十路ほどの美しい女は独り言に夢中だ。
「おかしい……どう考えてもおかしいわよ。どうしてあの子の反応が曖昧なのかしら? んんん?」
「魔女さまぁ~おーい、泉の魔女様ぁ聞こえてますかニャー?」
まったく黒猫の事など眼中になく、分厚い本を開き、傍らに大きな水晶を覗きながらまた独り言を続ける。
「もぅしかたないニャァ~。泉の魔女さまぁ~えいッ!!」
黒猫はジャンプすると、魔女の頭へと飛び乗る。
それに驚き「み゛ぁ゛!?」と変な声をあげ、泉の魔女はひっくり返ってしまう。
「あいたた……もぅ、なんて事をするのよ黒曜!」
「何度も呼んだけれど、返事しない魔女様が悪いんだニャ。それで何か分かったかニャ?」
「ええ当然! なにも分からないわッ!!」
コテリとコケる黒曜。だがいつもの事だと思い直し、自分の知っている内容を話す。
「ハァ~仕方のない魔女様だニャ~。こっちは情報を掴んだのニャ。ちょっとアスガルドの帝都まで行って来たんだけどニャ――」
黒曜はこれまであった事を詳細に話す。
強欲な皇太子と皇女に施した呪いが解呪され、しかもそれを解呪した聖女へとそれが移った事を。
「え? って、待ってよ黒曜。あれは二人に分散させたから何とか平気だったけれど、人一人が背負うには重すぎる呪よ? 本当なら既に死んでいるはず……あ、もしかして死んじゃったから呪鱗の呪いが消えたのかしら?」
「違うのニャ。実は――」
黒曜はさらに驚きの話をする。
なんと聖女が行方不明になり、その結果、伝説の島――神釣島が現れたという。
さらにそこへ強欲な皇太子が乗り込み、島と聖女を手に入れるのだと言うことだった。
「まさかそんな事が……でもなぜ呪鱗が消えたのかしらね? んんん……考えていても仕方がないかな。って事でその島へ行ってみよ~!」
「工エエェェェェエエ工!? またそんな思いつきで行くのかニャ?」
「そりゃそうよ。自分の目で確かめないとね? さ、そうと決まれば早速いくわよ! おいで黒曜」
黒曜は「しかたないニャ……」と呆れながら、泉の魔女の肩へと飛び乗る。
「何が待っているのかしらねぇ。楽しみになってきたな♪」
そう言いながら、長い廊下を早足で歩く。
まだ見ぬ伝説とまで呼ばれている、神釣島をめざして。
◇◇◇
◇
――次の日の朝の神釣島。
コテージのバルコニーでぼんやりする。
視線の先にはビーチで遊ぶアリシアと、もふもふコンビが水遊びをしていた。
『……ずいぶんと明るくなりましたな』
「あぁ……本当にな」
俺が作った水着を着込み、エマージェを海面へ浮かせて、その上で水遊びをしているようだ。
その様子を見て、アリシアを慕ってきた仲間もそれに手をふる。
「あいつらの家も作ってやろうか」
『それがいいでしょうなぁ。ん……? 主よ! なにやら感じませんか!?』
突如相棒が緊迫した様子になり、何かを感じ取ったようだ。
が、当然俺もそれを感じており、ヤシの実ジュースを一口飲みながら呆れて話す。
「まぁ~た身の程知らずが来たのか」
『らしいですな。どういたしますか?』
残ったヤシの実ジュースを一気に飲み干し、殻を空中へと放り投げ相棒を一振り。
「どうもこうもねぇさ。俺の家に手を出す馬鹿には――」
――空中でヤシの実が真っ二つになり落ちる。
「世界が別々の光景になるようにしてやるまでさ」
『はっはっは。それでこそ我が主です』
「って事で行くか。お客様をおもてなしになッ!!」
そう言いながら、俺は相棒片手に大きくジャンプし、飛び降りながら空中を飛ぶ。
「魅せてやろうじゃねぇか。神釣島の主の実力ってやつをな!!」
口角を上げながら、次のヤシの木へとルアーを飛ばすのだった。
◇◇◇◇
あとがき
◇◇◇◇
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
全てを釣りで解決するお話、いかがでしたでしょうか?
気に入っていただけたのなら幸いです。
ここでお話は一旦終了となりますが、大幅に改稿してまた近いうちに出す予定です。
その時またお付き合いいただけたら、とても嬉しく思います。
貴重なお時間、本作をお楽しみいただきまして本当に大感謝です!!
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~
御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。
十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。
剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。
十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。
紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。
十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。
自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。
その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。
※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る
伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。
それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。
兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。
何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。
【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立
黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」
「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」
ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。
しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。
「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。
だが、彼らは知らなかった。
ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを!
伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。
これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!
過労死して転生したら『万能農具』を授かったので、辺境でスローライフを始めたら、聖獣やエルフ、王女様まで集まってきて国ごと救うことになりました
黒崎隼人
ファンタジー
過労の果てに命を落とした青年が転生したのは、痩せた土地が広がる辺境の村。彼に与えられたのは『万能農具』という一見地味なチート能力だった。しかしその力は寂れた村を豊かな楽園へと変え、心優しきエルフや商才に長けた獣人、そして国の未来を憂う王女といった、かけがえのない仲間たちとの絆を育んでいく。
これは一本のクワから始まる、食と笑い、もふもふに満ちた心温まる異世界農業ファンタジー。やがて一人の男のささやかな願いが、国さえも救う大きな奇跡を呼び起こす物語。
ゴミスキル【生態鑑定】で追放された俺、実は動物や神獣の心が分かる最強能力だったので、もふもふ達と辺境で幸せなスローライフを送る
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティの一員だったカイは、魔物の名前しか分からない【生態鑑定】スキルが原因で「役立たず」の烙印を押され、仲間から追放されてしまう。全てを失い、絶望の中でたどり着いた辺境の森。そこで彼は、自身のスキルが動物や魔物の「心」と意思疎通できる、唯一無二の能力であることに気づく。
森ウサギに衣食住を学び、神獣フェンリルやエンシェントドラゴンと友となり、もふもふな仲間たちに囲まれて、カイの穏やかなスローライフが始まった。彼が作る料理は魔物さえも惹きつけ、何気なく作った道具は「聖者の遺物」として王都を揺るがす。
一方、カイを失った勇者パーティは凋落の一途をたどっていた。自分たちの過ちに気づき、カイを連れ戻そうとする彼ら。しかし、カイの居場所は、もはやそこにはなかった。
これは、一人の心優しき青年が、大切な仲間たちと穏やかな日常を守るため、やがて伝説の「森の聖者」となる、心温まるスローライフファンタジー。
スキル『農業』はゴミだと追放されたが、実は植物の遺伝子を書き換える神スキル【神農】でした。荒野を楽園に変えて異世界万博を開催します!
黒崎隼人
ファンタジー
「そのスキル『農業』?剣も魔法も使えないクズはいらん、失せろ!」
勇者召喚に巻き込まれて異世界へ転生した植物オタクの青年カイルは、地味なスキルを理由に王都を追放され、死の荒野へと捨てられた。
しかし、誰も知らなかったのだ。
彼のスキルが、ただの農業ではなく、植物の遺伝子さえ書き換え、不毛の大地を瞬く間に聖域に変える神の力【神農】であることを。
荒野を一瞬で緑豊かな楽園に変えたカイルは、伝説の魔獣フェンリルを餌付けして相棒にし、傷ついた亡国の美姫ソフィアを助け出し、自由気ままなスローライフを開始する。
やがて彼が育てた作物は「エリクサーより効く」と評判になり、その噂を聞きつけた商人によって、彼の領地で世界規模の祭典――『異世界万博』が開催されることに!?
一方、カイルを追放した王国は深刻な食糧難に陥り、没落の一途をたどっていた。
「今さら戻れと言われても、この野菜は全部、俺とソフィアのとフェンのものですから」
最強の農民が送る、世界を揺るがす大逆転・万博ファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる